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イベントレポート

[トークセッション]「メディアと添い寝するクリエイティブ」

2007年2月4日、文化庁メディア芸術祭10周年企画展「日本の表現力」の最終日に行なわれたシンポジウムは題して「メディアと添い寝するクリエイティブ」。モデレーターは京都造形大学教授の宇川直宏氏、そしてアートユニットのエキソニモのお二人とマンガ家のタナカカツキ氏がパネリストとして参加し、次世代のモノづくりに目を向けた熱い議論が交わされました。

■メディアアートと仮面ライダー

まずは、エキソニモの作品を見ながらシンポジウムが始まりました。これは、バスで日本中を旅するプロジェクト『MobLab』で制作されたもので、車体の前後左右に取り付けられたカメラが5分おきに風景を撮影し、GPSで取り込んだ位置情報とともに型紙に落とし込んでウェブに上げていくというプロジェクト。型紙はダウンロードして立体的なバスの形に組み立てることができます。「テクロノジーを使っているけど、落とし込んでいるところはかなりアナログ。そこがおもしろい」と解説する宇川氏から、「メディアアートとは一体何か。具体的な定義はあるのか」という質問が投げかけられました。そしてなぜか話題は「仮面ライダー」に。

エキソニモ:「自分たちではあんまりメディアートって言ったことはないですね。周りから言われて、そうなのかなと思うんですけど。今、言われているメディアアートの定義は、ニューメディアを使っていること。ただ微妙なのは、コンピュータを使えば何でもメディアアートになってしまう状況があることですね」

宇川:「仮面ライダー555(ファイズ)って番組があったんですけど、あれはメディアアート使いですよ。携帯で敵の情報をキャッチしたりとか、デジカメでパンチして怪人を倒すんですよ。(子ども番組でも)根深いところでテクノロジーが密接にからんでいる。目を凝らして番組を見ているとさまざまな部分で、自分たちがデスクトップで使っているテクノロジーの究極的な部分を探り合っているという感覚がある」

タナカ:「今はむしろ肉体を使ってケンカするのは古くてかっこ悪い。でも、昔の仮面ライダーも実写やアニメーションの合成を使っていて、そういう意味では今よりも表現がミックスされていた感じがしますね」

■オリジナリティは消滅する?

「タイトルを "テクノロジーと添い寝するクリエイティブ" という言い方に変えたほうがわかりやすい」と語る宇川氏。「コンテクストがあって、新たなパラダイムシフトを繰り返しながら歴史を塗り替えていくのがアートのひとつの方法であるならば、僕たち、こんな時代に生まれて得なの? これが俺のオリジナルだと思っていた表現は、すでに自分の知らない間に誰かがやってしまったことかもしれない」という宇川氏の発言を受けて、オリジナリティや新しい発想について議論がなされました。

宇川:「この時代に生まれた自分を呪うしかないのか、とまで思ったんですよ。だけど、自分たちはテクノロジーに味方してもらってるんだという考え方もある。こんな時代に生まれて、いろんな表現がすでに自分たちの生まれる前に形になって世の中に出ちゃってる。でも僕たちには最先端のテクノロジーがあると考えれば、メディアアートの未来が見えてくるんじゃないか。オリジナリティが消滅していくなかで、テクノロジーをどう味方につけるのか」

エキソニモ:「昔はできなかったけど、今は検索ができます。検索すると同じことを考えている人が世界中に大量に発見されるという現状がある。だからこれから先は、新しいアイデアをもつということが難しいんじゃないかな」

タナカ:「新しさの価値は、やっぱり年々失われている。僕の作品も別にインタラクティブでもないし、新しさはないですから。そういう意味では、僕は "添い寝" はしてないですよ。でも何かを表現する時に新しい道具を使うというのは、ごく普通のこと。逆に古い道具しか使わないっていうのは、何かの主義者なんですよ。エキソニモの作品は、テクノロジーを使ってはいるが、アイデアに富んでいてユーモアがある。一貫してユーモアがあるというのは、日本の表現の歴史そのものですよ」

