平成19年度[第11回]文化庁メディア芸術祭
シンポジウムレポート

[Special Interview] Evelina DOMNITCH / Dmitry GELFAND

Camera Lucida: Sonochemical ObservatoryEvelina DOMNITCH エヴェリーナ ドミニック
Dmitry GELFAND ドミートリー ゲルファンド

ドミニックは1972年ベラルーシ生まれ。ゲルファンドは1974年、ロシア生まれ。ニューヨークの大学でゲルファンドは映像を、ドミニックは哲学を学び、二人での活動をスタート。物理や科学、そして哲学の実践を取り入れた知覚によるイマージョン環境を創造している。現在は、オランダ、アムステルダムを拠点としながら、世界各地で研究活動を行なう。

受賞作品
 

[Interview 1] 人間の知覚を超越した不可視なモノを、視覚化させたい。

Evelina DOMNITCH――『Camera Lucida: Sonochemical Observatory』の優秀賞受賞、おめでとうございます。まずは、文化庁メディア芸術祭に応募された理由を教えていただけますか?

ゲルファンド:オーストリアのリンツでこの作品を発表する機会があったのですが、それをご覧になった文化庁メディア芸術祭の関係者の方に、応募したらどうかと声をかけていただいたのがきっかけです。マンガやゲームなども含まれるこの芸術祭は、いわゆるアートにあまり興味のない方々にもアートの面白さを訴求できる多様性を秘めているという点でも、すばらしいと感じました。

――お二人がアーティストを志されたきっかけ、そして、お二人で活動されるに至ったいきさつは何だったのでしょうか?

ゲルファンド:僕はニューヨークで映像を学んだのですが、そこで、ドミニックと出会いました。彼女も当時、ニューヨークで哲学を学んでいたのですが、出会ってすぐに意気投合して、3日にもわたって、哲学や音、自然、光が人間の魂にもたらす影響……など、さまざまなことについて話しました。72時間、ずっとね(笑)。そこからコラボレーションが始まり、二人で、ソーホーのスタジオで光を用いたさまざまな実験をしました。僕たちは最初からアーティストを目指していたわけではありませんが、僕たちの実験を見た友人たちが、他の場でも発表したほうがいいと助言してくれたのがきっかけで、活動が本格化しました。

Evelina DOMNITCH / Dmitry GELFAND――そこから、『Camera Lucida: sonochemical observatory』のような、哲学や科学、コンピューターサイエンスなど、さまざまな要素が組み合わさった作風へと発展していったのですね。

ドミニック&ゲルファンド:そうです。私たちは、人間の知覚がいかに他から影響を受けやすいものであるか、そしてとても原初的であるか、ということに興味があります。同時に、人間の感覚を超越したところに科学や自然はあります。私たちは、そういった目に見えないけれど、確かに存在しているものを視覚化させることを追究しているのです。

[Interview 2] アートと科学の共通点。

Camera Lucida: Sonochemical Observatory
c Evelina Domnitch and Dmitry Gelfand

――『Camera Lucida~』を拝見すると、確かに、世界には自分がまだ見たことのない種の美がたくさん存在するのだということを認識させられました。この作品の制作は、具体的にどのように始まったのでしょうか?

ドミニック&ゲルファンド:音ルミネセンス現象のことは以前から知っていたのですが、インターネットなどで調べていくうちに、残念ながら、この現象は何十年も研究されているテーマながら、実用化しづらいこともあって、研究をあきらめる科学者が多いこともわかりました。私たちには、それを表現したいという夢がありましたが、哀しいかな、それはファンタジー(幻想)だと言われることも多く、なかなか協力者を見つけられずにいたのです。そんなとき、日本のアート研修プログラムにこのアイデアが認められ、奨学金を得ることができました。半年間の岐阜でのこの研修で、ようやく始動したというわけです。偶然にも、その研修期間中、名古屋で第11回国際ソノケミストリー会議が開催され、協力してくれる科学者たちに出会えたのは本当に幸運でした。制作には5年も要しましたが、この作品で完結したわけではありません。延長上には、まだまだやってみたい事柄が、たくさんあります。

Evelina DOMNITCH――お二人にとって、科学とアートの違いは何でしょうか?

ドミニック:アートと科学を分けて考えたことはありません。科学はとてもクリエイティブな表現ですし、秘めたる何かを明確しようとする姿勢や行為は、両者に共通していますから。

――作品が実現に向けて始動した場所という意味でも、日本はあなた方にとって意義深い場所だと思いますが、日本に対する印象や、日本のメディアアートについてはどのような感想をおもちですか?

ゲルファンド:日本は科学においてもすばらしい国ですが、この作品にとって、最高の理解者の一人だと感じています。というのも、日本人ほどセンシティブに『Camera Lucida~』を見てくれた人たちは、世界のどの国をとってもいないのです! おそらく、光というものに対して、とても敏感な国民なのでしょう。また日本の芸術については、たとえば最先端技術を用いたメディアアートもあれば、能や雅楽などの伝統的な芸術があり……というように、その多様性に惹かれます。伝統と新しいものが刺激しあって共存しているのが、面白いですね

[Interview 3] 夢の舞台は、宇宙へ。

Effie WU――では、次作について、教えていただけますか?

ドミニック&ゲルファンド:『Camera Lucida~』では液体中で音を光として可視化させましたが、今度はそれを、空気中で実現します。ただ、これも前作同様、私たちと一緒にリスクを承知で協力してくれる人たちを見つけるのは、一苦労でした。くわえて、私たちは、現存するテクノロジーを駆使した作品ではなく、その先にあるものを目指しているので、次作のための装置を開発するのに5年も要しています。実のところ、最終的な私たちの夢は、宇宙空間に向かっているのです!

――最後に、今後アーティストを目指している人たちへ、メッセージをお願いします。

ドミニック&ゲルファンド:そうですね、天頂(宇宙)での体験に備えて、充分に準備しておくこと、でしょうか(笑)。ともかく、私たちは、誰もがアーティストや科学者になって、創造的な活動にたずさわってほしいと願っています。なぜならそれが、人間の精神の深みや本質を理解する手がかりになると思うからです。

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