アニメーション部門受賞者シンポジウムでは、『河童のクゥと夏休み』で大賞を受賞した原恵一氏と『カフカ 田舎医者』で優秀賞を受賞した山村浩二氏、そして日本のテレビアニメ黎明期から『タイガーマスク』、『ひみつのアッコちゃん』など数々の名作の脚本を手がけ、功労賞を受けた辻真先氏が登壇。司会にアニメーション部門主査の鈴木伸一氏を迎え、企画の経緯や制作背景などについて語り合いました。
| 日 時 | : | 2月17日(日)13:30-15:00 (国立新美術館3F講堂) |
| 司 会 | : | 鈴木 伸一(アニメーション部門主査) |
| 出 演 | : | 原 恵一(大賞『河童のクゥと夏休み』) 山村 浩二(優秀賞『カフカ 田舎医者』) 辻 真先(功労賞/脚本家・ミステリ作家) |
まずは司会の鈴木氏より本年度の応募状況について報告がありました。アニメーション部門の応募数は合計で417本。そのうち海外からは59本の応募があったということで「海外にも文化庁メディア芸術祭の認知度が広がっているのは関係者としてうれしい」と語り、また「毎年これだけのアニメ作品が制作されているのは非常に驚くべきこと」と感想を述べました。
そして本年度の大賞受賞作『河童のクゥと夏休み』を紹介。何百年も地中に閉じこめられていた河童「クゥ」と人間の少年・康一との交流を描いた本作は、原作の絵本に出合ってから20年来も企画をあたためていた原氏にとって“最終目標”でもありました。「つねにほかの仕事をしながらこの作品のことを考えていた」という原氏。また長年構想を練っていたという本作でのアイデアは、一部「映画クレヨンしんちゃん」シリーズにも使われていると語りました。
原:「「クゥ」のために考えていたシーンを、アイデアに困って「クレヨンしんちゃん」の映画で使ったりしましたね。たとえば『嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』ではクライマックスにしんちゃんがタワーをのぼるシーンがあるんですけど、どうしようかと思っていたら「クゥ」のアイデアで東京タワーをのぼるシーンがすでに自分のなかにあった。それで先に使ってしまったんです。実際に「クゥ」がつくれるようになったときには少し困りましたが、結局そのまま使うことにしました」

製作委員会
ここで登壇者の辻氏と山村氏にも『河童のクゥと夏休み』についてうかがうと「きちんとできているという段階ではなくて、味がある。その味がいわゆるアニメ好きのオタクが喜ぶ味ではなく、子供たちも楽しめるというもの。『サザエさん』世代や『エヴァンゲリオン』世代にも見てほしい」という辻氏は、本作のシナリオについても「子どもでも話がわかるのに複雑な味わいがある。それは多くの問題が伏在しているからで、それをあるマナーと姿勢をもってコントロールしている」と評価。山村氏は「マイノリティの対象として妖怪を描いているのがおもしろい。日本人が意識していない日本社会といったものを裏では描いているのでは」と作品に隠されたテーマについて意見を交わしました。
原:「昔はいたけれど、今はほぼいない。妖怪もかつて滅んでしまった少数民族かもしれない。そういう描き方を確かにしました。そういった社会問題や家族のこと、子どものいじめ問題など、自分にとって興味のあるものをくわえながら膨らませていった作品なので、それをどう1本にするかが難しかった。どれも押しつけがましくないように注意を払うという作業も長かったですね」
辻:「シナリオ面から見て、僕はラストはもっと前だと思っていましたが、原さんから「ラストは初期の段階で決めていた」と聞いて納得しました。自分の責任で“これでいい”という確信があるなら全然かまわない。ずっとそれを考えていたのであれば、誰が何を言ったってそこにあるべきです。考えてみれば主役は河童ですから、ラストでちゃんと作者として河童の落とし前をつけている。愛情をもってつくっているなと感じました」

つづいて本年度の優秀賞受賞作『カフカ 田舎医者』では、メイキング映像を交えながら山村氏に解説をしていただくことに。伸び縮みを繰りかえすキャラクターについて、鈴木氏の「デフォルメされた絵の動きはどこから発想したのか」という質問では「原作を読んだ時点で映像が伸び縮みするイメージを感じていました」と答えた山村氏。さらにカフカの短編小説を映像化するにあたって、「心の声を具現(ぐげん)化する」というアイデアを日本の伝統芸能である狂言から得たといいます。
山村:「カフカを日本語で読んだとき、能や狂言のような抑揚のある読み方が一番合うのではないかと思った。それで狂言の舞台を観てみると、小道具を持ってくるだけの人や前説をする人がずっと座っている。影になる人がずっと舞台にいるわけで、その様式美がおもしろいなと思ったんです。『田舎医者』は医者の独りごとというか、ずっと彼がブツブツ言っているような話なので、それを単純にやってしまうとおもしろくないと思っていたんですけど、「心の声」を具現化して画面に映したらおもしろいなと。そのアイデアは狂言からヒントを得たものでした」
『頭山』『年をとった鰐』と不条理感に満ちた作品を発表してきた山村氏。『頭山』を見て衝撃を受けたという辻氏は『カフカ 田舎医者』について「ただ上辺だけのおもしろさではなく、医者というキャラクターにもリアリティがある。その凄みはどこからくるのか」とコメント。また今回の作品は山村氏にとって企画当初から劇場公開を目的として制作された“メジャー系初デビュー作”でもあり、商業アニメとアートアニメの違いについて話題が及ぶと「自分のなかで分け隔てはない」と山村氏。さいごに鈴木氏が「これから各氏のつくりだす新しい作品にも期待しています」と述べ、シンポジウムを締めくくりました。
山村:「よく商業アニメとアートアニメの違いを意識させる質問を受けますが、自分のなかでは全然分け隔ては無いですね。単純にいえばその作品がおもしろいかどうかでしか見ていない。僕の場合は“どうやってアニメをつくるか”というまっさらなところから始めますが、スタジオ的なノウハウを積みかさねたうえでつくる人もいる。対立項目ではなく、そういう出発点、いる場所の違いなのかなと感じます」
![平成19年度[第11回]文化庁メディア芸術祭 平成19年度[第11回]文化庁メディア芸術祭](/festival/images/no11.gif)







