石原 恒和(エンターテインメント部門 主査)
今年のエンターテイメント部門の作品は、革新的な技術が商品の核となるようなものは見当たらなかった。しかし、こなれた技術を駆使・探求することによって、新しい表現・手法が試みられたものが数多くあり、それらが主に最終審査の対象となった。既知の技術やアイデアをさらに組み合わせることによって、新しい表現分野を追求する姿勢のおもしろさや真摯さが、評価に大きく影響したようだ。なかでも大賞作品『大神』は、日本神話という難しいテーマに正面から取り組み、斬新なCG表現技法で、これまでにないアクション・アドベンチャーのゲーム世界を実現したことを審査員全員が高く評価した。今年は、新しい家庭用ゲーム機が続々と登場する年だが、まだ成果は出ていない。来年はそれらのプラットホーム上で動く、新しい技術を駆使した作品にも期待したい。
1957年生まれ。筑波大学大学院芸術研究科修了。1995年に株式会社クリーチャーズを設立、その後『ポケットモンスター赤・緑』をプロデュース。1998年、株式会社ポケモンセンター(現・株式会社ポケモン)設立と同時に代表取締役社長に就任。現在は、同ソフトを翻案した『ポケモンカードゲーム』や、テレビアニメ、劇場映画などポケモン全体のブランドマネジメントに携わる。
▼ゲーム・遊具・キャラクター・その他 作品講評/鈴木 裕(ゲームプロデューサー)
ゲームは、企業やシリーズものの割合が多く、今後、個人や新作の応募が望まれる。
日本の歴史を背景にした『大神』や、現代の文化を象徴する『リズム天国』などユニークな作品のほかに、『Elebits』『KARAKURI』などの新作が高い評価を獲得した。シリーズものでは、『ポケットモンスター ダイヤモンド / ポケットモンスター パール』『おいでよ どうぶつの森』『Newスーパーマリオブラザーズ』など、よく練りこまれた良質の大作が受賞作品と同様、高い評価を得た。
遊具では、『しゃべる!DSお料理ナビ』が、身近なテーマを最新の音声合成技術によって実現し、『雨刀』は大変ユニークな発想が審査員の笑いを誘った。『RGBy desk』など、光と音の演出はインダストリアルデザインへの発展の可能性を感じる。
キャラクターはユニークな作品が多く出展され、クリエイティビティの向上が実感でき、うれしく感じた。
▼映像 作品講評/田中 秀幸(アートディレクター)
このジャンルに出品されてきたような、10分以下程度のショートムービーコンテンツは、いろいろなメディアにおいて今後ますます必要とされるジャンルだと思っている。それと同時に、エンターテインメント性が今以上に重要になってくるジャンルでもあると思う。今回の審査では、テレビCM、ゲームのオープニング、ミュージックビデオなど、さまざまな用途でつくられたクオリティの高いエンターテインメント映像が混在するなかで、特にメディアの連動性や特性を意識した表現や、既存のジャンルや形態から抜け出そうとしている作品が目を引き、印象的に感じられたように思う。そのなかで、新たな映像ジャンルを開拓していくセンスをもった作品が選ばれた。
▼ウェブ 作品講評/福井 信蔵(クリエイティブディレクター)
コンピュータと通信の高速化、リッチな映像表現など、発展著しいウェブ部門にこそ時代を引っ張る作品が…という期待は、今回は残念ながら満たされなかった。加速度的に進化する技術革新を即座にウェブ表現に生かすのは容易ではないし、広告手法も変化し、コミュニティや携帯との連動など、複雑さも増しているからだろう。審査会でも、一次審査、最終審査ともに意見が分かれ、さまざまな議論が飛びかった。僕はウェブにおいて何が「作品」なのか、その概念を再考し、今後に向けて示す必要性を提言した。そうしたなか、エンターテインメントとしての質の高さやおもしろさはもちろんのこと、技術面での革新性と、優れた内容をもつコンテンツを同等に評価し、インタラクティブという概念を具現化している作品が選に残った。来年はウェブ部門からの大賞を期待したい。
鈴木 裕(ゲームプロデューサー)
1958年生まれ、岩手県出身。岡山理科大学電子理学部電子科卒業後、1983年セガ・エンタープライズ(現・株式会社セガ)へ入社。2年後、世界初のアーケード用体感ゲーム『ハングオン』を発表。また1993年には、3D-CG対戦格闘ゲーム『バーチャファイター』、1999年に家庭用ゲーム『シェン ムー一章 横須賀』など、話題作を次々と生み出す。現在、株式会社セガクリエイティブオフィサー兼第AMプラス研究開発部長。
田中 秀幸(アートディレクター)
1962年静岡県生まれ。1984年多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。株式会社フレイムグラフィックス代表。キャラクターやグラフィックデザイン、PV・CMのディレクション、テレビ番組等、映像制作と幅広く活動をしている。主な作品は、『GIANT BRA』ラフォーレ原宿CM(2001ADC制作者賞)、『OH!スーパーミルクチャン』アニメ、『The Rising Suns』石野卓球 PV、『JR-SKIキャンペーン』JAPAN SNOW PROJECT TVCM、(2005ADC賞、ACCベストアートディレクション賞)など、多数。
福井 信蔵(クリエイティブディレクター)
1959年神戸市生まれ。ファッションブランドの広告やブランディングを多数手がけた後、1994年独立。同時にウェブデザインを独学で開始。2000年、デザイン集団「ビジネス・アーキテクツ」を設立し、数々のグローバル企業にウェブを軸とした多岐にわたるクリエイティブサービスを展開。2005年、同社を退社。現在充電中。1995年ロンドン国際広告賞、1995年GRAPHIS DESIGN、1999年Web Design Award金賞、2003年One Show Gold、2004年One Show Bronze、2005年Communication Arts等、国際的なデザイン賞を多数受賞。
水口 哲也(ゲームクリエイター)
1965年生まれ。1990年株式会社セガ・エンタープライゼス入社。2003年10月キューエンタテインメント株式会社を設立。ゲームの代表作として、『セガラリー・チャンピオンシップ』、『スペースチャンネル5』、『Rez(レズ)』、『ルミネス・音と光の電飾パズル』など。『Rez』は2002年欧 州アルスエレクトロニカにおいて、インタラクティブアート部門Honorary Mention、文化庁メディア芸術祭特別賞などを受賞。日本大学芸術学部非常勤講師、金沢工業大学客員教授。現在、キューエンタテインメント株式会社代表取締役CCO。
![平成18年度[第10回]文化庁メディア芸術祭 平成18年度[第10回]文化庁メディア芸術祭](/festival/images/no10.gif)



