
木本 圭子
1958年生まれ、広島市出身。多摩美術大学テキスタイルデザイン科卒業。非線形構造をベースにしたオリジナルプログラムによる映像を制作。2003年『Imaginary・Numbers』(工作舎)出版。現在はJST ERATO 合原複雑数理モデルプロジェクト所属。
モノクローム、点群のみという視覚的要素を極限に絞った映像で受賞できたことは、表現における思考プロセス、オリジナルプログラミングによる制作の可能性が評価されたものとして大変うれしく、光栄に思います。また、アート表現としてのダイナミズムの追求におけるロジックと情動の共存-融合が確信でき、新しい地平に繋がる一歩であればと思っています。
これは作者が長年追求してきた、非線形数理モデルをベースとする有機的また生物的ダイナミクスをテーマとした作品群の新作である。この数理モデルによって映像空間の中に乱舞する粒子たちは、「個と集団」「全体と部分」などといった、社会現象や自然現象のなかに現れる風景を見るものに想起させる力をもっている。これは最新のコンピュータテクノロジーと、なによりも作者のアーティストとしての確かな視線とによって成し遂げられた賜物であろう。非常に興味深い作品だ。
初めて「創作」したのは何歳でしたか? またどんな道具を使って、どんなものを創作しましたか?
ただ描くのではなく創作ということを意識したのは10歳のころ。水彩画で普通に風景や植物など描いていたとき、工夫し生み出すという感覚がわずかながら発生した。
現在使用している創作ツールはどのようなものですか? また、そのツールを選んだ理由をお書きください。
現在は作品のベースに数理モデルがあるので、シミュレーションのためのツールとしてPCを使用。C++、Mathematica、これらが基本段階のツール。
あなたが思い描く「夢の創作ツール」とは?
特にありません。健康な脳と身体の保持でしょうか。
これまでの作品に共通するテーマはありますか? あるとしたら、そのテーマとはどういったものですか?
動的システム(数言語を使うのは、質料的なものを含ませないため)から生成されるリアリティを追求したい。それは人の中に生まれる新しい実体であると信じるからである。
作品をつくるうえで最も苦労する部分、またはこだわる部分はどこですか?
私の作品はまずユニバーサルな数式という言語で「システム」を構成し、そこから各メディア(書籍、静止画、映像、オブジェ、etc....)へと展開していくというプロセスをとる。よって多くの時間をシステムの構成に費やすが、このときには視覚的なものは小さなグラフ程度でビジュアル作品に繋がるものはほとんど無く、変動する構造に対する感覚だけが頼りになる。そして、グラフ集ではなく作品にしていく過程に入ってからは、知覚に留まらないよう人間の身体性や記憶をかなり意識する。つまり、作品とは作家のシステムを理解してもらうことではなく、それを契機に観る人それぞれの記憶や身体感覚を含んだ、観る人の心理的な動的システムを駆動させるものであると考えている。そこから観る人がそれぞれにとっての実感を浮かびあがらせることができれば、それが作品の実際の完成となる。媒体によって観る人が駆動するシステムは違ってくるので、コンピュータ内で構築した作者のシステムは単一でも媒体によって像の選択を適正に変える必要がある。
自分の作品が「メディア芸術」だと意識したことはありますか。また「メディア芸術」は既存の「芸術」と比べて、どんな違いがあると思いますか?
どの時代も新しいメディアとの関わりで制作は続けられてきたので、「メディア芸術」は特別なことではない。しかし事物固有の実体にとどまらず、新しい思考や感覚を実体として定着させるシステム(関係)を志向しているなら今日的であろう。
アーティストとして、いつもどのような姿勢(スタンス、または観点)で作品を制作していますか?
個別性よりも共通項や普遍性を重視すること。それらの関係の中で現れる実体を生々しく掴むこと。
座右の銘は?
美しい言葉としては、オイラーの公式: 「 eiπ = -1 」。見事な結晶。
どんなときにインスピレーションを感じることが多いですか?
調査や制作の真最中。
今後の活動展開について、どのようなビジョンを持っていますか?
最初の試作がまとまったという段階なので、テーマの探求をより進めること。
作品形体としては映像中心になるであろうが、段階的に他のメディアとの関連をもたせ、最後は総合的なインスタレーションに仕立てていきたい。
あなたが影響を受けたモノ、ひとは?
・学生時代はデュシャンの「大ガラス」
エロスをシステムーダイアグラムで提示するという表現方法が新鮮だった。
・川端康成「眠れる美女」
あいまいな多義的結合に満ちていながら形式的完成を保っていること。
・「実数の連続性」
人間の思考が扱う数とコンピュータが扱う数との大きな違いを認識できたことが作品制作の上で大きく役立ち、表現ということをより考えるようになった。
・複素数
虚(数)の世界に入り、実(数)に降りてくるプロセスに驚愕。(数学の)言葉は関係の中で実体になることを知った。
エロスをシステムーダイアグラムで提示するという表現方法が新鮮だった。
・川端康成「眠れる美女」
あいまいな多義的結合に満ちていながら形式的完成を保っていること。
・「実数の連続性」
人間の思考が扱う数とコンピュータが扱う数との大きな違いを認識できたことが作品制作の上で大きく役立ち、表現ということをより考えるようになった。
・複素数
虚(数)の世界に入り、実(数)に降りてくるプロセスに驚愕。(数学の)言葉は関係の中で実体になることを知った。
![平成18年度[第10回]文化庁メディア芸術祭 平成18年度[第10回]文化庁メディア芸術祭](/festival/images/no10.gif)
![平成11年度[第3回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品 平成11年度[第3回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品](/festival/images/h1_jusyousakuhin2006.gif)