■テクノロジーと表現のバランス

エキソニモの生み出す作品は「マンガ的」であるというタナカ氏の発言から、話題はマンガの話に移り、あらゆる意味でマンガは究極のメディアアートではないかと、全員の意見が一致。また、テクノロジーを巧みに使いこなすエキソニモが手がけた作品を見ながら、表現と最先端技術のバランスについて、さまざまな角度から意見が出されました。

タナカ:「鳥獣戯画もそうかもしれないし、昔のマンガ家はテクノロジーを使っていた人たちですよ。スクリーントーンだって、登場した時はニューメディアだった。マンガ家っていうのは新しいものをどんどん取り入れた人たちなんですよ。マンガ家って絵が描ける人がなりたい職業なんですが、では絵が描けない人はマンガ家になれないかと言ったらそうじゃない。最近では、テクノロジーを味方につけたマンガ家が登場しはじめているんですよ。コンピュータで3Dでキャラクターをつくって、線でレンダリングする手法を使って、まさに手書きで描いたようなマンガでデビューした作家もいる」

エキソニモ:「昔誰かがやったことを、技術を使ってただ再現しようとしてもおもしろさの発見はないですね。メディアアーティストと自称する人よりも、趣味で活動している技術屋さんのほうがすごかったりする。自分たちは、電気で変なことをする人たちを集めたドークボットというイベントをやっているんですけど、ゲーム機器の電波を何キロも先まで飛して対戦したりとか、自分に通電させて音を出せる装置をつくったりとか、アートじゃないけど、おもしろいことをやっている人たちがたくさんいるんです。メディアアートと趣味の中間地点にもっとおもしろいものがあるんじゃないかという気がする」

宇川:「クリエイティブとテクノロジーは密接な関係にあると思うんですよ。ラップトップ上で表現していること自体、テクノロジーを味方につけている。知らないうちにテクノロジーを使っていて、一体どこからどこまでが自分の表現なのかすでにわからないような、あいまいな地点に来てますね。メディアを使っているんじゃなくて、メディアに使われているんだと思う。そういう表現が多いですよね。テクノロジーありきで、時が経って消費されると自分の表現ではなかったと気づく。先端のテクノロジーを使っただけで表現が成立したりする」

■気になる今年の活動は?

次に「もっともメディアアートらしからぬメディアアート」という宇川氏の作品が会場に映し出されました。これは耐震偽造マンションの写真をテキスタイルのパターンに使用し、真空パックのアスベストが縫い込まれた洋服。「最近は洋服もグラフィックの力に頼りすぎて、縫製の力で勝負する人が少ない。それは耐震偽造と同じ図式」と語る宇川氏に、「コンセプトに一貫するユーモアがある」と答えるタナカ氏。そして、マイクロスコープ画像とCGを組み合わせた映像作品も上映されました。最後に、会場からの「今年の活動を教えてほしい」という質問にそれぞれご解答いただき、シンポジウムは幕となりました。

宇川:「現在は、YouTubeに関する本をつくっています。これから取り組もうとしているのは、メディアアートの展示で詳しいことはまだ言えませんが、実際にあった台風を表現していくというものです。10月に森美術館で行ないますので、ぜひ来てください」

タナカ:「今年は本厄なので慎もうと思っているんですが(笑)。現在手がけているのは、幼児向けの本です。ひらめきを鍛えるために右脳を刺激する本を制作しています」

エキソニモ:「2月14日から東京ワンダーサイトで開催される展覧会で、おもちゃの楽器を改造して、壁中に増殖させていくワークショップというか、インスタレーションのようなものを行ないます。あとは4月にフランスのニームで町中を使ったインスタレーションをやります。町角に端末を置いて、人の顔をキャプチャしていくようなプロジェクトです」

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