中島 信也(CMディレクター)
「エンターテインメント部門」の大賞は「ゲーム作品」の中から選ばれた。今やわが国で最も時間と予算を費やして作られているコンテンツと言っても過言ではないであろうゲームソフト。だが大賞の『まわるメイドインワリオ』はいわゆる巨大作ではない。ゲームの楽しみ方の前提を覆す、コロンブスの卵的な発想の転換が高く評価されたことは大変意味があると思う。また、優秀賞の『ピクトチャット』も当初ゲーム作品として評価されていたが、この面白さは「新技術にささえられた新しい遊びの提案」であり、むしろ「遊具」としてその「アイディア」を評価した。「映像作品」には今年多くのCM作品が寄せられ、そのうち1本が優秀賞に選ばれている。これは「文化」や「芸術」とはあまり縁のないものと、とらえられていた感のあるテレビ CMにとっては画期的なことである。そのほとんどがCGやデジタル技術を駆使した表現であるが、これらの映像新技術のもとにおいては「CM」「本編」などという分類にはもはや意味がなくなってきていることを示している。一方で今ひとつ盛り上がりにかけていたのが「Web作品」である。膨大な手間と予算をかけて作られているものも少なくないが、インターネット10年といわれる節目にあって、今後を占う新しい提案性を示すものにめぐり会えなかったのは大変残念なことである。メディアとしての地位が確立されつつある中、今後この分野で意欲作が出てくることを強く期待したい。個人作品で奨励賞をとった『あかね雲』は、「人間の心に訴えかけ共感を呼び感動を与える作品であれば、それは立派なエンターテインメントである」ということを示す重要な作品である。それは巨大資本のバックアップによって送り出されてきている作品がひしめいている「エンターテインメント部門」において、忘れてはならない本質をわれわれに見せつけるものであり、個人的にはこの作品に出会えて、審査委員各位の評価を受けたことが大変嬉しかった。
1959年、福岡県生まれ。年間40本近くのCMの演出を手がける一方で、株式会社東北新社取締役、多摩美術大学教授を務める。デジタル技術を駆使した娯楽性の高いCMで数々の賞を受賞。主な作品に日清カップヌードル『hungry?』(カンヌ広告祭グランプリ)、サントリーDAKARA『小便小僧』、 HONDA『STEP WGN』、サントリー『伊右衛門』など。
▼ゲーム・遊具 作品講評/鈴木 裕(ゲームクリエイター)
個人のアイデア的な作品から、ゲームメーカーの大作にいたるまでいろいろな作品が混在したが、公正を期すため、発想の斬新さ、オリジナリティの高さ、チャレンジの度合いなどに重点を置き、評価した。去年に比べて、今年の応募作品は、オリジナリティやインパクトという面においてパワーダウンした印象を受けた。ニンテンドーDSなど、新型のハードウェアの登場により、タッチパネルやワイヤレス通信などの新しい遊びの可能性が提案されたことは喜ばしい。シリーズ物においては、『メタルギアソリッド3』や『バイオハザード4』など人気、マーケットバリュー共に申し分無い作品の応募があったが、新しいチャレンジや、強い個性を持った作品は少なく感じた。強いオリジナリティを持った多くの作品の土壌から、新しいマーケットが生まれることを考えると、今年以上に来年は、チャレンジャブルな作品の応募を望む。
▼映像 作品講評/中島 信也(CMディレクター)
エンターテインメント部門の映像作品は、今年は大変多彩な分野からの応募があった。フルCGのクオリティだけでなく、映像そのものを表現する高い演出力に見るものの心を強くひきつけた『鬼武者3』のゲーム・オープニング映像。CGと実写の融合に作者の詩情が光る『YKK AP EVOLUTION』。この、ほかでは味わえない独特な感覚が評価された作品はなんとCM映像である。そして、どうしても感情移入してしまう素敵なキャラクターを、純朴ながらユーモアあふれるストーリーの中で展開した『あかね雲』。奨励賞を獲得したこの映像はプライベート・フルCG作品。このほか推薦作品にもミュージック・クリップやセルDVD作品といった様々なカテゴリーの映像がならんでいる。デジタル映像技術のもとで、メディアの垣根は消滅しようとしている。エンターテインメント部門の映像作品はここからいよいよ「本当にひとの心に響くのかどうか」という本質的な評価の次元に突入していくのである。
▼ウェブ 作品講評/宮崎 光弘(アートディレクター)
エンターテインメントとしてのウェブサイトを考えた場合、サイトの中でユーザーにどのような体験や経験をさせるかということが重要なポイントになる。ユーザーのアクションに対してどのようなリアクションを設計するか?優れたエンターテインメントのウェブサイトは、全体からディテールにいたるまで、緻密にそのインタラクションがデザインされている。今年度の応募作品は、全体にそういったユーザー・エクスペリエンスを考慮して制作された作品が多かったのが特徴的であり、良かった点でもある。また、ユーザーにサイトに何度も訪れてもらうような仕掛けも数多くされていた。企業からの応募のサイトはCMなどのリアルなメディアとのインテグレーションを設計段階から意識して作られているものも多かった。しかし、他のメディアとの連動によって、ウェブサイトにオリジナルのパワーが感じられなかったようにも思われる。今後のエンターテインメントとしてのウェブサイトのひとつの在り方は、サイトに閉じるだけでなく、他のメディアと連動しながら、しかもサイトとしてのオリジナルの魅力を失わないようなクリエイティブが必要になる。
石原 恒和(ゲームプロデューサー)
1957年生まれ。筑波大学大学院芸術研究科修了。1995年に株式会社クリーチャーズを設立、その後『ポケットモンスター赤・緑』をプロデュース。 1998年、株式会社ポケモンセンター(現・株式会社ポケモン)設立と同時に代表取締役社長に就任。現在は、同ソフトを翻案した『ポケモンカードゲーム』や、テレビアニメ、劇場映画などポケモン全体のブランドマネジメントに携わる。
斎藤 由多加(ゲームデザイナー)
1962年、東京生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。1993年にシミュレーションゲーム『タワー』を発表、全米ソフトウェア出版協会ベストシミュレーション・オブ・ザ・イヤー賞などを国内外で受賞。1998年、株式会社ビバリウム設立、現在代表取締役社長。1999年に同居型育成シミュレーションゲーム『シーマン~禁断のペット~』を発表、第3回文化庁メディア芸術祭デジタルアートインタラクティブ部門優秀賞他、受賞。
鈴木 裕(ゲームクリエイター)
1958年生まれ。岩手県出身。岡山理科大学電子理学部電子科卒業後、1983年セガ・エンタープライズ(現・株式会社セガ)へ入社。2年後、世界初のアーケード用体感ゲーム『ハングオン』を発表。また1993年には、3D-CG対戦格闘ゲーム『バーチャファイター』、1999年に家庭用ゲーム『シェンムー一章 横須賀』など、話題作を次々と生み出す。現在、株式会社セガクリエイティブオフィサー兼第2NE研究開発部長。
宮崎 光弘(アートディレクター)
1957年、東京都生まれ。東京造形大学美術学部卒業。ファッション誌のアートディレクションに携わった後、1986年、株式会社アクシス入社。同グループのCI、デザイン誌『アクシス』のアートディレクションのほか、グラフィックデザインを中心に様々なプロジェクトを行う。最近ではペーパー・メディアのデザインに加えてマルチメディア関連のデザインも数多く手掛けている。
![平成16年度[第8回]文化庁メディア芸術祭 平成16年度[第8回]文化庁メディア芸術祭](/festival/images/no08.gif)



