平成11年度[第3回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品

アート部門

Khronos Projector
© Alvaro Cassinelli
大 賞

Khronos Projector

インタラクティブ

作者: Alvaro CASSINELLI

(ウルグアイ)

MOVIE

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作者プロフィール

Alvaro CASSINELLI

Alvaro CASSINELLI

アルバロ・カシネリ。1972年、ウルグアイ生まれ。フランスで電気通信工学の学士号および物理学の博士号を取得。現在は、東京大学石川並木小室研究室助手。最近では最先端の光電子工学技術を使用した人工視覚とヒューマン・コンピュータ・インターフェースの分野の研究を行なっている。

受賞コメント

この作品は、いかにテクノロジーが人間の表現のための新しいメディアを創造することができるかという、ひとつの例です。人々は、文字通りスクリーンを突き抜けて、映像の「時間の実態」を形づくることができ、あらかじめ撮影しておいた出来事を、素手で変化させることによって、その視覚的物語を再建することができるのです。石川正俊さん、伊藤崇仁さん、Monica BRESSAGLIAさんほか、このプロジェクトにおいて私を支援してくださった方々に感謝します。

贈賞理由

新しい時代を感じさせる作品である。発想の斬新さを高度な技術力で見事に表現している。大きなポイントは伸縮性の高いスクリーンを使ったインタラクションで、時間層を自在に動かすというダイナミックな体験をシンプルに具現化している。あらゆる表現の可能性を内包するアイデアであり、今後の展開が楽しみである。欲をいえば、もう少し映しだされる映像内容の主題を突き詰めてほしい。深い思考まで表現されることができれば、芸術作品としての完成度も高まっていくだろう。

11のQ&A

Q1
初めて「創作」したのは何歳でしたか? またどんな道具を使って、どんなものを創作しましたか?
A1
私が初めて何かを創作したのは、4歳か5歳のときだったと思います…。トイレをめちゃくちゃにしたのです。トイレの中にこもって鍵をかけ、ガラス瓶や、プラスティックのチューブ、壊れたおもちゃの車輪、マットレスのスプリングなんかを持ちこみました。わたしにとって、「機械」の部品みたいに見えたあらゆるものです。それから、その全部を組み立てました(どちらかといえば、行きあたりばったりのものでしたが、それでも半分目を閉じて、部品の間の隠された「連結部」を感じとろうとしていました)。そして、自分の創造したものに命を吹きこむべく、水道の蛇口を全開にしたのです。車輪は水の勢いで回り、スプリングはひょいっと動き、そこら中水がほとばしり、そして全部がばらばらになりました。子ども版ティンゲリーの噴水(※)です。これが私にとって「アート」の領域に足を踏み入れた最初のことだっただろうと思います。大人になってわたしは科学を職業とするようになりましたが、いつも機械と(同様に液体と)その中に存在する彫刻に注目していました。

