平成18年度[第10回]文化庁メディア芸術祭
平成11年度[第3回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品

アート部門

MediaFlies
© Daniel Bisig
優秀賞

MediaFlies

インスタレーション

作者:Daniel BISIG / UNEMI Tatsuo (スイス)

MOVIE

※動作環境に関してはこちら

作者プロフィール

Daniel BISIG

Daniel BISIG

1968年チューリッヒ生まれ。チューリッヒ大学人工知能研究所研究員。

UNEMI Tatsuo

UNEMI Tatsuo

1956年金沢市生まれ。創価大学教授。

2人は、人工生命とインタラクティブアート、ジェネラティブアートを融合したコンセプトでプロジェクトを展開している。

受賞コメント

このたびは価値ある賞をいただき、大変光栄です。この受賞を励みに、今後もこのようなアートと科学を融合させた作品をつくり続けたいと思います。この作品は、人工システムと自然システムの知覚と判断の相違を映像美で表現したもので、生物学的マルチエージェントシステムと、画像と音をリミックスするアルゴリズムでできています。個々のエージェントは、画像・音声メモリーを行きかう思考粒子として働き、その相互作用によりエージェントがメモリーの断片を思考パターンに組み立て、音と画像となって表現されています。

贈賞理由

インタラクティビティの新しい可能性を予見させる作品。メモリーから自己生成された画像と音が、体験者の動きに応じてたゆたうように変容していく。その反応は体験者の動きをストレートに反映したものではない。ピクセルの動きは生物の群れの動きをシミュレートしており、映像の変容は刺激に対する群れの反応のように行なわれるのである。その変転する映像の美しさ、斬新さが評価の対象となった。

11のQ&A

Q1
初めて「創作」したのは何歳でしたか? またどんな道具を使って、どんなものを創作しましたか?
A1
Daniel BISIG/20歳くらいのころから、3Dコンピュータグラフィックス作品をつくりはじめました。当時は超現実主義芸術に傾倒していたので、コンピュータによる超現実的かつ不条理なバーチャルリアリティーをつくりだすことに取り組んでいました。その結果生まれた作品のいくつかは、スイスの作品展で紹介されました。

畒見 達夫/「創作」を意識したのは多分、中学3年生くらい。美術の時間に静物画とか写生とか木版画とかやらされたと思うんですが、それまでは、写実的に仕上がればうまいというような判断基準で描いていたが、その頃から見た人を驚かすとかちょっと変わった描き方とかを試すようになった。鉄道模型もやってたんですが、実際に存在する車両の模型をつくるんじゃなくて、自分でデザインしはじめたのもその頃。
Q2
現在使用している創作ツールはどのようなものですか? また、そのツールを選んだ理由をお書きください。
A2
Daniel BISIG/現在は2つの方向から作品づくりを行なっています。ひとつには実験的な短いビデオ作品を、主に手作業で(と言ってもコンピュータを使ってですが)編集し、後処理し、独自のサウンドトラックを作曲しています。もう一方では、自律的な人工生命と人工知能の技術と概念を取りいれた、インタラクティブなソフトウェアを使ったアート作品を創作しています。どちらのアプローチも、結果的に画像と音声が絶え間なく変化するアート作品を生み出しており、それらの作品は、複雑な身体的プロセスや非常にシンプルな生物学的プロセスを模倣したものになっています。ビデオ映像作品を制作する際の楽しみのひとつである、未加工の映像の層を一枚一枚はがしていく手作業の工程と、身体的、生物学的プロセスと生態をシミュレートしたソフトウェアを作成する統合的なアプローチは、どちらも生物と無生物との境界線を探究する手法として興味ぶかいものであると思います。

