里中 満智子(マンガ家)
マンガの価値はそれぞれの作品に対して読者一人ひとりが決めるものであって、公の賞を受けようが受けまいが、作品そのものの価値に変化が生じるわけではない。しかし“文化”としてその年の記念すべき作品を選び贈賞することに意味がある。一、世界中の優れた作品を募り、マンガ文化の多様性と広がりをお互いに確認し、かつ、世界の共通語としてのマンガの心を共有したい。一、毎年あまりにも多くのマンガ作品が発売されるがゆえに、世間的な注目をあびないままとおりすぎていく秀作もある。賞を機会に「まだお読みでない人は、ぜひ気付いて下さい」というアピールになる。一、マンガ大国といわれている我が国だが、外国に紹介される作品の多くが「大ヒット作」か「アニメ化された作品」だ。日本のマンガの魅力と底力はその「多様性」にあるということを、もっと広く知ってもらいたい。多様な価値観を認めあうという日本の心がマンガ表現の広がりを生みだしたのだから。海外からのマンガも、ぜひ受賞してもらいたいと願っていたのだが、今年は例年にもまして実力作ぞろいで、うれしい悲鳴をあげながらの充実した最終選考会となった。結果として今回の受賞作は、はからずも「多様性」に満ちた顔ぶれとなった。読者の皆さんにはぜひ、受賞作だけではなく、推薦作品も(まだお読みでないのなら)目をとおしていただきたい。オンライン作品も年々充実してきている。紙に描く表現とは違う、デジタルならではの見せ方を期待している。紙に描こうがデジタルで表現しようが、「心にひびくドラマ性」が作品の力になることに変わりはない。「デジタルでできること」から一歩進んで「デジタル作品だからこそ表現できる世界が、ドラマ性を高める」時代が来ている。この分野の今後が楽しみだ。
大阪市生まれ。高校在学時に『ピアの肖像』で第1回講談社新人漫画賞を受賞。1974年、『あした輝く』『姫が行く!』の両作品で講談社出版文化賞受賞。代表作に『あすなろ坂』『愛人たち』『アリエスの乙女たち』『ギリシア神話』など多数。現在、『万葉集』の世界を描いた『天上の虹』を描き下ろし単行本という形で執筆中。大阪芸術大学芸術学部文芸学科教授。
▼ストーリーマンガ 作品講評/竹宮 惠子(マンガ家)
たいへん長い物語から短編まで、またギャグマンガやカートゥーン、そしてフィギュアに至るまでをフォローする「文化庁メディア芸術祭」の名にふさわしい出品の数々だったと思う。海外からも、昨年よりさらに数多い国々からの応募があり、その中からもう少しで受賞者が出てきそうなところまで来ている。さらに一層の広報に努め、多くの応募を願って、この賞ならではの授賞の価値観を確立していくことができれば、何よりのことであろう。
▼オンラインマンガ・自主制作マンガ・その他 作品講評/木村 忠夫(日本漫画学院学院長)
本年度より新たに審査対象になった「オンラインマンガ」は、点数は少ないものの海外からの応募もあり、興味深く審査いたしました。残念ながら賞の対象作品は選出されませんでしたが、従来の紙媒体と同じ平面媒体の表現にもかかわらず、画像(デジタル)からの作品は小さな動きや音声、色彩作画などが駆使されており、紙媒体の表現の限界を超えた面白さが表現されていました。オンラインマンガ人口は増えており、今後も国内外からの応募作品が増えてくると思われますが、マンガ製作の基本と手法にのっとった作品作りで、面白さの拡大を追及して読者を魅了して欲しいものです。自主制作の作品も増えてきており、デジタルによる大胆な表現方法で描かれてきている作品が目立ち、商業誌では発揮できないような内容もかなりありましたが、全体的に小さくまとまりすぎてしまい、何となく独りよがりな印象を持ちました。今後は個性あふれる面白さを追求した多数の応募を期待したいものです。
木村 忠夫(日本漫画学院学院長)
1944年、東京都生まれ。1977年日本漫画学院を設立。今日まで多くの漫画家を輩出するとともに、28年以上にわたって発行している『漫画新聞』の編集長を務め、漫画界の動向やアジアの漫画を紹介。2002年、漫画サミット開催を推進した功績により第31回日本漫画家協会漫画賞・特別賞を受賞。 2004年、北京で開催された「世界漫画大会」で、中国の漫画文化向上の貢献者として顕彰される。著書に『漫画家名鑑』。
黒鉄 ヒロシ(マンガ家)
1947年、高知県生まれ。武蔵野美術大学中退。1968年、『山賊の唄が聞こえる』でデビュー。以後『結作物語』『ひみこーッ』など、次々とギャグ作品を雑誌に発表。エッセイ、テレビ出演と活動を広げる一方で、近年は幕末史を題材にしたマンガ作品を多く手がける。1987年、第18回講談社文化賞さし絵賞、1997年『新選組』で文藝春秋漫画賞、98年『坂本龍馬』により第2回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞。
竹宮 惠子(マンガ家)
1950年、徳島県生まれ。17歳で集英社『マーガレット』の新人賞に佳作入選、デビューを果たす。徳島大学在学中、小学館『週刊少女コミック』に『森の子トール』を連載開始。その後、上京し本格的に作家活動に入る。代表作に『地球へ…』『風と木の詩』『イズァローン伝説』など。1980年、第25回小学館漫画賞受賞。2000年4月より京都精華大学芸術学部マンガ学科の専任教授に。2001年、AVON Awards to Women功労賞受賞。
ちば てつや(マンガ家)
1939年、東京都生まれ。1956年、単行本作品でプロデビュー。1958年『ママのバイオリン』で雑誌連載を始め、1961年『ちかいの魔球』で週刊少年誌にデビュー。主な作品に『1・2・3と4・5・ロク』『ユキの太陽』『紫電改のタカ』『ハリスの旋風』『みそっかす』『あしたのジョー』『おれは鉄兵』『あした天気になあれ』『のたり松太郎』など。社団法人日本漫画家協会常務理事。
![平成16年度[第8回]文化庁メディア芸術祭 平成16年度[第8回]文化庁メディア芸術祭](/festival/images/no08.gif)



