平成19年度[第11回]文化庁メディア芸術祭
シンポジウムレポート

[Special Interview] Effie WU

Super SmileEffie WU エフィー ウー
台湾台北市生まれ。現在はベルリンを拠点に活動。国立台湾芸術大学で、パフォーマンス・アートを学ぶ。自身がもっとも尊敬するアーティストの一人と話すピピロッティ・リストに師事。2007年、ベルリン芸術大学での実験的メディア・アートの勉強を修了。パフォーマンスを採用した映像作品は多くの国で上映され、国際的な賞を受賞している。

受賞作品
 

[Interview 1] 自分らしくいられる唯一の場所が、アートだった。

Effie WU――『Super Smile』の奨励賞受賞、おめでとうございます。まずは文化庁メディア芸術祭に応募されたいきさつを教えていただけますか?

この賞の存在は、私が通っていたドイツの美術大学でもよく知られていました。くわえて、昨年度の展覧会カタログがとても綺麗にできていたので、それを見ているうちに自分も応募してみたくなったんです(笑)。ただ、これまで同じ学校の学生たちは、審査委員会推薦作品に選ばれるまでだったので、とても厳しい審査との認識がありました。だから、奨励賞を受賞したと聞いたときは、本当に信じられないくらいうれしかったです。

――エフィーさんが、そもそもアーティストを志そうと思われたきっかけは、何だったのですか?

子どもの頃から、何かをつくりだす、生み出すという行為にずっと興味がありました。自分が他者とくらべて少し変わっているかしら?と感じることもありましたが、アートだけは、学校のように試験の点数で評価されることもなければ、人と同じになる必要のない、普通になる必要なんてない世界でした。つまり、私が自分らしくいられる唯一の場所だったんです。

Effie WU――エフィーさんは、パフォーマンスを取り入れた表現をされていますね。

私はそもそも、台北にある国立台湾芸術大学で演劇を専攻していました。そこで、演じることを通してパブリックと交流する方法を学んだのです。そして、自分自身の内なるものを、自分が心から欲していることを表現できるパフォーマンスに出合いました。パフォーマンスは自分で演じなければならないので、鍛錬を必要とします。その点でも、演劇と似ていると思います。

[Interview 2] 完璧であることの可笑しさ。

Effie WU
c Effie Wu

――確かに『Super Smile』は、鑑賞者の感情に強烈に訴えかける作品ですね。このアイデアは、どのようにして生まれたのか教えて下さい。

『Super Smile』のテーマは、自画像です。写真でも絵画でも、肖像画の中に描かれる人はたいていの場合、すてきな洋服を身にまとい、美しい宝石を着けたりして、自分を完璧に見せようと無心します。背景にもこだわってね。そういった、ステレオタイプでクラシックな自画像を皮肉も交えて表現したのが、『Super Smile』です。私は完璧な人間ではもちろんありませんが、だからこそ、この作品であえて完璧な自分を演じることに挑戦しました。けして乱れることのない、異様に滑らかな身体の動き、そして、崩れることのない笑顔――現実世界ではありえないほどの完璧さが、いかに非現実的で滑稽であるか、描き出したかったのです。何度も練習を重ね、制作には、およそ5ヶ月を費やしました。

――作品中、一度たりとも瞬きをされませんね。

瞬きをしないことは、私にとってそんなに難しいことではありません(笑)。これが奏功して、鑑賞者を作品世界にグイと引き込むことができましたし、私との間に、より濃密なコミュニケーションが生まれたと思っています。興味深いのは、この作品を初めて見たときには大声で笑っていた人たちが、繰り返し見るうちに恐怖を感じだすと話していることです。

[Interview 3] キーワードは、アイデンティティとの対峙。

Effie WU――今回が初来日だとうかがいましたが、日本のメディアアート、そして日本という国について、どのような印象を持たれていますか?

コンピューターゲームやマンガなどの優れた作品が日本で生み出されていますし、その意味で、日本人はとてもクリエイティブだと思います。どんなモノにも、ちょっとした美しいアイデアや工夫があふれているのがすばらしいですね。インスピレーションを駆り立てられます。

――アイデンティティとの対峙はあなたの作品世界を知る上で重要なキーワードになってくると感じます。現在制作中の作品は、どのようなものですか?

そうですね。私は、人にはいくつかの側面があって、自分自身と、外(他者)から見た自分とのズレがあると思うんです。そこにとても興味を抱いています。たとえば私は、自分の中の幼児性を認める一方で、老人性も感じています。あるいは、人々が自分に対してもっているイメージと、自分が考えている自分の像が、一致していないと感じることもあります。次作では、そういった自分のアイデンティティについて探っています。『Super Smile』同様に、パフォーマンスを撮影した映像作品として発表する予定です。

Effie WU――では最後に、アーティストを目指している人たちにメッセージをお願いします。

当たり前のことですが、とにかく情熱を絶やさず、一所懸命に考え、あきらめずに取り組んでほしいですね。自分に誠実になることも忘れずに。そして、自分自身の内なる姿に興味をもちつづけることは、アーティスト活動において、とても重要なことだと思います。

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