畒見 達夫/あえて言えば Mac と、その周辺機器をツールとしています。映像や音のメディアを扱うプログラミングを比較的やりやすい環境があったからです。
Q3
あなたが思い描く「夢の創作ツール」とは?
A3
Daniel BISIG/今現在は、作品の一部を身体的な領域にもっていくという考えに惹かれています。特に、ソフトウェアと身体的なプロセスを統合し、生物的な有機体の特性を模倣したアート作品に作りあげたいと思っています。そしてそこでは、ユーザーのインタラクションを、身体的な存在と生態に密接に関係した何かに変化させたいと考えています。これを実現するために、現在、感知と作動の両方の機能を持つ「スマートマテリアル」を研究し、ハードウェアとソフトウェア、インターフェイスとディスプレーの境界をあいまいにする取り組みを行なっているところです。

畒見 達夫/アイディアをできるだけ簡単に実現できる環境。ちょっと一般的すぎますか?
Q4
これまでの作品に共通するテーマはありますか? あるとしたら、そのテーマとはどういったものですか?
A4
Daniel BISIG/2問目の答えの中でも触れたように、私は生物と無生物のシステムの境界線を探究することに大変興味をもっています。この境界においては、生態も、形態や反応や作為性といったものも、すべてが渾然として区別がつかない状態で存在します。ここでは、内なる「自己」と外側の「他」との区別は非常に微妙で常に混沌としています。そしてこのような特性こそが、不変性とはかなさ、固体と集合体、自主性と依存性などの人間の自己意識に関する根本的な問題を浮き彫りにするのです。私は、作品の中でこれらの問題を探究するための、アルゴリズムを用いた美的な言語を見つけだそうと試みています。

畒見 達夫/驚き。作者自身が出てくるものに驚き、ワクワクできるもの。その仕掛けとして人工生命、生成的手法、インタラクティブといった技法を使ってきました。その中に人間の認知機能や社会認識を再考させる切っ掛けになるようなコンセプトを絡ませています。
Q5
作品をつくるうえで最も苦労する部分、またはこだわる部分はどこですか?
A5
Daniel BISIG/インスタレーション作品のためのソフトウェアを開発しているときは、故意に作品の完成形から遠く離れたレベルで作業を行なうことにしています。この方法によって、私は常に作品の発想、ソースコード、そしてシステムの作用とフィードバックの間の相互関係性を、苦しみながら理解する段階に到達することができるのです。この段階は非常に有益でもあり、また重大な局面でもあります。この段階で概念的な修正、実験や意外性といったインタラクティブなプロセスに入るため、ここで満足のいく結果が得られるか、それともプロジェクトを放棄しなければならないかが決まるのです。

畒見 達夫/他人に真似のできないものをつくる。できるだけ大勢の人が手軽に楽しめるものをつくる。相棒の Daniel Bisig もプログラミングについてもすばらしい力量を備えているので、互いに情報を交換しながら、今のマシンで実現可能な、最も複雑な情報を最も速く生成するシステムの開発を目指しています。
Q6
自分の作品が「メディア芸術」だと意識したことはありますか。また「メディア芸術」は既存の「芸術」と比べて、どんな違いがあると思いますか?
A6
Daniel BISIG/個人的には、作品を制作する過程で作者のコンセプトの根幹がテクノロジーを用いた試みにある場合は、その作品はメディア芸術であると考えています。このような視点で考えると、私のソフトウェア作品はメディア芸術であると言えるのではないでしょうか。

畒見 達夫/ディジタルアートとかエレクトリックアートとかいう方がしっくり来るように思います。メディアということばは、意味するところの幅が広いので、それに含まれると言われれば、そうかもしれません。既存の芸術との違いは、作者、作品、鑑賞者という3者の関係にかなりの自由度があること、それと、利用可能な技術の変化によって再現性が失われる可能性が高いことだと思います。
Q7
アーティストとして、いつもどのような姿勢(スタンス、または観点)で作品を制作していますか?
A7
Daniel BISIG/ジェネレーティブ・アート、アルゴリズミック・アートの分野で作品づくりを行なう者のひとりとして、私は自分自身を、プロセスを動きで表現するシチュエーション・デザイナーであると考えます。作品は可能性という名の空間で自律的に発展していきます。その結果、それぞれの作品は、私の個人的な判断とスタイル、そして作品自身の能力と原動力を併せもつことになるのです。私はいつも、作品が私の努力の結晶として存在するのではなく、作品が私と対等な位置に存在し、私や鑑賞者が試行錯誤したり協力したりしながら、作品のさらなる発展を促すことができる段階に到達するのを楽しみにしています。

