平成9年度[第1回]文化庁メディア芸術祭
平成11年度[第3回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品

デジタルアート〔インタラクティブ〕部門

KAGE
© minim++
大賞

KAGE

作者: 近森 基

(日本)

MOVIE

※動作環境に関してはこちら

贈賞理由

センサーでもあるオブジェに触れたとき、影の反応の意外性が面白い。円錐のオブジェからその影を分離し、影をコンピュータで制御されたCG映像とすることで、物理的現象とバーチャルな現象を混在させた不思議な正解を想像した点が高く評価された。

作者プロフィール

近森 基

近森 基

1971年 東京生まれ。
1995年 慶應義塾大学環境情報学部卒業。
1998年 筑波大学大学院修士課程修了。
1999年 ポーラ美術振興財団の助成を得てカールスルーエ造形大学(ドイツ)に留学。

1996年より久納鏡子との共同制作を開始し、「Ars Electronica Festival '97」を始め、国内外で多くの展覧会に出展。また、メディア・プロダクツ・ユニット「minim++(ミニムプラプラ)」としても活躍。メディアアートの分野にとどまらす、遊び心あふれるプロダクトや絵本を発表している。

[minim++: 近森 基+久納 鏡子]
minim++(ミニムプラプラ)は、日常の中にある些細な事やモノに、ほんのひと工夫ふた工夫プラスして世の中に発信していこうとするメディア・プロダクツ・ユニット。

Winner's Interview

──近森さんの子供時代について教えて下さい。

メディアアートをやってる人って、天体少年だったりとかゲーム好きだったりとしますけど、僕の場合はロボット少年だったんですよ。そのころヒーローだったのは、早稲田大学の加藤一郎教授。1980年ごろですね。つくば博で、二足歩行ロボットの実演があったり。それで、例にもれず工作少年でもあったんで、自分もつくってみようと。竹橋の科学技術館で毎年ロボット博みたいなものがあって、その公募部門に、おもちゃのピッチング・マシーンの動力を流用して腕が回転するロボットを作って応募したんです。僕としては動きがすごいって思っていて、どっちかっていうと理工学的な志向だったんですけど、いただいた賞がデザイン賞。「あれ?」みたいな(笑)。もしかしたらそのころすでに、アートと理工学的なものとの接点みたいなところに、たまたま居たんじゃないかなと思うんですよね。

──三つ子の魂百までって感じですね。

ええ。あとそのころにハマったのは、『アクリルロボット』っていう、アクリル板とマブチモーターとタミヤのギアボックスを組合わせてつくるロボット。それと『電子ブロック』ですね。知的おもちゃ系にはけっこうハマりました。

──メディアアートなるものに最初に意識的に触れたのはいつですか。

メディアアートじゃないんだけど、今思うと影響を受けたなと思うのは、坂根(巌夫)さんがやっていた『遊びの博物館』ですね。小学生の頃、たまたまどこかのデパートで見て、いまだにカタログを持ってます。あれは本当にショックでした。メディアアートという言葉を知ったのは、SFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)に入ってからです。

──なぜSFCに入ろうと思ったんですか。

やっぱりロボットをやりたかったんで、理工学部に行きたかったんです。でも、高校の理系で挫折しました。基本的に、日本で理系の大学に進むってことは、進学コースっていうか、成績どうこうの話なんですよね。だから、そういうやり方だと納得いかなくって。公式一個覚えろって言われたときにもね、何でそうなのかってずっと考えちゃうんですよ。それで時間かかって、高校3年生を2回やりました。

──悩んで時間がかかった、と。

いや、悩んでっていうか、へへ。そのころほかにもいろいろあって、バンドに目覚めてベースを弾いたり。それと、美術なんて趣味、アーティストなんて人生なめてるって思ってたんですけど、現実逃避的な部分もあって、ずっと趣味だと思ってた油絵にハマったりとかしましたね。

──どういった絵を描いていたんですか。

けっこうダリとかハマってて、シュルレアリスムみたいな。高校留年して、4年目の卒業する寸前のときに、バックパック旅行に行ったんです。いろいろな美術館をまわったりもしたんですけど、そのときにダリの住んでいた家にも行って、その前で1週間くらい野宿してみたり。そいういう感じで、興味も多岐に渡っちゃってたんで、だんだんアートもいいんじゃないの、って開き直っちゃった。だったらSFCに入れば何でもできるかなってことで、半分ばくち的な感じで、行ってみるかと。

──最初の作品は、SFC時代ですか。

ええ。最初に作品らしきものをつくったのは、大学3年になって藤幡(正樹)さんのゼミに入ってからですね。そのときのテーマが「本」だったんです。本というものを掘り下げて、半年間かけて作品をつくって、展覧会をするという課題でした。そのときにビデオ彫刻というか、高さが2メートル、幅が3メートルくらいの天秤をつくったんです。天秤の両端に、テレビのモニタがぶら下がっていて、その中に自分が映っている。モニタの中でものを投げると、もう片方のモニタの中の自分がそれを受け取って、そちら側の天秤が下がる。そういうものをつくったんです。今考えると、いったいどこが「本」だったのか…。

──藤幡さん以外で影響を受けたアーティストはいますか。

筑波の大学院に行ってたころだと思うんですけど、藤幡さんのところを出て、ようやくデザインというものに意識が向きはじめたんです。『KAGE』以前の作品はけっこう現代美術っぽいテイストだったんですけど、そういうコンセプトがちがちのものに、だんだん嫌気がさしてきた。それで、デザインってことに飢えて勉強したくなったときに、いいなって思ったのが倉俣史朗さんの作品でした。原美術館で倉俣さんの個展を見て、その軽やかさがすごく羨ましくって、僕もそういう軽やかさを作品に取り入れたいなと。作品を見て考えるだけではなくて、単純に体が動きたくなっちゃうような、そういう部分が大事だなって思ったんです。

