エンターテインメント部門 審査講評

審査総評

革新的な表現や新しい創出による刺激に期待して

― 水口 哲也(エンターテインメント部門 主査)

2007年のエンターテインメント部門は、高解像度(ハイデフ)から携帯(ポータブル)、そして新しい入力装置を伴った新しいプラットフォームや、新しい映像表現、ウェブ、遊具、本に至るまで、広範囲に拡散しつつある数多くのエンターテインメント作品を「いかに革新的であるか」という視点で審査した。大賞作品である『Wii Sports』は、新しいコントローラの遊び方や楽しさを、日本のみならず、世界に広めた実績を高く評価した。その他の作品にも、革新的な映像表現を追及する作品や、ネットワーク機能を追求した新しい遊びの創出など、新たな進化樹形図の片鱗が見え隠れする年だったのではないかと思う。今後ますます、国境や世代を越えて、地球規模の文化を刺激するような、意欲的な作品の登場に期待したい。

ジャンル審査総評

▼ゲーム・遊具・キャラクター・その他ジャンル ― 河津 秋敏(ゲームデザイナー)

ゲームは応募作品のどれもが完成度が高く、ゲームとしてのおもしろさも一定の水準を超えているものばかりであった。その点で、ゲーム文化の定着を感じさせた。一方で、よくできているがゆえに、作り手の個性が見えづらくなっているのも事実である。作品性と商品性の両立という難しい課題がプロの作り手には突きつけられている。遊具・キャラクター・その他には優秀賞がないという結果になった。新奇性や作者性において飛び抜けた物がなく、他のジャンルの作品に圧倒された感がある。ゲームはメーカーから、遊具・キャラクター・その他は個人・団体からの応募がほとんどとはっきり色分けされすぎている。応募の傾向が変わることを期待したい。

 

▼映像 ― 田中 秀幸(アートディレクター)

今回のエンターテインメント部門の審査のなかで、イノベーティブという部分がひとつの審査基準となっていたが、それは現代における革新的な映像表現とはいったい何なのかということを考えさせる選考会にもつながったと思う。新たな作品の価値を発見することができるのも、エンターテインメント作品として映像、ゲーム、ウェブサイト、玩具など、既成のジャンルを飛び越えた括りで審査していくメディア芸術祭ならではないだろうか。

 

▼ウェブ部門 ― 福井信蔵(クリエイティブディレクター)

メディア芸術祭の審査にあたって僕が外せないと考える視座は、作品としての完成度はもちろんのこと、美意識の高さや、感性に直接訴えかけるコンセプトの存在。そして、わかりやすさも重要だ。さらに歴史の浅いウェブ部門の審査にあたっては、過去の作品を一段越えようという意識や、既成概念に挑戦し、打破しようという姿勢があるかどうかを僕は評価したい。僕はその取り組みが、人々に新しい経験を与えるところに帰着しているウェブ作品こそ、次を切り開いた価値ある作品だと考えるからだ。そうした視点からこの賞に値する作品が最終審査に残った。その中で、最も新鮮な印象と豊かなインタラクティブ体験を生み出した『DAYDREAM』が最も高い評価を得る結果となった。

審査委員

水口 哲也(プロデューサー)

水口 哲也1965年生まれ。日本大学芸術学部卒業。2003年キューエンタテインメント株式会社を設立し、現在同社代表取締役CCO。ゲームの代表作に、『セガラリー・チャンピオンシップ』、『スペースチャンネル5』、『Rez(レズ)』、『ルミネス・音と光の電飾パズル』、また音楽ユニット『元気ロケッツ』のプロデュースなど、多数。2007年に行なわれた『Live Earth』では、東京会場のオープニングアクトをホログラムにより演出。『Rez』は2002年アルスエレクトロニカで、インタラクティブアート部門Honorary Mention、文化庁メディア芸術祭特別賞などを受賞。2006年、全米プロデューサー協会に『Digital 50』の1人に選出される。

河津 秋敏(ゲームデザイナー)

河津 秋敏1962年熊本県生まれ。1987年スクウェア(当時)入社。『ファイナルファンタジー』、『ファイナルファンタジーII』(ファミリーコンピュータ)の開発などに携わり、ディレクターとして『魔界塔士Sa・Ga』(ゲームボーイ)を制作。以降、すべての『サガ』シリーズを手がける。2002年、『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』を発表し、メディア芸術祭エンターテインメント部門大賞受賞。

田中 秀幸(アートディレクター)

田中 秀幸1962年静岡県生まれ。1984年多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。株式会社フレイムグラフィックス代表。キャラクターやグラフィックデザインに加え、PV・CMのディレクション等、映像制作を幅広く手がけている。主な作品は、『GIANT BRA』ラフォーレ原宿CM(2001ADC制作者賞)、『OH!スーパーミルクチャン』アニメ、『The Rising Suns』石野卓球 PV、『JR-SKIキャンペーン』JAPAN SNOW PROJECT TVCM(2005ADC賞)、『企業CM』SoftBank TVCM(2007ADCグランプリ)、2005ACCベストアートディレクション賞 受賞など、多数。

福井 信蔵(クリエイティブディレクター)

福井 信蔵1959年 神戸市生まれ。アパレル出身の経験を生かし、ファッションブランドの広告やブランディングを多数手がけた後、1994年独立。同時にウェブデザインを独学で開始。2000年、デザイン集団「ビジネス・アーキテクツ」を設立し、数々のグローバル企業にウェブを軸とした多岐にわたるクリエイティブサービスを展開。2005年、同社を退社。現在、新会社設立準備中。1995年ロンドン国際広告賞、1995年GRAPHIS DESIGN、1999年Web Design Award金賞、2003年One Show Gold、2004年One Show Bronze、2005年Communication Arts等、国際的なデザイン賞を多数受賞。

桝山 寛(コンテンツ・プロデューサー)

桝山 寛1958年生まれ。慶應大学卒業後、NYで映像制作を学ぶ。帰国後フリーで映像・ゲーム制作に携わる。2001年以降の関心は「マネー」。主な仕事は『信用ゲーム展』(ICC/メディアート展示/客員学芸員)、『マネースマート』(角川書店/書籍)、『マネースマートtypeR』(シンフォレスト/PCゲーム)、『M.I.Q.』(講談社/マンガ原作)など。