畒見 達夫/多くの人に喜んでもらいたい。
Q8
座右の銘は?
A8
Daniel BISIG/予想通りの結果は期待はずれである。

畒見 達夫/「平和・教育・文化への貢献を」もう1つ「出会った人に安らぎと勇気と希望を」
Q9
どんなときにインスピレーションを感じることが多いですか?
A9
Daniel BISIG/形状の変化と反応を伝達する運動なら、どんなものでも眺めるのが好きです。そのような運動には、たとえば水滴がぽたぽたとしたたる単純な自然のシステムから、交差点を渡る歩行者の動きなどの人間の集団行動までさまざまなものがあります。

畒見 達夫/犬と散歩しているとき。お経を読んでいるとき。そして、もちろん、傑作に触れたあと。
Q10
今後の活動展開について、どのようなビジョンを持っていますか?
A10
Daniel BISIG/今後は、単なるソフトウェアの開発を離れて、ユビキタス・コンピューティングや群ロボット工学、そしてマルチモデル/タンジブル・ヒューマンマシン・インタラクションの分野の技術と概念を組みあわせた、身体的なシステムをデザインする方向に活動の場を移していきたいと考えています。
比喩的に言うなら、例えば砂場で遊んでいる人がいるとします。通常は人の活動をただ受動的に受け入れているだけの砂場の砂が、時として突然集まり、複雑な構造を持ち、増殖して自らの姿を変化させる、という感じです。まだ漠然としていますが、そんな能力をもった砂場のようなシステムを開発するのが、現在の私の目標です。

畒見 達夫/まだまだアートに利用されていない先端メディア(材料、情報処理機械、社会システムなど)がたくさん眠っていると思います。それらを発掘し、また最先端の科学・技術を学んで、科学と芸術が相互に刺激しあう場をつくりたいと思います。
Q11
あなたが影響を受けたモノ、ひとは?
A11
Daniel BISIG/生物学者になる勉強をしていた時代に、細胞レベルで起こる現象に大きな感銘を受けました。生物学的な成長や免疫反応は、膨大な数の非常にシンプルな要素(細胞)の、驚くほど複雑に組織化された活動結果のひとつであるという事実に惹かれました。その後、チューリッヒ大学の人工知能研究所でRolf PFEIFER教授が行なっている研究に影響を受けるようになりました。この研究所で行なわれていた多くの研究の中で特に興味深かったのが、非常に限られた認識能力しかもたないが、その形態的な特性と周囲の環境とインタラクションする能力によってさまざまな反応を示すことができるロボットの開発でした。また、25歳くらいのころには、実験映画に強い興味をもちました。特に、映画監督のペーター・クーベルカ(Peter KUBELKA)やマーティン・アーノルド(Martin ARNOLD)、そしてドイツの映画製作集団、シュメルツダーヒン(Schmelzdahin)がつくった構造・唯物主義的映画に惹かれ、彼らが映画というメディア自体の物質性にこだわっている点に、大いに刺激を受けました。発想と技術の両面で等しく実験を行ない、その両方が作品中で相互に作用しあっているようすがはっきりと伝わってくる彼らの映画は、アーティストとしての私の作品づくりに影響を与えています。

畒見 達夫/
・ジャズ
型と自由のバランスや、実時間での即応性のスリリングさについて気づかせてくれた。
・市川惇信
学生時代の師匠です。冷徹なシステム科学的認識により真実を見抜く態度を教わった。
・池田大作
創価学会名誉会長。その思想よりも人に接する態度と平和への情熱について多くを学んだ。
・横尾忠則
奇抜さと美しさ。冒険心。
・カール・シムズ
すべてがクール。人工生命の見せ方に感服しました。

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