平成10年度[第2回]文化庁メディア芸術祭
平成11年度[第3回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品

デジタルアート〔インタラクティブ〕部門

クラスターワークス
© 1998 Hisashi Hoda
優秀賞

クラスターワークス

CD-ROM タイトル

作者: 祝田 久(企画・演出・
インターフェイスデザイン・プログラミング)

(日本)

作者プロフィール

祝田久

祝田 久

1955年11月14日生まれ。 1981年株式会社アニメーションスタッフルーム入社。
1984年株式会社パイオニアLDCに制作スタッフとして参加、
インタラクティブ系レーザーディスク作品の制作に携わる。
1992年株式会社ボイジャー創立に際し、取締役として就任。
1995年『エキスパンドブック・ツールキット2』、
マルチメディアグランプリ95/技術賞受賞。
1996年『ニルガーナ』マルチメディアグランプリ96/パッケージ部門アート賞受賞。
1998年『クラスターワークス』マルチメディアグランプリ98/パッケージ部門アート賞受賞、 『T-Time』マルチメディアグランプリ98/パッケージ部門教育・教養賞受賞。
株式会社ボイジャー取締役R&D担当

受賞コメント

『クラスターワークス』は光の粒子と音の変化を楽しむソフトです。 マウスの移動速度に反応して光と音が変化していきます。 点の動きだけで構成されていますから静止画で説明することは不可能です。 ですから機会がありましたら実際にマウスを動かしてみることをお奨めします。 そしてそのときには部屋の照明を消してみてください。 銀塩フィルムにもビデオテープにも記録できないなにかをRGBモニタ上で発見することを期待してます。

贈賞理由

この作品の作り出す「光と音の世界」は美しく、また、優しい。 マウスに反応する動きに遅延機能を付けた工夫は優しさを醸し出しているし、マウスを動かさないデフォルトの動きもいい。 インターラクションを強要するフォトリアルな3DCGゲームが多いなかで、安らぎのある、インタラクティブアートに相応しい作品である。

Winner's Interview

──まず、コンピュータとの出会いを教えてください。

非常に古い話なんですが、学生時代に、H68っていう日立が作ったワンボードのマイコンをいじったのがきっかけですね。

──中学校の頃にアンプ作りをしていたそうですが、そういう電気工作と、コンピュータを触りはじめたということに、何か繋がりはありますか。

多少は繋がっているんじゃないでしょうか。機械いじりとか、そういうことに対してアレルギーのようなものがなかったんじゃないかと思いますね。怖い話ですけど、真空管式のテレビの裏を開けて、ドライバーを突っ込んだりしていたこともあります。今思えば危なかったですね。まあ、壊せるものは壊してました。

──メカ好きだったのは、SFとか漫画にはぐくまれた部分もあったんでしょうか。

それは否定できないと思いますね。単純に、まあ僕の世代は、『鉄人28号』や『鉄腕アトム』っていう世代ですから。あとは例えば『スタートレック』みたいなものも見てました。

──大学では彫刻学科ということですが、8mmで映像作品を作られたんですよね。

例の日立のマイコンにですね、当時非常に珍しく、ビデオボードみたいなものがついていたんです。でも本当にシンプルな動きしかできなかったんですね。点が移動するとか。それだけじゃ単純なんで、色を変えながら、モニタを何回か8mmで多重露光して撮影していった。これがですね、カレイドスコープっぽいやつでけっこう面白いものだったんですよ。

──マイコンに触れたきっかけというのは?

いわゆるシンセサイザーというのが世に出てきて、僕がさわれるような状態になってたんです。それで、知り合いに作曲家の人がいて、その人から安く譲ってもらったんですね。まあ、面白かったです。VCFとかVCAとか、非常にアナログ的でわかりやすい。その考え方自体も面白かったんです。そんなのをいじっていたときに、それをマイコンで制御するってのをやってみたいなと。

──それでは、そもそも音楽から入ったということですね。ブライアン・イーノがお好きだということですが。

それはまあ世代的なものですね。ブライアン・イーノが出てきたときに、僕もいたということです。一番衝撃的だったのは、アンビエントっていう考え方ですね。そのあたりから気になりはじめて、よく聴いてました。

──大学を卒業し、映像のプロダクションに就職されます。そこでは、どんなことをやっていたんですか。

その頃は、コンピュータグラフィックスといっても、コンピュータでカメラをコントロールして撮影するというものでした。『2001年宇宙の旅』で木星からスターゲートに入っていくシーンがありますよね。あれを作った機械と同じことができるものを持っている会社だったんです。どうやってやるのかというと、点をいっぱい空けたようなものとか、それにフィルターをかけたようなものを、シャッターを開放にして移動させながら撮影する。そうするとフィルム上には、その移動した軌跡が残る。それを1枚撮っては戻して、1コマ進めて、また少し違う動きをさせていくと、変化のある映像ができる。10秒作るのに8時間とかかかるんですよ。大変でしたね。デジタル制御がないとやってられない。

──その後パイオニアLDCに移られます。

レーザーディスクとパーソナルコンピュータを組み合わせるとどんなものができるかというのを、いくつかやりました。ゲームみたいなものを作ってみたり、料理番組の進行をガイドするようなプログラムを作ったり。あとは、展示用の映像だとか、博物館に設置するようなものもやりましたね。

──大学時代に作った8mm作品以降、個人的な作品は作らなかったんですか。

ええ、作りたいとはずっと思ってたんですけど、時間もなかったし。それにまだ、そういうことを個人的にできる環境がなかったんですよね。パソコンのスペックにしても。

──では、『DropDragon』が初めての本格的な作品というわけですね。1995年ですから、物凄く先駆的ですね。

ただまあ、そういう意識は全然ないわけですよ。あれも、プログラムの検証用に作ったんです、関数の精度を見るために。それで、いろんなパラメーターを変えていったりしていくと、非常に予想外のパターンが出てくる。それが面白かったんです。

