平成11年度[第3回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品

アニメーション部門

まかせてイルか!
© 大地丙太郎・☆画プロ/CW
優秀賞

まかせてイルか!

オリジナル・ビデオ・アニメーション

作者: 大地 丙太郎

(日本)

MOVIE

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作者プロフィール

大地 丙太郎

大地 丙太郎

1956年高崎生まれ。赤塚不二夫の『おそ松くん』にしびれギャグ漫画家を目指す。東京工芸大学短期大学部卒業後、アニメーション撮影会社に入社。ビデオカメラマン、アニメーション制作を経て1995年『ナースエンジェルりりかSOS』で監督デビュー。代表作は『こどものおもちゃ』『すごいよ!!マサルさん』『おじゃる丸』『十兵衛ちゃん』『今、そこにいる僕』『フルーツバスケット』。

受賞コメント

『まかせてイルか!』は自作でもっとも好きな作品になりました。原案からの完全オリジナル。自分がやりたかったコトを全部詰め込み、スタッフ、キャストにも恵まれました。子供と大人と両方の視点で観られるストーリーです。OVAという形をとっていますが、今一番地上波のテレビでお茶の間に流して欲しいジャンルの作品としての提案でもあります。それだけに今回の受賞は心から嬉しいです。ありがとうございました。

贈賞理由

元気に頑張るというテーマを、このように手馴れた演出と大衆的なキャラクターで構成した制作者の手腕に拍手を送りたい。手話まで取り込むことができる目配りと使いこなしてみせる演出の巧妙さは、プロであっても見事である。もともとアニメというものは、公共に楽しさを提供する媒体であるのだから、妙な妄想をそだてる大人向け作品にくらべて秀逸である。このような作品の制作を支援する体勢と能力がない大人社会に対して、制作者の異議申し立てが含まれていて返す言葉がない。

11のQ&A

Q1
初めて「創作」を意識した時に、表現手法として使用した道具は何ですか?
A1
1枚1円の画用紙と鉛筆です。
Q2
それは何歳の時で、何を創作しましたか?また、そのツールを選んだ理由をお書きください。
A2
小学校2年生の時でした。 赤塚不二夫先生の『おそ松くん』に感動して感化されましたので、『そんなのカン太』というギャグマンガでした。
Q3
今までの作品を通して、共通して持ち続けている理念やテーマは何ですか?
A3
“笑い”です。 『こどものおもちゃ』を演出してからはシリアスでシビアな重いテーマ(社会性も含む)とギャグを同居させることが快感になりました。以降、ほとんどの作品がこのスタイルになりました。 意識しているわけではないけど、親子関係をテーマにすることが多くなりました。
Q4
「テクノロジーとの接点」を感じる時は? また、メディアアートとアートの共通点/相違点は?
A4
アニメーションの仕事は、常にテクノロジーあってのものです。つまり、常に感じています。 “メディアアート”と既存の“アート”の共通点、相違点ということに関してですが、“メディアアート”という意味が「商売作品」という解釈だとしたら比べられるようなものではないような気がします。要は“感じるか感じないか”“おもしろいかおもしろくないか”ではないでしょうか?
Q5
現在使用している創作ツールは、自分の作品にどんな表現をもたらしましたか?
A5
現在使用している創作ツールはMacintosh、デジカメ、DVカメラなどデジタル機器ですが、これらには表現の可能性が無限にあると思います。 アナログ時代から飛躍的な表現力のアップを実感していますが、現在ツール負けしていることは否めないでしょう。 発想は、よりアナログでなくてはいけないのでは?
Q6
自身のテーマおよびメディアアートは、時代と共に変わっていくと思いますか?
A6
当然のことながら変わっていくでしょう。変わらないということはあり得ないと思います。 メディアの発達に関しては“時代”かもしれないけど、テーマに関しては“時代”ということよりも自分自身の年齢が重なっていくことの方が大きな要因だと思います。 家族の成長だけでも自分に影響する要因は大きい。また、経験は積めば積むほど深みが出るのも当然でしょうから。
Q7
最も得意とする表現方法は? また、作品が社会に与える影響はどうあると思いますか?
A7
まず“笑い”です。 そして独創性と一般性。 自分の作品はTVシリーズを常に意識しています。今回受賞した『まかせてイルか!』もTVシリーズを目指しているし、こういう作品をお茶の間に流して欲しい、自分でも見たいという気持を含めた提案でもあります。
Q8
座右の銘は?
A8
特に強くはありませんが、好きな言葉としては「ハンパはブー!」。
Q9
どんな時にインスピレーションを感じることが多いですか?
A9
いつでもどこでも、感じる時は感じます。 テレビやマンガや映画や小説などを読んでいて、題材や演出はおもしろかったりするのに「もうひとつ消化されていないな」なんて感じた時にインスピレーションが湧いたりします。 自分がやったらどんな風になるか、などを考えるからでしょう。傑作に触れている時は単純に楽しんでいます。あと、車の運転中にひらめきは多いです。危ないですね。
Q10
今後の活動展開についてのビジョンは?
A10
テレビ(地上波)をおもしろく! お茶の間を楽しく!
Q11
あなたが影響を受けたモノ、ひとは?
A11
赤塚不二夫
私の原点です。 小学2年で『おそ松くん』を初めて読んだ時は衝撃でした。このマンガ家さんのような人になりたいと思いました。自分の人生をスタートさせてくれた人です。 ナンセンスギャグマンガを日本に定着させた功労者であり、いまだに赤塚不二夫を越えるギャグ作家は登場していない。その精神を引き継ぎたいと思いました。

近衛十四郎
「素浪人月影兵庫」というテレビ番組で、ナンセンスコメディとチャンバラの魅力にとりつかれ、主演の近衛十四郎という役者、柳生十兵衛というキャラクターに惚れました。自作『十兵衛ちゃん』の発想につながりました。また、近衛十四郎主演の映画『柳生武芸帳・片目の忍者』に、赤塚不二夫の『おそ松くん』以来の衝撃を受けました。徹底的に非情な柳生忍軍の姿に、シリアスの頂点を見た思いでした。自作のシリアス部分に多大に影響していると思います。

江口寿史
赤塚不二夫がギャグの頂点であり、ほかの追随を許さぬ唯一無二の存在だと思っていたところに出現したのが、江口寿史でした。 彼のギャグはデザインされた世界でしょう。下ネタさえも上品に感じる。これは徹底的な絵のセンスにほかならないでしょう。ギャグマンガに音を感じさせた作家でもあります。ギャグの命は“間”。江口作品を映像化したら…という想定で、今の自分のフィルムの“間”が完成したと思っています。

チャールズ・チャップリン
スラプスティックコメディの父ですが、後年の笑いと涙の両面を描いた長編映画には多大に影響されました。いいエンターテインメントは“笑い”と“涙”で構成されていると改めて思いました。腹がよじれるほどおかしく、最後に心地よい涙で締めくくられる彼の作品は、自分が目指すところでもあります。