平成19年度[第11回]文化庁メディア芸術祭
シンポジウムレポート

[Special Interview] Sonia CILLARI

Se Mi Sei Vicino 1970年イタリア生まれ。「インターフェースとしての身体」の研究に興味をもち、ヨーロッパのさまざまなアーティスト・イン・レジデンス・プログラムに招待されている。建築とパフォーマンス・アートを組み合わせた作品は世界各国で展示され、賞を受けている。

受賞作品

[Interview 1] 自分のアイデアがほかの何よりも熱中できることを知ったとき、人はアーティストになる

Sonia CILLARI――『Se Mi Sei Vicino (If you are close to me)』の優秀賞受賞、おめでとうございます。まずは、ソニアさんが文化庁メディア芸術祭に応募した理由を教えていただけますか。

まず、ヨーロッパで文化庁メディア芸術祭に関係している方に知り合い、芸術祭の存在を知ったことがあげられます。そもそも私は日本に非常に興味があったからです。私はイタリア人ですが、20年以上にわたり、ロンドン、パリ、バルセロナ、ニューヨーク、アムステルダムなどで暮らしてきました。そんな私からみて、異国のイメージをもつことができたのは、つねにアジアの文化だったのです。なかでも日本の美の観念はもっとも洗練されているイメージがあって、私が考える美の観念にとても近いと直観的に感じていました。

――あなたには、メディアアーティストと建築家という2つの肩書きがあります。

私は建築家として勉強する中で、理想の建築を追求するために、デジタル空間の中で実験やシミュレーションをするようになりました。実際の建築には機能が必要です。けれども、そういった制限をいったん外して、コンピューターというバーチャルな空間で、理想的な空間を考えはじめたとき、アートが私にとって身近なものになりました。実際の建築ではできないことが、アートの世界では実現できることを知ったのです。そのように、自分で考え出したアイデアや方法論がほかの何よりも熱中できることを知ったとき、人はアーティストになるものなのです。

[Interview 2] 『Se Mi Sei Vicino』を各国で展示して、コミュニケーション文化の違いを実感した

Se Mi Sei Vicino
c Sonia Cillari

――今回の『Se Mi Sei Vicino~』はどのように生まれたのですか。

私は20年も外国で暮らしていましたので、人との距離ということも考えるようになりました。外国で暮らすと、その土地の人から距離を置かれてしまうこともあります。ときどき哀しさや孤独を感じるのですが、そういった感情がなぜか今作のイメージにつながったのです。本作は、人と人が触れあったときに何らかの化学反応が起こることをビジュアル的に表現したものです。私にとって、これは私の心の奥底にあったものを打ち明ける、同時に誰かの心の中にあったものを私に伝えてくれるものというような理想のイメージを作品化したものです。

Sonia CILLARI――『Se Mi Sei Vicino~』はいくつかの国で展示されていますが、それぞれの国で鑑賞者の反応に違いはありましたか。

全然違いますね。そして、そのコミュニケーションの文化が、作品の評価に少なからず影響します。たとえば、スペインやイタリアでは、非常に親密なスキンシップの文化をもっています。イタリアではお客様がパフォーマーにキスをしていました。でも、これらの国々では、作品の意義は認めてもらえましたが、人と触れるということに関して驚きはなかったようです。一方で、日本の皆さんは、他人に触れることにためらいを感じてしまうようでした。けれども、だからこそ、日本の皆さんが、この作品のテーマに対して、ほかの国の方々より驚きを感じてもらえたのかもしれません。また、中国では団体で作品と向きあう姿をよく見ましたが、それに比べると日本人は2人連れのカップルが多かったですね(笑)。

[Interview 3] 感動がなければアートではない

Sonia CILLARI――今後、どのような作品に手がけていこうと考えていますか。

現在、いくつかの作品を制作中ですが、その1つはアートにおける抑制ということがテーマです。アーティストが作品をつくるとき、見えないルールのようなものがあります。それは、アーティストとして生計を立てていく際、作品を誰かに売って、収入を得なければならないことにかかわっています。しかし、その一方で、アート作品は誰の所有物でもないことが理想でもあります。私のものでもありませんし、オーナーのものでもない、それがアートの理想のかたちです。そこで、アート作品そのものと、制作者、所有者の関係を、芝居のように表現してみたいと考えています。

Sonia CILLARI――そのテーマは、アーティストを目指している人に対するメッセージにもなるようなものでしょうか。

そうですね。とくにメディアアートを目指す人には、アートはアプリケーションではないことを知ってほしいと思います。人を感動させてくれる何かをもっているものがアートなのです。アートはソフトウェアではありません。新しいソフトウェアは、先進的なものをつくることに役立つかもしれませんが、私を泣かせたりしませんから。アートの中にも感情があるからこそ、作品が人にとってかけがえのないものになると私は信じています。

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