説得力や必然性を備えた上質な作品への期待
― 鈴木 伸一(アニメーション部門 主査)
映像作品というものは観る人の知識と好み、思い入れなどにより評価が大きく左右されるものだが、毎年行なわれている文化庁メディア芸術祭では、その年の審査委員の構成にもよるが、数あるジャンルから順当な作品が選ばれていると思う。商業作品は巨額な資金が投入されるため、話題性や認知度でヒットに結びつける場合もあるが、この審査では作品の内容、クオリティが優先される。今年も芸術性、おもしろさ、内容の新しさ、作家の意気込み、将来性など諸々を考慮に入れての選考となった。見方の違いはあったが、今年も良い選出ができたと思っている。異論がある人や作品を見る機会がなかった方は、この結果をもとに、もう一度受賞作品を見てくださるとうれしい。
▼長編(劇場公開・TV・OVA) ― 幾原 邦彦(アニメーション監督)
すべての放映作品がエントリーされているわけではないが、改めてテレビシリーズの本数に驚いた。企画は大別して「人気漫画を原作とした作品」と、昨今の時流なのだろう、いわゆる「秋葉原的メディアを原作とした作品」が多くを占めていたように感じた。別段「現場主導のオリジナル作品が少ない」と嘆いているわけではない。作品の良し悪しと、原作がある、無い、は別だ。しかし、入選の2作品『電脳コイル』『グレンラガン』は奇しくもオリジナルとなった。どちらも、製作者たちの「こういう作品をつくりたかった、観たかった」という熱意に満ちており、「長年温めていた企画」だろうと推測できた。そういった作品の選評に立ちあえたことはうれしかった。ただ、ひとつ気になったことがある。「秋葉原的メディア」は、若い現場スタッフにとっては、勝手知ったる我が家のはずだ。にも関わらず、それらの作品群から“異種融合的な新しい何か”が発信されているようには感じられなかった。それを“やっぱりね”と切り捨てるのは、もったいない気がする。あるいは選評するこちらの感性が鈍いのか古いのか。その部分に関しては次回以降のエントリー作品に注目したい。
▼短編 ― 野村 辰寿(アニメーション作家)
国内外から、プロ、アマチュア(商業作品〜自主制作)の垣根なく、2D、立体、3DCGなど、ありとあらゆるジャンルの短編アニメーション作品295本もの応募が寄せられた。応募数は、制作環境の普及に伴い年々増えている。その上クオリティもあがっている気がする。295本から苦渋の選択をさせてもらった21本の作品は、それぞれの「創意」において突出したものばかりである。非情にも狭き門ゆえ、短編からの入賞は2本となったが、『放課後MIDNIGHT』『蒲公英の姉』『放課後、エメラルド』『雲の人 雨の人』『THE CLOCKWORK CITY』は、入賞作品の決定ぎりぎりまで審査を熱くさせてくれた作品であったことを記しておきたい。
鈴木 伸一(アニメーション監督)
長崎市生まれ。中学時代から「漫画少年」などに投稿、1955年上京、漫画家仲間とトキワ荘に住む。1956年『フクちゃん』の横山隆一主宰の「おとぎプロ」に入りアニメーターの道へ、『ふくすけ』や日本初のテレビアニメ・シリーズ『インスタント・ヒストリー』の制作に従事。1963年、藤子・F・不二雄、藤子不二雄Ⓐ、石ノ森章太郎、つのだじろう、赤塚不二夫らと「スタジオゼロ」を創立。『おそ松くん』『パーマン』などを制作。ユネスコ・アジア文化センターの『ミナの笑顔』ほか4本をマレーシアのラットと共同監督。他に自主作品『ひょうたん』など。日本アニメーション協会副会長、杉並アニメーションミュージアム館長。
幾原 邦彦(アニメーション監督)
1964年生まれ。1985年京都芸術短期大学卒。1986年、東映動画に入社。1992年、TVアニメ『美少女戦士セーラームーン』シリーズに演出として参加。1993年、映画『美少女戦士セーラームーンR』監督。1996年、東映動画を退社。1997年、TVアニメ『少女革命ウテナ』企画・原作・監督。1999年、映画『少女革命ウテナ・アドゥレセンス黙示録』監督。2005年、OVA『トップをねらえ2!』の絵コンテ。2007年、TVアニメ『のだめカンタービレ』のOPアニメーション。他に、小説、漫画原作など。2006年、アパレルメーカー・BABY, THE STARS SHINE BRIGHTとコラボレートして『ノケモノと花嫁』を発表。
木船 園子(アニメーション作家)
東京造形大学在学中の1979年、木船徳光とIKIFというユニットを組み8ミリ、16ミリフィルムによる自主制作アニメーションの制作を始め、実験アニメーションや映像インスタレーション等の制作発表を続ける。80年代終盤より、CGアニメーション制作に携わるようになり、1997年に3DCGを主としたアニメーション制作会社IKIF+を設立。1995-97年、NHK教育プチプチ・アニメ『ぶーばーがー』を制作。2006年『立喰師列伝』の3D監督、2007年映画ドラえもん『のび太の新魔界大冒険』のOPアニメーション担当。日本アニメーション協会、日本アニメーション学会理事、東京工芸大学教授。
野村 辰寿(アニメーション作家)
三重県出身。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業、株式会社ロボットに入社。CMディレクターとして活動後、フジテレビ『ストレイシープ』をきっかけに、『ジャム・ザ・ハウスネイル』『ネコのさくせん』TVアニメシリーズ『ななみちゃん』など、さまざまなアニメーション作品を手がける。現在、同社キャラクター・アニメーション部Animation studio CAGEに所属。オリジナル作品や、CM、テレビ番組、Web、絵本、イラストレーションなど幅広く活動中。
箭内 道彦(クリエイティブディレクター)
1964年生まれ。東京芸術大学美術学部デザイン科卒。博報堂を経て、2003年「風とロック」を設立。2005年「月刊 風とロック」創刊。主な仕事に、タワーレコード『NO MUSIC, NO LIFE.キャンペーン』、資生堂『uno』、FUJIFILM『PHOTO IS』、東京メトロ『TOKYO HEART』など。


