平成18年度[第10回]文化庁メディア芸術祭
マンガ部門 審査講評

過去最高の応募作品数、苦渋を極める選択

モンキー・パンチ(マンガ部門 主査)

モンキー・パンチ(マンガ部門 主査)文化庁メディア芸術祭も今回で10回目になる。応募作品も年々増え、過去最高になった。市販されているマンガが約8割以上で、自主制作、オンライン、その他と続く。そしてストーリーマンガは全体の約7割以上となっている。当然だがその約9割はプロのマンガ家による作品である。
『太陽の黙示録』は各審査員とも最高点で文句なしの大賞となったが、厳選されて最終選考に残った作品群に甲乙をつけなくてはならないのは、もはや審査員泣かせである。すでにベストセラーになっていてオーディエンスから評価されている作品もありながら、今度は審査に携わるプロのマンガ家の目で再評価をし、規定通り受賞作を決めなければならないのは苦渋の選択である。
そんなわけで心ならずも選に漏れた作品には本当に申し訳なく思っている。次回の再挑戦を心からお願いしたい。

モンキー・パンチ(マンガ家)
1937年北海道生まれ。1966年にモンキー・パンチ名で「漫画ストーリー」に『銀座旋風児』を発表。翌年より「週刊漫画アクション創刊号」にて『ルパン三世』を連載。主人公ルパンをはじめ、個性的なキャラクターたちが人気を呼び、大ヒットし、テレビアニメ・映画化された。代表作『リトルマフィア』『一宿一飯』『透明紳士』など多数。2005年春より大手前大学教授に就任。マンガ研究について教鞭をとる。

▼ストーリーマンガ 作品講評/わたなべまさこ(マンガ家)

今回は、第10回ということもあり、前年を上回る大変レベルの高い応募作品が多数そろった。最終候補としては、10年の節目の大作にふさわしく、ベテランの骨太な息をのむような作品に満場一致で決定。優秀賞にも、ファンタスティック、癒し系など、さまざまなジャンルの作品が残り、ストーリーマンガならではの表現の豊かさ、発想のおもしろさと間口の広さを感じた。審査の対象外となった作品も、ユニークで力のこもったものが多く、IS(インター・セクシャル)や性同一性障害の世界に正面から取り組んだ問題作などもあり、今後の新しいジャンルとしても期待が大きい。ストーリーマンガの特異なスタイルは、戦後開発された、日本独特の文化のひとつとされている。手塚マンガという太い幹から幾重にも枝を伸ばし、たわわにマンガ家という実をつけた、このストーリーマンガの木の広がりは、可能性という希望いっぱいに、今後も空に向かって伸び続けるに違いない。今回は、海外からの応募が少なかったのが残念であった。文化交流のためにも、その国独自のすばらしい作品で日本マンガと競っていただきたい。
文化庁メディア芸術祭も回を追うごとに応募数も増え、喜ばしいことだ。来期もストーリーマンガならではの作品が多数応募されることを願っている。

▼短編 作品講評/藤本 由香里(マンガ評論家)

毎年順調に伸びてきた応募作品数であるが、今年はコママンガが横ばい、オンラインマンガ・自主制作マンガはほぼ半減するという残念な結果であった。とくに海外からの応募が、今年はわずか2作品と激減している。
たしかにそのままでは言葉がわからない作品をどう評価するかという問題は残るだろうが、来年はさまざまな手段で広く海外からも出品を呼びかけ、応募数をできる限り増やしていきたいものである。内容的には、自主制作も含めオンラインマンガは、デジタルならではの手法で「ほほう」と思わせるものが目を引いた。しかしいずれも「手法」の提示にとどまり、もうひとつ内容のおもしろさが伴っていないのが残念である。だが一方で地味ながら好感がもてる作品もあり、「オンラインだからカラーで続けられる」という側面もあるのだな、と気づかされた。一方、これも自主制作を含めコママンガでも、CGや動画をうまく使った作品が目立ってきている印象を受けた。新しい才能に期待したい。

審査委員

石坂 啓(マンガ家)

石坂 啓(マンガ家)1956年名古屋市生まれ。1978年上京、手塚治虫氏に師事。翌年独立。
作品に、『アイ’ムホーム』『セカンドベスト』『ひみつの箱』『正しい戦争』『さよなら家族』など。エッセイ集に『赤ちゃんが来た』『お金の思い出』など。現在、「週刊金曜日」編集委員。同誌に『ピョンタくんの楽しい戦争』連載中。

さいとう・たかを(マンガ家)

さいとう・たかを(マンガ家)1936年大阪府生まれ。1955年『空気男爵』(大阪・日の丸文庫)でデビュー。第21回小学館漫画賞、第31回日本漫画家協会賞・大賞、第50回小学館・審査員特別賞を受賞した代表作『ゴルゴ13』は、現在も描き下ろしが続く記録的な長期連載作品。主な作品に『鬼平犯科帳』『影狩り』『無用ノ介』『サバイバル』『雲盗り暫平』などがある。2003年に紫綬褒章受章。社会法人日本漫画家協会理事。

藤本 由香里(マンガ評論家)

藤本 由香里(マンガ評論家) 1959年熊本県生まれ。東京大学教養学科卒。筑摩書房で編集者として働くかたわら、コミック・女性・セクシュアリティなどを中心に評論活動を行なう。明治学院大学・法政大学非常勤講師。日本マンガ学会理事。著書に『私の居場所はどこにあるの?―少女マンガが映す心のかたち』『快楽電流』『少女まんが魂』『愛情評論』など。

わたなべまさこ(マンガ家)

わたなべまさこ(マンガ家)東京都生まれ。1952年、『小公子』でデビュー。集英社、小学館、講談社、双葉社、秋田書店、創美社、宙出版、ぶんか社等に連載短編を執筆。現在、双葉社「jour」に『金瓶梅』連載中。1971年、第16回小学館漫画賞『ガラスの城』。2002年日本漫画家協会賞。文部科学大臣賞。2006年旭日小綬賞。現在、創造学園大学 芸術学科教授。

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