平成19年度[第11回]文化庁メディア芸術祭
マンガ部門 審査講評

審査総評

作品本位の選考が生みだす新たな可能性

― モンキー・パンチ(マンガ部門 主査)

今年の応募作品は283点。そのうち最終審査対象作品として35作品が残った。昨年同様、今年も大賞作品と優秀賞作品が二転三転した。それ程にどの作品がどの賞に選考されても当然と思えた力作が揃った。時間を忘れ上質の作品群を読破するのは、審査員冥利に尽きて最高に幸せを感じた。なかには確かに目を覆いたくなる残酷な描写の作品や巻物風に作画した実験的な作品もあったが、そこには説得できる必然性がやや不足し審査委員全員を理解させるにいたらなかったことは確かであり、残念である。また、今後期待をもてるであろう新しいマンガの表現手段としての自費出版作品、ニューメディアを駆使したオンラインマンガ、デジタルマンガ等に審査委員を唸らせる作品が今回も少なかった。次回に大いに期待したい。

ジャンル審査総評

▼ストーリーマンガ ― しりあがり寿(マンガ家)

「何をどう選んだらよいのやら」それがボクの正直な感想だった。他の審査委員のみなさんも同様だったのか、審査は盛りあがった。この作品はオモシロイ。いやいやこちらの作品のテーマの方が時代性がある。この作品は一見地味だがそうたやすく描けるものではない。こちらの作品の実験的な手法には大きな可能性があるのではないか?などなど。それほどストーリーマンガの候補作は粒ぞろいで、次々に出される評価の視点が、まさに集まったマンガの多様性とそのレベルの高さを示していた。そしてなにより印象的だったのは、審査が終わった時。ホッとするより先に、惜しくも賞を逃した作品に、「すみません」と謝りたくなったことだった。

 

▼コマ・自主制作・オンラインマンガ・その他 ― 藤本由香里(評論家)

マンガ部門の総数自体は減っているが、これは主にストーリーマンガ部門で出版社が応募作品をより厳選してきた結果と考えてよい。その他は、今回コママンガの応募がやや減ったことを除けば、堅調に応募数が増えており、なにより、昨年激減した海外からの応募が復調し、実際に複数の作品が推薦作品として入選していることは喜ばしい。その結果を受けて今年は多彩な作品が推薦作品として選ばれている。展示を見ていただければ、マンガの形態も実にさまざまになってきていることを実感していただけるだろう。今年はとくにオンライン作品が増えたが、見せ方に工夫のある作品が少なかったことは気になった。携帯コンテンツとしては別の見せ方をしている作品もあるのだから、そのアピールをはっきりとすべきだったのではないだろうか。

審査委員

モンキー・パンチ(マンガ家)

モンキー・パンチ1937年、北海道生まれ。1966年にモンキー・パンチ名で「漫画ストーリー」に『銀座旋風児』を発表。翌年より「週刊漫画アクション創刊号」にて『ルパン三世』を連載。主人公ルパンをはじめ、個性的なキャラクターたちが人気を呼び、大ヒットし、テレビアニメ・映画化された。代表作『リトルマフィア』『一宿一飯』『透明紳士』など多数。2005年春より大手前大学教授に就任。マンガ研究について教鞭をとる。

しりあがり寿(マンガ家)

しりあがり寿1958年静岡市生まれ。1981年多摩美術大学グラフィックデザイン専攻卒業後、キリンビール株式会社に入社し、パッケージデザイン、広告宣伝等を担当。1985年単行本『エレキな春』でマンガ家としてデビュー。パロディーを中心にした新しいタイプのギャグマンガ家として注目を浴びる。1994年独立後は、幻想的あるいは文学的な作品など次々に発表、マンガ家として独自な活動を続ける一方、近年ではエッセイ、映像、ゲーム、アートなど多方面に創作の幅を広げている。2006年より神戸芸術工科大学先端芸術学部教授。

ちばてつや(マンガ家)

ちばてつや1939年1月11日、東京築地の聖路加病院で生まれる。同年11月に朝鮮半島を経て、1941年1月旧満州・奉天(現中国・遼寧省瀋陽)に渡る。1945年終戦。翌年中国より引揚げる。1950年、友人の漫画同人誌「漫画クラブ」に参加。1956年、単行本作品でプロデビュー。1958年『ママのバイオリン』で雑誌連載を始め、1961年『ちかいの魔球』で週刊少年誌にデビュー。主な作品に『1・2・3と4・5・ロク』、『ユキの太陽』、『紫電改のタカ』、『ハリスの旋風』、『みそっかす』、『あしたのジョー』、『おれは鉄兵』、『あした天気になあれ』、『のたり松太郎』など。社団法人日本漫画家協会常務理事。

藤本由香里(評論家)

藤本由香里1959年熊本県生まれ。東京大学教養学科卒。筑摩書房で編集者として働くかたわら、コミック・女性・セクシュアリティなどを中心に評論活動を行なう。明治学院大学・法政大学・早稲田大学非常勤講師。日本マンガ学会理事。著書に『私の居場所はどこにあるの?―少女マンガが映す心のかたち』『快楽電流』『少女まんが魂』『愛情評論』など。

わたなべまさこ (マンガ家)

わたなべまさこ 東京都生まれ。1952年、『少公子』でデビュー。集英社、小学館、講談社、双葉社、秋田書店、創美社、宙出版、ぶんか社 等に連載短編を執筆。現在、双葉社「jour」に『金瓶梅』連載中。1971年、第16回小学館漫画賞『ガラスの城』。2002年日本漫画家協会賞文部科学大臣賞。2006年旭日小綬賞。現在、創造学園大学 芸術学科教授。

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