富野 由悠季(アニメーション監督・演出家)
デジタル技術が一般化した現在、予想されたことではあったが、画像主導型の作品が大半であったのは残念である。大賞の候補になった『ハウルの動く城』と『マインド・ゲーム』については、前者の手堅い作りとメジャーの力量を認めるものの、結末について作品テーマとの齟齬を認めざるを得ないという議論があった。後者については、表現のあり方が本芸術祭にふさわしくないのではないかという議論があったものの、物語のテーマと現代の歪みを直截的に表現しているストーリーテリング、そして、アニメでしか描き得ない技法をもって、誤解なく一般的な映画といえる様式を獲得しているので評価できた。他の長編作品については、一部の審査委員の嗜好に合った部分での評価がないではなかったが、基本的には選評の対象にならなかった。アニメが社会的に認知されているという錯誤に基づく製作態度や、もともとアニメなどはレベルの低い仕事であるという潜在的な認識を証明するような現れ方は、当事者として正視することができなかった。上等な媒体でないという認識に立つなら、せめて内向せず公共に楽しさを与えるものであってほしいと思うのである。短編についても同じ傾向があるからこそ、新興の意識に根ざしている風土から優れた作品がここに応募されたことに感謝している。それが『BIRTHDAY BOY』であり、時代性を表現しながらも、情に流されない明快な展開に感服した。アニメ先進国のスタッフはこの作品から学ぶべきものが山ほどあると感じた。また『ACIDMAN short film
』には技法と表現すべきテーマの一致を見て、活力があり、その表現スタイルに好感がもてた。『夢』という佳作には物語性を具有する映像のあり方をシニカルに獲得していて嬉しい。伝統と慣れ仕事に埋没しているスタッフのメンタリティというものは、国境を越えて同列であるのだから、新たな気持ちをもって創作に挑戦していただきたいと関係各位にお願いいたしたい。
1941年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業。1960年代半ば、虫プロでTVアニメ『鉄腕アトム』などの演出・脚本を経てフリーに。以降、おびただ しい数のアニメ・シリーズの絵コンテを手掛け、1970年代後半からは自らの原案・演出で、ロボット・アニメに新風を吹き込む。監督作は1972年のデ ビュー作『海のトリトン』をはじめ、『機動戦士ガンダム』『伝説巨伸イデオン』など多数。最近では『ブレンパワード』他、数々の話題作を手がける。
▼長編・OVA 作品講評/神村 幸子(アニメーター)
今回、大賞の選考にあたりついに結論がでなかった。『ハウルの動く城』を推す委員2名、対、『マインド・ゲーム』を推す委員が3名で、2対3ということでもあり、主査裁定で『マインド・ゲーム』を大賞としたが、審査の経過を明らかにすることによって、審査委員以外の方々に審査が公正に行われたものであることの理解を得たい。最終審査は各委員が最終審査に残った14作品に点数をつける方法で行われた。合計点では『ハウルの動く城』が1位、『マインド・ゲーム』は2位であった。点差の理由は『ハウルの動く城』がすべて平均点以上なのに対して『マインド・ゲーム』には最低点評価もあったためである。『マインド・ゲーム』は評価が両極端に分かれる作品で、最高傑作であるという意見と、不快で耐え難いという意見があった。次にそのほかの劇場用作品だが、評価が分かれたため受賞にはいたらなかったがすばらしい作品があり、テレビシリーズにも『妄想代理人』や『サムライチャンプルー』などテレビ用作品の水準をはるかに超える作品が多々あった。日本のアニメーションの水準が確実に上がっているのを感じて嬉しい。
▼短編 作品講評/寺井 弘典(映像クリエイター)
短編アニメーション作品は多数制作されているにもかかわらず、普段、目に触れることが少ないジャンルである。その露出不足な閉塞感を打開してくれるような、潜在能力をもっているか? 何回も鑑賞できる独自性があるか? コミュニケーションの場を広げていく可能性があるか?を選考のポイントにした。『カクレンボ』、『神谷通信』、『元祖マジックサーカス』など完成度的には申し分ないのだが、ストーリーの語り方、構成にもっと工夫と創意があってよかったのではないかというのが悔やまれるポイントで、技術力の高い作品ほど華やかな反面、訴えたい内容の薄まりが気掛かりである。また、テーマを絞り込んだ短編作品として、言いたいことを効果的に言い切っている作品を高く評価したい。的確な観察力と隙のない構成力『LOOP POOL』、韓国の戦争体験を鮮やかに描き切った『BIRTHDAY BOY』。『夢』、『TRAIN SURFER』はアニメーション技術を駆使した作品ではないが、これも楽しいアニメーション作品なんだということを認めていいはずだ。これからも広義の意味での「アニメーション」作品の応募にも期待したい。
神村 幸子(アニメーター)
株式会社サンライズ『シティーハンター』の作画監督、キャラクターデザイン、株式会社東映アニメーション『マシュランボー』の総作画監督、キャラクターデザインなどを務める一方、株式会社ウォルト・ディズニーアニメーションジャパンのアーティスト教育にも携わる。現在、株式会社手塚プロダクションのテレビシリーズ『ブラック・ジャック』の総作画監督とキャラクターデザインを担当している。
寺井 弘典(映像クリエイター)
1961年、鹿児島県生まれ。多摩美術大学卒業後、ビデオアート作品の制作やミュージックビデオ演出を経て、MTV JAPANでオンエア・プロモーション・クリエイティブディレクターに。SIGGRAPH97、文化庁メディア芸術祭優秀賞を相次いで受賞。2001年にはMTV JAPANから独立したP.I.C.S.の立ち上げに参加。以降、数多くのCM、MV、オリジナルムービーなどを手がけている。 onedotzero_nipponアドバイザー。
樋口 真嗣(映画監督)
1965年、東京都生まれ。高校卒業後、自主制作映画団体DAICON-FILM(後のGAINAX)に参加。1995年、『ガメラ大怪獣空中決戦』の特技監督を努め、日本アカデミー賞特別賞他、受賞。1996年、テレビシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』に絵コンテ、脚本で参加。他、『ドラゴンヘッド』『CASSHERN』『NINNIN 忍者ハットリくん劇場版』など、あらゆるジャンルで活躍。2005年3月には初の長編監督作品『ローレライ』が公開予定。
森 卓也(映画評論家)
1933年愛知県生まれ。南山大学中退。1956年~1979年まで尾西市役所勤務。著書は『アニメーション入門』(1966年、美術出版社)から『映画そして落語』(1998年、ワイズ出版)まで6冊。1966年から毎日映画コンクール選考委員。キネマ旬報、中日新聞などに寄稿。『20世紀アメリカ映画辞典』(カタログハウス)などの辞典に執筆。生来“可笑しいこと”が好きで、昨今は上方落語を聴くため京都・大阪へ日帰りすることが多い。
![平成16年度[第8回]文化庁メディア芸術祭 平成16年度[第8回]文化庁メディア芸術祭](/festival/images/no08.gif)



