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イベントレポート

[トークセッション]メディアで何を表現するか

2007年1月29日、国立新美術館にてトークセッション「メディアで何を表現するのか」が行なわれました。イベントでは劇場版アニメ『時をかける少女』で平成18年度[第10回]文化庁メディア芸術祭アニメ部門大賞を受賞したアニメーション監督・細田守氏と、立教大学教授で電通エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターの杉山恒太郎氏がパネリストとして出席。「日本の表現力」展実行委員でもある浜野保樹氏の司会で、広告・CM・アニメーションの表現について語り合いました。

■“クライアントありき”の世界

司会の浜野氏から挨拶があり、「広告とアニメーションの制作状況は正反対の立場にあるが、共通するのはクライアントありきの現場だということ。そのなかでどのように自分の表現をしていくのかが今回のテーマ」という言葉を受けて、細田氏にアニメーションでの自己表現について伺うことに。また会場では『ピッカピカの一年生』(小学館)のテレビCMを上映し、杉山氏に当時の制作背景を語っていただきました。

細田:「アニメーションをつくることに自覚的になったのは、むしろ東映アニメーションに入社してから。それまでは芸術というのはクリエイティブなものを優先させるものだと思っていましたが、仕事を通じてアニメーションの意味というか、子どもを喜ばせる、楽しませるということの偉大さに気づかされました」

杉山:「(『ピッカピカの一年生』は)1977年に始まって20年くらい続いたCMなんですけど、コンペで勝って手に入れた最初のテレビCMの仕事でした。ちなみにこれは初めてビデオでつくられたCMです。当時はお金がないからビデオを使わざるを得ないということもありましたが、美しいフィルムの映像よりもビデオの生々しい映像のほうが何か迫るものがあるというか、即時性、即効性を感じたわけです。自分でビデオを持って撮影にいくという本当に手づくりの広告でしたが、大げさじゃなくて“僕は新しいことを始めるんだ”という高揚感がありました」

■「性能」よりも「性格」を伝える

続けて杉山氏は、かつて先輩から教わった「広告は性能ではなく性格を伝える」という言葉を紹介。「商品のスペックを伝えるのではなく、商品に個性(キャラクター)をつけることで初めて人の心に残る広告やCMができる」と語り、さらに技術の進歩がメディアに大きな影響を与えていることについてインターネット検索サイト「Google」を例にあげ、「テクノロジーでマッチングさせた無機質で無表情な広告は、いつかストレスに感じるのでは」と疑問を投げかけました。

杉山:「送り手と受け手をテクノロジーによってマッチングさせていく。そんな人の顔が見えない、無人の出会いがこのまま本当に進んでいくのだろうかという疑問をもっていて、人間というのは無機質な出会いがいつかストレスになって我慢できなくなるんじゃないかな。もしかしたら自分の感覚がずれているのかもしれないけど、広告といえども“表現”だから、新しい価値を提案することによって人に喜んでもらうということも必要だと思います」

■「技術」を「表現」で切り返す

一方、東映アニメーション時代に作家性よりも“大衆的なもの”の魅力に気づいたという細田氏は、「要望に即したものをつくっているつもりだったのに、周囲から『お前のものはズレてる』とか言われてしまう。それなら自分で思ったようにやるしかないと思って」と、フリーになった経緯を語り、また劇場版アニメ『時をかける少女』が海外の映画祭で高い評価を受けたことについて「世界市場は全く意識しなかった。でも海外での反応を見て、経済や政治などの違いはあっても人の気持ちは同じだと感じた。市場ではなく、作品のなかの“公共性”の広さみたいなもので世界を意識するようになった」と語りました。

さらに細田氏は、CGなどデジタル技術への関心についての質問に「どうしても新しい技術があると表現が追いついていかないところがある。それを表現で切り返したい」と答え、表現するための手段として新しい技術をどのように使いこなしていくかが問題であることを強調しました。

細田:「アニメーションの現場というのは状況的に余裕がないので、新しい技術は実際に作品をつくりながら実験していくんですね。だからテストを重ねないとできないものではなくて、別の切り口を見つけないと。技術そのものが武器になることもあるんですけど、僕は高い技術を見たいわけではなくて、表現が技術を超える瞬間を見たいんです」

■「いい仕事」なんて存在しない

最後に若いクリエイターへのアドバイスとして、細田氏は「たとえ現場が厳しい環境でもクリエイティブのきっかけは潜んでいます」と語り、杉山氏の「世の中には“いい仕事”なんていうものは存在しなくて、ただの“仕事”しかない。だからそれ以上のものにするには、自分が戦って勝ち取るしかない」という言葉でイベントは終了しました。

細田:「厳しい環境の現場でも、結果的に状況を逆手にとれる技を学んだり、ある種のハングリーさみたいなものを得ることができた。どんな場所にもクリエイティブのきっかけは潜んでいる気がします。仕事をやることの面白さを見出すいいチャンスだと思ってください」

杉山:「サッカーにたとえるなら、頭とハートを常にリフティングしておくこと。あとは『この人みたいになりたい』『この人に会いたい』とか、素直に憧れる人を見つけてください」



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