平成11年度[第3回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品

アート部門

touched echo
c Markus Kison
優秀賞

touched echo

インタラクティブ

作者: Markus KISON

(ドイツ)

MOVIE

※動作環境に関してはこちら

作品概要

ドレスデンを見おろす高台の鉄柵。そこに肘をつき、てのひらを耳にあてると、骨伝導によって飛行機の降下する音や爆撃音が響いてくる。第二次世界大戦末期の1945年、米軍・英軍はドイツ東部のドレスデンに対して無差別爆撃を行なった。当時の市民は空襲の爆音を、この作品を聴くように耳を覆って顔を伏せてしのいだという。作品が都市の悲惨な記憶を語り継いでいる。

作者プロフィール

Markus KISON

Markus KISON

1977年、ドイツ、ウルム生まれ。ウルムでグラフィック・デザインを学び、優秀な成績で卒業。編集者として働く。ウルム大学で物理学を学んだ後、ベルリン芸術大学デジタル・メディア・クラスでビジュアル・コミュニケーションを学ぶ。2008年5月卒業。現在はベルリンと東京で活動中。

受賞コメント

『touched echo』は、私の力量が問われる作品だったので、この賞をいただけたことは大変嬉しいです。私は当初から、この作品がドイツの歴史の悲劇の一章を適切な方法で扱っているだろうかと自問していました。その夜ドレスデンにいた人々は、私の作品をどう思うだろうかと。しかし、それらの人々の反応がたいへん肯定的だったことと、またこのような賞をいただくことができたことで、私のこの主題への取り組み方が賢明だったことがわかりました。ありがとうございました。

贈賞理由

ドレスデン市街が一望に見わたせる公園。観客はこのテラスの手すりに「肘を曲げ耳に手を当てる人のマーク」を見つける。何だろうと思って同じポーズをしてみる。すると、手で覆った耳から飛行機の音、そして爆撃音が聞こえる。これは肘をついた手すりを振動させ、そこから骨伝導で爆撃音を伝えているのである。そして、人々は、1945年2月13日の空爆でドレスデンの街がほとんど壊滅し、多くの人々が死んでしまった事実を知るのだ。前方に広がるドレスデンの街を見ながら、爆撃の音を聞く。シンプルだが批判力と驚きのある表現である。とかく、テクノロジー面ばかりがフォーカスされてしまうこの分野だが、アートであるならば、「何を伝えるか」が本題。作者の、技術を駆使しながらもヒューマンな哲学的視座を忘れず、歴史的イシューを語るその態度が高い評価を受けた。

8つの質問

Q1
「作品をつくりたい」と思ったのは、どんなことがきっかけでしょうか?
A1
人々を見たこと、状況を見たこと。
Q2
現在、おもに使用している創作ツールは何ですか?
A2
私の仕事のほとんどは、「今」について知るためにインターネットを使っています。デジタル自己認識を探すようなものです。
Q3
作品に対して、最も重視されているところはどこですか?
A3
最も重要な問いは、「なぜ」です。なぜ私はこれを制作しなければならなかったのか? なぜ私はこれらの高価な電子部品を使わなければならなかったのか? 私にとって、作品を作る努力と作品のインパクトの間の相関関係は、自分がどれくらいその作品に満足しているかの目安なのです。
Q4
創作活動を通して、持ちつづけているテーマは何ですか?
A4
私のいつものワークフローは、特別なデータ素材についての直感的な興味から始まります。その素材とは、私としては何らかの意味を内在していると思っているけれども、まだ注意を集中していない、しかし貴重なものです。私はその主題について自分自身に質問をし、文化的関連を探ります。それについての説明を見つけたら、その主題に注意を向けさせるために、データ素材と物理的対象を合体させます。
Q5
テクノロジーを使った表現や、メディアという伝える手段をどのように考えて創作されていますか?
A5
デジタル素材は、デジタル世界の哲学的影響については全く理解されていないにもかかわらず、私たちの日常生活に非常に大きな役割を果たしています。そのことが私の興味をそそります。
Q6
あなたが一番影響を受けた、人物や作品、出来事を教えてください。
A6
インダストリアル・メタル・バンド、ナイン・インチ・ネイルズの1999年のツアー「アンド・オール・ザット・クド・ハヴ・ビーン(”and all that could have been”)」中に発信された的確な音楽的メッセージは、私に人間のコミュニケーションの驚くべき可能性を理解させてくれました。それ以前には、そのような説得力のあるコミュニケーションは、自然から得られるものしか知りませんでした。
Q7
今後どのような作品を創作していこうと考えていますか?
A7
何年か物理的対象を扱ってきたので、私の作品の原点に立ち戻って、プログラミング・ツールを使用した現実の仮想表現に専念することを考えています。
Q8
あなたにとって「創作する」ということは何でしょうか?
A8
私にとって「創作」とは、もしこうだったら、とか、たとえばこうしたらどうなるだろうかといった考えを発展させ、それを理解可能なように、また直感的に伝えることです。

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