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| © KEISUKE KISHI 2000 |
なつかしの21世紀
CG静止画/個人制作
作者: 岸 啓介
(日本)

岸 啓介
1975年神奈川県生まれ。慶應義塾大学法学部卒。 1998年テレビ東京「たけしの誰でもピカソ」アートバトル三代目チャンピオンとなり、ニューヨークのSOHOにて個展を開催。1999年作品集『愉快な機械』を出版、同書にて第3回文化庁メディア芸術祭デジタルアート〔ノンインタラクティブ〕部門大賞を受賞。
──岸さんの作品づくりは、世界観をつくることから始まっていますよね。『マザーグース』がお好きだということですが、ほかにも何か影響を受けたものはありますか。
学生の頃は『マザーグース』って結構好きで、読んでいたんです。ああいうのって、具体的な話を表してはいるけれども、実はそのことを直接言っているわけじゃなくて、何かの暗喩だったりしますよね。そういう、古いけれども普遍性があるようなものは、含蓄があるようで好きです。日本だと例えば『遠野物語』、中国だと『山海経』。本当にあったのかなかったのかわからない不思議な話だけれど、完全な絵空事では終わらないというか、その戒めみたいなものは実際の世界で役立つ。そういうものは、直接的なものよりも、説教くさくなく、本当に言いたいことを伝えられる方法のひとつなのかなと思います。
──全般に岸さんの作品はノスタルジックな雰囲気がありますが、古いものがお好きなんでしょうね。
新しいものは、例えば5年も経ってしまったら、今飛ぶ鳥を落とす勢いのものでも、あるかどうかわからないわけですよね。でも今残っている昔のものというのは、残るべくして残ったものであって、それなりに残ってきた理由とか良さがあると思います。
──昔から読書はお好きだったんですか。
そうですね、でもやはり、長編よりは短編というか説話みたいなもののほうが好きでした。
──絵はいつ頃から?
絵はそもそも得意ではなくて、日頃もあんまり描かないんです。スケッチもあまりやりません。学生の頃から美術部とかに入っていたので、絵はそれなりに描いてはいたんですけれど、あの四角い中で個性を出すというのは結構大変なことだなと思ったんです。その時に、立体なら、まだもうちょっと平面よりは変わったことができるかなと思ったところはありますね。立体をつくりはじめたのも高校卒業するかしないかぐらいの頃からです。その頃は粘土もやっていたんですが、大きいペーパークラフトをよくやっていて、モチーフはやっぱりロボットみたいなものでした。
──『昆虫物語図鑑』も含めて、人造物というテーマは一貫しているわけですね。
自然のものって厳然とそこにあるべくしてあるんでしょうけれども、人造のものをつくる時って、そこにつくる人の想いが入りますよね。例えば世の中がこうあって欲しいとか、自分がこういう風になりたいとか。人造物は、そういう想いの結晶である分、ドラマ性が生まれやすいっていうところはあるような気がするんです。
──『昆虫物語図鑑』を制作する際には、ジョアン・フォンクベルタの『秘密の動物誌』などは意識されましたか。
昆虫や生物をつくるときって、それが本当にいたような正確なスペックをもってして、そのフィクションを大真面目に語ろうというのが、ひとつのジャンルとしてあると思うんですよ。むしろ、そういうものよりは、『イソップ物語』とか、『グリム童話』みたいな、そういった説話のような要素を、今風な解釈で、自分でつくってみようと思ったんです。
──そういうふうに物語や世界をつくるときに、特に意識される点は?
