数字で満杯の頭、チャックされた口のなかにあるチャックされた口、巻きとられる顔、魚にサポートされる両目など、子どもの身体をデフォルメしつつ、その生態を巧みに捉え、子どもを取りまく現状をユーモラスに、風刺的に描いた哲学的な山村ワールド。

山村 浩二
1964年名古屋市生まれ。『頭山』がアニメーション映画祭の最高峰、アヌシー、ザグレブ、広島をはじめ6つのグランプリを受賞、アカデミー賞にノミネートされる。また『カフカ 田舎医者』がオタワなど7つのグランプリを受賞。国際的な受賞は50を超える。日本アニメーション協会副会長、東京藝術大学大学院教授。
このたびは、賞に選んでいただき、大変ありがとうございました。昨今の子どもたちの置かれている状況に思いを馳せながら、ビジュアル遊びのアイデアをいくつも考えていく作業は、楽しかったです。この機会に人々の目に触れ、多くの方に楽しんでいただければ幸いです。
作者は、いまや日本を代表するアニメーション作家であり、海外でもその作品は高い評価を受けている。いつも優れた作品をエネルギッシュに創作し、今回の文化庁メディア芸術祭にも複数の作品を応募いただいたが、いずれも魅力に満ちた力作揃い。そのなかでも本作品は、子どもの世界や頭のなかを考察し、哲学的なユーモアを交えたアニメーション表現でユニークな作品に仕上げている。学校と塾を往復しているような子どもの頭のなかはいつも数字が浮遊しているし、本に夢中の子どもは本の顔になり、抑圧されたものを「ワーッ!」と蹴飛ばしたい子どもの気持ち、哀しい顔は無理に笑顔に…でもやっぱり哀しい顔。いくつもの顔を隠し持つ怪しげな子どもや、悲しい涙は自分のなかにしまい込んでしまう子ども。決められた形に自分を合わせようとする子ども。あちこち見たり聞いたりして自分を失っていく子どもなど、この子どもたちの姿に笑いながら、実は我々人間自体の風刺なのだと気づく。作者の鋭い観察眼と表現技術が生みだした秀作である。
「作品をつくりたい」と思ったのは、どんなことがきっかけでしょうか?
アニメーション作家を目指したのは、広島国際アニメーションフェスティバルで、イシュ・パテルの回顧上映を見たことが引き金になっています。その後、作家になってからは、作品毎に「作品をつくりたい」きっかけがあります。今回の作品『こどもの形而上学』に関していえば、フランスの児童映画祭のポスター用に描いた自身のイラストが、制作のきっかけでした。
現在、おもに使用している創作ツールは何ですか?
紙、インク、鉛筆、ペン、マッキントッシュ(RETAS!Pro、 Adobe Photoshop and Final Cut Pro)。
作品に対して、最も重視されているところはどこですか?
アニメーション表現の可能性の追求。観客が見終わったあと、それぞれ心のなかで、思考が膨らむような作品を目指しています。
創作活動を通して、持ちつづけているテーマは何ですか?
作品ごとにテーマは変わってきますが、あえて言うなら、自己と世界を認識すること。
テクノロジーを使った表現や、メディアという伝える手段をどのように考えて創作されていますか?
表現したいイメージがまず先にあり、テクノロジーはそれを実現するためのツールだと考えています。メディアは、創作時にそれほど意識していませんが、つくりたいイメージを最大限表現できる性能を求めています。
あなたが一番影響を受けた、人物や作品、出来事を教えてください。
アニメーションでは、ユーリ・ノルシュテイン、プリート・パルンの諸作品。文学ではホルヘ・ルイス・ボルヘス。
今後どのような作品を創作していこうと考えていますか?
人間の無意識の領域を刺激して、真の自由を感じられるような作品をつくりたい。
あなたにとって「創作する」ということは何でしょうか?
哲学をするためのメソッド。
![平成11年度[第3回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品 平成11年度[第3回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品](/festival/images/h1_jusyousakuhin2008.gif)