──『KAGE』の世界に移るきっかけは何かあったんですか。

きっかけというか、テイストは変わったんですけど、根底のテーマっていうのはSFCのころからあまり変わっていません。映像とかメディアの中の現実感みたいなものと、実際触れることができるものとのギャップにすごく興味があります。そこでふと気づいたのが「影」だったんです。影っていうのは、物があって初めて成立するわけじゃないですか。物があって、初めて成立するイメージの世界。そういうところが、僕の気になっていたこととぴったりだったんです。影っていうのは本物の証明なんだけど、影が動いてしまったりしたときに、「これって本物なの?」っていうことを考える。本物の証を危うくしてしまうことで、物に対するリアリティについて考えさせる。現代美術っぽく言うと、そういう感じですね。

──『Tool's Life』などでは、影そのものを作品に取り入れていますよね。

ずっと「影とリアル」ってことをテーマにしていながら、つくっているものはバーチャルだというのが、なんかしっくりこなかったんですよ。じゃあ、いっそのこと本物の影を活かすことを考えてみようと。結局ね、CGでつくった影よりも、本物の影のほうがきれいなんですよ。やっぱり影のきれいさっていうのは、活かしたいですよね。

──近森さんの関心の核には、情報を観客と共有するという部分があると思いますが。

おっしゃる通りです。『KAGE』を初めて展示したのは、「アルスエレクトロニカ(フェスティバル1997)」だったんですけど、実際、大きな展覧会で展示したのは、それが初めてでした。そのときに、僕の中にずっとあったテーマがふっとんじゃったんですよ。会場にいろんな国の人たちが来て、僕の作品を媒介にして観客同士が会話を楽しんでいる。コミュニケーション装置として機能していたんです。自分の中でぐるぐる考えていたテーマも、実はそういうことだったんじゃないか。共同現実感っていうか、みんなで場を共有することが、一番リアリティがあるんじゃないかって思ったんです。

──今後やっていきたいこととか、今関心があることは何ですか。

今一番興味があるのは、おもちゃとか絵本ですね。実は『ぼくの影をさがして』という絵本をつくったんです。科学絵本的なもので、ストーリーは写真評論家の飯沢耕太郎さんが書いています。もう一冊、今年中に出版を予定していて、これはストーリーからつくります。それと、今はプロダクト寄りなところに目が向き始めてます。実は、昨年、デザイナーの酒井俊彦さんとのコラボレーションで、インタラクティブなファンクションをもったテーブルを『東京/大阪デザイナーズ・ウィーク』に出展しました。最初メディアアートってほとんど意味をなさないような言葉だったと思うんですよね。今はメディアアートっていうジャンルができあがっちゃった感じがあって、それはそれでやりにくい。アートとかテクノロジーとかっていう文脈じゃないところに出すほうに興味がありますね。

──10年後くらいの自分のイメージってありますか。

まだメディアアートに出会って10年経ってないですからね。つまり、10年ってかなりいろいろできるなって思います。まだ、全然イメージは無いですね。

Works KAGE 1997 『KAGE
  KAGE-KAGE 1999 『KAGE-KAGE
  ○[en] 1997 『○[en]
  Tool's Life 2001 『Tool's Life
  Indelible Box 2002 『Indelible Box
  at<case sandbox> 2002 『at<case sandbox>
  ぼくの影をさがして 2003 『ぼくの影をさがして
My Favorites tool PowerMac G4 Cube … 一度、修理に出したら調子良
PowerBook G4 12" … 史上最小のMac
SHARP PC-PJ2-X3 … PentiumⅡB5ノート、そろそろ引退か…
HOZAN H-130(はんだこて国内用)
Weller WM12(はんだこて海外用)
RYOBI YD-10(電気ドリル)
PROXXON ミニルーター
Nakamichi SoundSpace1(CDプレイヤー)
  artist Bruno Munari、倉俣史朗、Panamarenko
  resource [web]
CyGnet(○[en] -Internet version-)
電子工作の実験室 http://www.picfun.com/
Naef社 http://www.naefspiele.ch/
ヴァーチャル電子ブロック http://www.denshiblock.co.jp/vdb/index.html

[書籍]
『THE CIRCUS IN THE MIST』 Bruno Munari (Corraini Editore)
『STORIE SENZA FINE』 Iela Mari (Einaudi Ragazzi)
『Vision of the Future』 Philips Corporate Design (V+K Publishing)
『The History of Future』 Christophe Canto/Odile Faliu (Flammarion)
『未現像の風景』 倉俣史朗 (住まいの図書館出版局)
『GO GO モンスター』 松本大洋 (小学館)
『ひろがる視覚世界「遊びの博物館」図録』
 坂根厳夫/安野光雅/福田繁雄 (朝日新聞社)
ホビーテクニック『アクリルロボットの工作』 三井康亘 (日本放送出版協会)

[CD]
『World Playground』 V.A.
『エンドレス・トーキング』 細野晴臣
『Big Science』 Laurie Anderson
『Midnight Blue』 Kenny Burrell
『Hallucination Engine』 Material
  others [おもちゃ]
Tiere + Figuren(LORENZ)
動物の積み木
カプセラ(三菱鉛筆)
デルタックス(エポック社)

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