テーマシンポジウム「アートとテクノロジーの融合」には、情報科学芸術大学院大学(IAMAS)名誉学長の坂根厳夫氏、東京大学先端科学技術研究センター特認教授である鈴木康広氏、メディアアーティストとして活躍している久納鏡子氏が参加。アート部門審査委員である東京大学大学院教授の原島博氏を司会に迎え、アートとテクノロジーが融合した“メディアアート”の歴史と、その未来について話し合いました。
| 日 時 | : | 2月14日(木)16:00-17:30 (新国立美術館3F講堂) |
| 司 会 | : | 原島 博 (アート部門審査委員/東京大学大学院教授) |
| 出 演 | : | 坂根 厳夫 (情報科学芸術大学院大学名誉学長/多摩美術大学客員教授) 鈴木 康広 (東京大学先端科学技術研究センター特任助教) 久納 鏡子 (メディアアーティスト) |
原島氏の「メディアとアートの融合で何が生まれたかという歴史を振り返りつつ、これから何を生み出していくべきかを探りたい」という言葉で幕を開けた本シンポジウム。坂根氏は、作家ジェイコブ・ブロノスキー氏の「アートもサイエンスも人類のサバイバルから生まれたツールだ」という言葉を引き、「人類はより多くの獲物を獲得するために、矢じりをつくった。そして相手の動きをより研究するために絵(洞窟壁画)を描いて、想像力を高めた。つまり、アートとサイエンス(すわなちテクノロジー)は、はじめからコラボレーションの関係で生まれたということ」と語ります。
坂根:「技術が可能にしたアートの例も、数多くあげられます。古代エジプトのピラミッドやローマのコロッセオはアート作品ととらえることができますが、高等な建築技術なしには完成しえませんでした。また遠近法の確立により、絵画はより精密になりましたし、光が7色で構成されていることがわかると、点の集合体で絵をかく“スーラ派”が誕生します。70年代からは、コンピュータと人間をつなぐインターフェースが改良され、インタラクティブな作品が生まれはじめました。その後さらに、ネットワークや、ナノテクと結びつき、いまもなおメディアアートは発展しています」

つづいて、実際にメディアアートを制作している久納・鈴木両氏が、その魅力を語りました。大きく引き伸ばした現在の東京の地図の上を歩くと、歩いた場所だけ、江戸時代の地図が浮きあがる『at<case edo-tokyo>』を制作した久納氏は「さまざまなコラボレーションが活動の原点だ」と言います。また、昼間に遊んでいる子どもたちを撮影し、その姿を回転ジャングルジムに投影する『グローブジャングル・プロジェクト』を展開した鈴木氏は、「電子メディアを使うことで、本来もっている素材の魅力を引き出すということができる」と語りました。

Photo:Rinko Kawauchi
久納:「アイデアがあっても技術がなく、一人で実現するのが難しい場合でも、技術者と組むことによって可能になることがあります。実現性の点からだけでなく、科学者・文芸作家・企業・公共施設など、さまざまな人や場所とのコラボレーションを行なうことで、さらなる刺激を受けた作品をつくりあげることができるでしょう」
鈴木:「自分のアイデアが、技術をもった人の協力で発展していくのがおもしろいですね。また、従来の絵画や彫刻はつくった時点でアートとして完成していますが、メディアアートはつくった後に作者もアートに参加することができる。それも魅力ですね」
コラボレーションの話題から、アーティストと技術者の関係について話が進みました。坂根氏は「アートの勉強からはじめて、技術に向かう人もいれば、技術を学び、アートに向かう人もいる」とし、両者の密接な関係を強調しました。また鈴木氏は、「技術系の人たちにも、それぞれに好きなアートがある。それを活かせるかどうかで、コラボの意味が変わってくる」と語ります。そうした姿勢に、原島氏からは「メディアアートに携わる人は、コラボレーションで作品を生み出さなければならない。独りよがりに陥ることがないため、人間的に魅力のある人が多い」との言葉もありました。
坂根:「初期にはアーティストが技術者を、単に手段として使っていました。そのため技術者は不満をもつこともあり、両者には大きな隔たりがあったんです。しかし現在のメディアアートでは技術を重用していて、その点は解消されています。また、アートとは表現ですから、単なる技術の目新しさだけでなく、最終的には感情に訴えるものでなくてはなりません。だから技術出身の人も、アートの成り立ちを勉強すべきなのです」
ここまでの話を総括し、原島氏は「メディアアートは作品として残るだけではなく、技術の伝承という役割もあるのではないか」と語りました。また坂根氏は、現在の科学について、「現在の科学は専門化されすぎ、要素の追求に走りすぎている。そこから脱却し、全体を考える科学的思考をもって研究にのぞむべきだ」とし、技術者と学会に対して、芸術分野への積極的な取り組みを求めました。つねに現在進行形であり、完成することのないメディアアート。その未来について三氏が提言を行ない、シンポジウムは終了しました。
坂根:「メディアアートは、つくり手が感動するような作品でないと、ただの技術発表になってしまいます。一方、技術の分野から見れば、現在はいわば過渡期で、学会でアート的なものを発表しても、評価の対象になりません。学会の中でも、アート的なものを評価する組織をつくるべきですね」
久納:「これから後につづいていく人たちが出てくるかどうか、という問題もあります。メディアアートを教育の場でどのように伝えていくのか考える必要があるのではないでしょうか」
鈴木:「表現することの意味とは、旧来のスタイルを壊していく点にあります。とくにメディアアートでは、以前と同じことをやったらおもしろくない。“芸術”と呼ばれて形式的なものにならず、何にも縛られずに発展してほしいですね」
![平成19年度[第11回]文化庁メディア芸術祭 平成19年度[第11回]文化庁メディア芸術祭](/festival/images/no11.gif)