やっぱり、多様性は出したいなと思っています。今つくっている『海洋物語図鑑』にしても、中国とかペルーとかアフリカとか、なるべくいろいろ違うところを題材にしています。『昆虫物語図鑑』も『海洋物語図鑑』も、実は世界としてはひとつで、ある地方ではこういう昆虫がいて、ここの海のなかにはこういう生物がいる、という感じなんです。 ただ、昔話のようなものがフィクションながらも絡んでくるので、お話も宗教とかが絡んでくると、あまりいい加減なことは書けない。そのあたりは大変だなと思います。様々な国の宗教にかける情熱っていうのは、いろんなお話をつくっていると勉強になります。
──そもそも、昆虫や海洋動物自体に興味があったんですか。
図鑑はご多分にもれず好きですけど、昔の銅版画のものとか、古いものが好きですね。伝え聞きで描いちゃったからこんなになっちゃいましたみたいな生物や、描いた人の主観が入ってきて人間の手で変わってきちゃったものとかが面白いなと思います。そういうところから、自分が考えた面白い生き物っていうのがつくれたら、と思ったんです。
──『内燃機関省』などの和風の作品を見ると、江戸時代を世界背景として設定していますね。子供の頃、時代劇がお好きだったと聞きましたが。
隣に母方の祖父母が住んでいるんですけれども、小学校の時からよく遊びに行ってたんです。学校から帰ってくるとちょうど4時ぐらいで、時代劇で『水戸黄門』とかをやっていたので、一緒に見ていました。それと並行して『ウルトラマン』とか『機動戦士ガンダム』とかも見ていて、すべてが混然一体となってましたね。『ウルトラマン』も現実離れしているけれども、『水戸黄門』の江戸時代の世界観っていうのも、子供心にしてみれば、まるっきりファンタジックなものですよね。両方が同列にあったような気がします。
──江戸時代のロボットというのは、カラクリ人形への興味からですか。
江戸時代の頃をモチーフにしていたのは、戦国時代って生きるのに精一杯というか、日々これ戦いみたいな感じがあるので割と合理主義に走るけれども、江戸って、まあそれなりに平和で、何百年も続いていて、持ち物とかもいろんな装飾で贅を出してみたり、ビジュアル的に円熟していたところがあるのかなと思います。そういう意味では、人を殺すためのロボットじゃなくて、単純に人に見せるための、自分がどれだけ金持ちかを示すためのロボットが、もし仮にあったとしたら、戦国時代よりかは江戸時代のほうが自然かなと思ったんです。
──ロボットというと多くの方はSFからの影響が強いと思いますが、SFに関してはいかがですか。
世界観として独特な雰囲気が出ているものが好きですね。『ゼイラム』っていう雨宮慶太監督の映画作品があって、和風のものですが、それはすごく好きで、『内燃機関省』も多分に影響されています。映像ということでいうと、SFはまた違うんですけど、立体物のコマ撮りアニメーションは好きです。CGや絵と違った、独特の存在感があると思います。
──例えば?
ブラザーズ・クエイの『ストリート・オブ・クロコダイル』や『ギルガメッシュ』とか、ちょっと不気味なんだけれどかわいいっていうぎりぎりのバランスがいいですよね。イジー・バルタの『笛吹き男』っていう全部木彫りの彫刻でできているのが動く作品は、セットを見ただけで、つくった人の情念が画面から出てくるようで、ありがたいものを見せてもらったという感じでした。
──造形の技術的なところを少し伺います。作品の主な素材は何ですか。
樹脂粘土です。
──身の回りのものを素材として使うこともあるそうですね。
そうですね。カッターのつまみの部分を型取りしたり、ガチャポンのカプセルを使ったり。それを使ったから作品のテーマ上どうこうっていうことじゃないんですけど、身の回りのものを使ってもつくれるということです。あるものを見て、それを何かに見立ててつくろうとすると、一からデザインするのとは別の、思いがけない形やデザインが思い浮かんだりします。
──最後の質問になりますが、古今東西、この人には作品を見てもらいたいっていう人はいますか。
誰っていうわけではないんですけれども、荒俣宏さんが紹介しているような、昔の博物図鑑を描いていた人たちと、どういうことを考えてああいう絵を描いていたのかっていうのと、自分が今つくっているものに関して、一緒に話ができたらいいなと思います。あとそうですね、荒俣さんに見てもらって話ができればいいと思います。
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