※ジャン・ティンゲリー(1922-1991):機械仕掛けの彫刻で有名なスイスの造形作家。生涯のパートナーとなったニキ・ド・サンファルとの共同作品であるポンピドゥー・センター横の噴水が代表作
Q2
現在使用している創作ツールはどのようなものですか? また、そのツールを選んだ理由をお書きください。
A2
科学者としてのツールと手段は、それぞれ科学(その手法)とテクノロジー(主としてコンピュータと光電子工学技術)です。
Q3
あなたが思い描く「夢の創作ツール」とは?
A3
コンピュータ、そしてインターネット、これらの「ドリーム・ツール」はすでに存在するものです。私はこのツール(あるいは手段)に勝る、万能で詩的な、可能性を秘めたものを思い浮かべることはできません。しかし依然として人間とコンピュータ間の、より継ぎ目のないインターフェースが必要であると感じています。「ドリーム・インターフェース」…私はそれに取り組んでいるところです!
Q4
これまでの作品に共通するテーマはありますか? あるとしたら、そのテーマとはどういったものですか?
A4
『Khronos Projector』がメディア・アーティストとしての初めてのまじめな作品なので、この質問に答えるには充分な観点に欠けていると思います。しかし、世界を理解する助けとなるものとして、また表現のツールとして、対象(現実のものであれ仮想のものであれ)を表現したり相互作用したりする新しい方法に興味がある、と言っておきましょう。
Q5
作品をつくるうえで最も苦労する部分、またはこだわる部分はどこですか?
A5
最初の試練は信念を貫くことです。「私が現在取り組んでいる作品は、次のアイデアにとりかかる前に完成させるだけの価値があるものだ」という信念です(新しいアイデアは、いつだってより魅力的に見えるものですから)。そしてその作品は完成させる価値があるのだと自分自身を納得させることに成功すると、ちょうどそのとき、次の試練がやってきます。その作品の完全性を追求するのをどこでやめるかを見極めることです!(これはとくにソフトウェアについていえることです)
Q6
自分の作品が「メディア芸術」だと意識したことはありますか。また「メディア芸術」は既存の「芸術」と比べて、どんな違いがあると思いますか?
A6
私はコンピュータ、レーザー、光電子工学部品を使用しています。これらは定義によればすべて「メディア芸術」です。メディア芸術と伝統的な芸術の違いについては、20〜30年前では非常に大きかったことでしょう。「新技術」によってつくられた陶酔状態と、芸術作品の実際の価値との違いを明らかにするのが難しかった時代です。しかしこの先入観は、現在ではおそらく修正されていると思います(我々がテクノロジー、あるいは「目新しいもの」の概念そのものに慣れてきたのでしょうか)。いずれにしてもテクノロジーは、明らかに表現にとって新たな手段になりつつあります。将来はメディア芸術と伝統的な芸術との区別は、美術史家の間でのみ語られるものとなるのかもしれません。しかしまた、これが現実のものとなるためには、幾万年もの間、彫刻家の手にとって粘土が本能的に使いやすく融通の利くものであったように、あらゆる「未来の科学技術」をつくることのできる「ドリーム・インターフェース」の存在が必要なのです。
Q7
アーティストとして、いつもどのような姿勢(スタンス、または観点)で作品を制作していますか?
A7
純粋に「メディア芸術」に捧げることができない(また、したいとも思わない)ゆえに、私の立場は少々特異なものです。私の作品には何かしら適切な「科学的」要素が含まれていなくてはなりません。現在、私は「人間とコンピュータのインタラクション」にとりかかっています。これはインタラクティブ・アートのインスタレーションを、新しいインタラクション・テクノロジーにとっての完璧な「たたき台」として使用する機会を与えてくれています。
Q8
座右の銘は?
A8
ただ自分のアイデアを試し、探究することです。それがあなたの時間を費やすにふさわしいことかどうか、あなたの完全なオリジナルなのかどうか、大きな可能性を秘めているかどうか、などとぐずぐず考えていてはいけません。このことは作業のごく早い段階ですぐにわかることです。さらに重要なことは、一所懸命取り組んでいることから何が生まれてくるか、誰にも予測できないということです。ぜんぜん違うものかもしれないし、もとのアイデアよりもっとおもしろいものかもしれません。それを楽しむことです。
Q9
どんなときにインスピレーションを感じることが多いですか?
A9
何かに集中しているとき、私の頭脳は決まってコーヒー・ブレイクを取りたがります。するといつも新しいアイデアが沸いてくるのですが、この魅力的なものを実現させるためには、おそらく何ヵ月も待たなくてはならないだろうということがわかるので、ほとんど苦痛に感じるほどです(その新しいアイデアは、必ず私の「科学的」作品に適合するに違いないのですから!)。また、ある種の人々と話をすると、完璧に、クレージーな「連想モード」に陥ります。わたしはブレーンストーミングが大好きなのです。
Q10
今後の活動展開について、どのようなビジョンを持っていますか?
A10
当分の間、私は科学とアートの「端っこ」で創作を続けるだろうと思います。このふたつはとてもおもしろい均衡を保っているので、非常に多くのことを学ぶことができます(これによって、私の科学的な著作も刺激を受けています)。また、ほかのアーティストたちとのコラボレーションもできればと思っています。
Q11
あなたが影響を受けたモノ、ひとは?
A11
・人々
時間と繰り返しに取りつかれているJ.L.ボルヘス。アインシュタインの相対性理論とミンコフスキー空間。マルセル・デュシャンの彫刻における四次元空間の表現の初期の試み。そして、(クリエイターとして)より深く、時には矛盾したやり方であったとしても影響を与えてくれた、両親と兄弟。私がコンテンポラリー・アートについて何かしら知っていることがあるとすれば、それは考えうるあらゆる手段を試みてきた多作の芸術家であるわたしの兄弟、オラシオのおかげです。また、最近元気になれる「影響」を与えてくれた、ゴラン・レヴィン、岩井俊雄、ジュッシー・アンジェスレバといったメディア・アーティストたちに、感謝したいと思います。彼らは何が優れているか、何をすぐに放り出すべきかを判断する鋭い感覚をもった、パワフルなブレーン・ストーム・ジェネレータなのです。

・コンピュータ
Z81からAtari STまで——その後、このツールは気まぐれで時折クラッシュするようになり、やや魅力を欠いたマシンになりました。

・ビッグバンとその予想不可能な成り行き
わたしがこの賞を受賞するといったような現象です。