──その面白さと同時に、祝田さんの作品を見ていると、無常観みたいなものを感じます。

どっからどこを切り出しても同じである。こういうのをやっていると始めとか終わりとかつけようがないんじゃないか、ということはありますね。

──仏教への傾きというのはあるんですか。作品の名前にも「Nirvana」とか「Stupa」など仏教的なタームがありますが。

まあ傾きっていえばそうかもしれませんけど、例えば『ClusterWorks』に入っている『Stupa』を作ったときっていうのは、もしかしたら、実際のストゥーパ(卒塔婆)を作った昔の人間も、同じようなイメージに関する要素を持っていたんじゃないかっていう、そういう思いがあったんです。『Nirvana Engine』でいうと、よく臨死体験をすると光を見る、その光の状態っていうのと結構近いんじゃないかなと。それでそういう名前が付いているんです。 ただ、その当時思っていたのは、『Nirvana Engine』というのは、映像を変化させるという部分において、非常に効率がいいんです。ガンマテーブルという、よくモニタの色の調整に使われているテーブルがあります。それをアブノーマルな使い方をすると、『Nirvana Engine』のように変化する。ピクセルを操作しているわけではないので、非常に応答性がいいんですよ。当時は、こういう映像はどこにもないんじゃないかということで、ハマっていたということです。

──『Cluster Works』には音が入ってますが、あれもご自分で作られたんですか。

最初は、ある傾向の乱数みたいなものを作って、いろんなきっかけで合成してランダムに音を出すっていうのをやってたんですけど、ランダムなのに、何かメロディが聞こえたりする。人間の脳は、勝手に自分で解釈するようにできているんです。それで、乱数のように見えるけれども実はそうじゃないという、カオスっていうのを盛り込んだりしたんですが、聴いていても、パラメーターをいじった結果なのかそうじゃないのか、ほとんどわからなくなってきた。そうなると、自分でどうすればどうなるのかわからなくなるんです。今もう1回作れといわれても出来ないですよ。ソースコードを見ても何をやらせてるのかって自分でわからない。

──とはいえ、やはり祝田さんの制作の核には「音楽」があるようですね。

そうですね、まあ「音楽」というより「時間のあるもの」という感じでしょうか。

──そのほか、『エキスパンドブック・ツールキット』や『T-Time』などもお作りになっています。「アーティスティックな作品」系に対して、いわば「インターフェースデザイン」系、「ツール」系のお仕事ですが、制作されるときの意識は違いますか。

本当はいけないんでしょうけど、その区別は最初はなかったんです。例えば『エキスパンドブック・ツールキット』は、メールや掲示板を縦書きで見たいと、そういう個人的な欲望から出発してる。もともと、昔はコンピュータってもの自体、『Excel』とか『Photoshop』とか、そういうものは全然なかったわけですよ。誰もが自分のツールを作って使うという、そういう状況だったわけです。そういう意味では、まあ意識のなかでは変わらないですね。

──現在はどういったプロジェクトをやられていますか。

iTunesのビジュアルプラグインをやっています。まあ『Nirvana Engine』と『Cluster Works』とあまり変わらないんじゃないか、というものなんですけど、それがiTunesのビジュアルプラグインで動いているというものです。

──楽しみですね。それでは、今後何かやりたいことはありますか。

これはもう、何年も前からなんですけど、3D、いわゆる立体視です。今もあるにはありますが、裸眼立体視は、私は慣れましたが、けっこう疲れるし、メガネをかけたりとかしても非常に見にくい。ヘッドギアがありますよね。あれのレゾリューションの高いものはないかなって思ってるんです。そういうもので立体視をやりたいっていうのがありますね。

Works エキスパンドブック・ツール・キット 1993 『エキスパンドブック・ツール・キット』 http://www.voyager.co.jp/
  ドロップドラゴン 1995 『ドロップドラゴン』
  ニルバーナ・エンジン 1997 『ニルバーナ・エンジン』
  T-Time 1998 『T-Time』 http://www.voyager.co.jp/
  クラスターワークス 1998 『クラスターワークス』
My Favorites tool iTunesとRemoteDesktop
… 専らコーディングの毎日なのですが、その作業に音楽は欠かせません。
  アンプの脇に設置されたPowerBookは音楽サーバーと化していて、
  iTunes が24時間稼働していてます。RemoteDesktopは
  その音楽サーバーをリモートコントロールするために使われています。
  artist Harold Budd、Keith Jarett
  resource [サイト] スラッシュドット ジャパン http://slashdot.jp/
[書籍] ポケットに仏像
[レコード] 『Brian Eno : Music For Airports』 Ban On A Can
[DVD] Red Dwarf
  others http://ittousai.org/mt/ の「<free culture>日本語字幕版flash」は最近のおすすめです。

ページ上部へ戻る

Pick Up Archive 今こそ読みたい。これまでの記事をご紹介

中村 勇吾

巨匠インタビュー
中村 勇吾

ボツになるほど、引き出しが増えていくということですから...

トーチカ

作家インタビュー
トーチカ

作品をつくろうと思ってつくったものじゃないんです。始まりは...

竹宮 惠子

巨匠インタビュー
竹宮 惠子

スランプでも描くことをやめなかったことが、一番私を救ったと思う...

渋谷 慶一郎

コラム:データミュージアムは可能か? 渋谷 慶一郎

電子音楽とメディアアートの関係について考えてみると、その2つの...

押井 守

巨匠インタビュー
押井 守

実写であれ、アニメであれ、僕が一貫してやってきたことは...