モニターに映しだされた小さな人の隊列を指先で倒すと、映像なのに指先に感触が伝わってくる。これは爪の上に貼りつけたデバイスから伝えられた振動によって、指先に触覚が与えられたように感じられるためである。実体がないものをあたかも触ったかのように感じさせるマシン。

渡邊 淳司
1976年生まれ。人間の感覚と環境との関係性を理論と芸術的応用の両面から研究している。

草地 映介
1978年生まれ。インターフェースデザインの立場から、メディアアート作品の制作に携わっている。

安藤 英由樹
1974年生まれ。大阪大学准教授。錯覚を利用したインタフェースの研究と制作に携わっている。
受賞を大変嬉しく思います。私たち3人は、得意とする分野が、体験デザイン、ソフトウェアプログラミング、ハードウェア開発と、それぞれ異なります。その3人で作品制作をすることは、楽しみである反面、うまくいくか不安な面もありましたが、本作品は3人だからこそできた作品になったと思っています。この賞をいただけたことを励みに、これからも作品制作を続けていきたいと思います。ありがとうございました。
指を止めているときは単なる爪の上の振動なのに、画面を指でなぞると確かに指先に見えないモノが触れている。そのような不思議な知覚体験がアートになった。ふだん当たり前のように結びつけて感じられている「見ること」と「触れること」の関係性を改めて考えさせてくれる作品である。作者のグループは、最先端の学術的な知覚研究に基づくインタラクティブ作品の発表を続けているが、本作品は技術だけでなくメディアアート作品としても優れた表現となっている点が評価された。
「作品をつくりたい」と思ったのは、どんなことがきっかけでしょうか?
3人それぞれ回答します。
人間が持つ感覚に対する、自分なりの問いかけ。(渡邊 淳司)新しいおもしろい技術に対する、自分なりの意味づけ。(草地 映介)
「子どもに何を残せるか?」に対する、自分なりの回答。(安藤 英由樹)
現在、おもに使用している創作ツールは何ですか?
Windows PC、PIC microprocessor。
作品に対して、最も重視されているところはどこですか?
心地よさとともに、何かが心に残ること。
創作活動を通して、持ちつづけているテーマは何ですか?
ふだん、自分たちが感じている世界は、もっと違ったやり方でも感じることができるし、その感じ方を変化させることは、世界の豊かさに気がつくきっかけになると考えています。本作品では、見えるものに手を伸ばす、という何気なくしている動作、“見る”、“触る”という感覚の関係を見直すことをテーマに作品を制作しました。
テクノロジーを使った表現や、メディアという伝える手段をどのように考えて創作されていますか?
テクノロジーを使うことで、作品のなかの物理ルールを現実世界とは異なったものに変更することができます。たとえば、本作品では、画面のなかのものに触れることができるようになったり、指腹に何も装着しなくても触った感触を感じたりすることができます。テクノロジーは作品世界のルール自体を設計するための道具だと思います。
あなたが一番影響を受けた、人物や作品、出来事を教えてください。
3人それぞれ回答します。
島を旅したこと。(渡邊 淳司)ミシェル・ゴンドリーのミュージックビデオ。(草地 映介)
自分の子ども。(安藤 英由樹)
今後どのような作品を創作していこうと考えていますか?
ひとりひとりの感覚という個人的なテーマと、地域やコミュニティという社会的なテーマをあわせ持つ作品を創作できたらと考えています。大げさかもしれませんが、その作品を体験することが、どこかで誰かのシアワセにつながるようになればよいと思います。
あなたにとって「創作する」ということは何でしょうか?
私たちの作品では、鑑賞者が自分の新たな感覚に気づくことを目的としています。それは、自分自身が世界のなかでどのように知覚・行動しているか、それを再認識するきっかけを設計することです。私たちの創作物は、もしかすると、「表現」というよりも、ワークショップの延長上にある「体験のデザイン」、あえて名前をつけるならば “Technology-based Workshop”、 “Workshop Installation”といえるようなものかもしれません。
![平成11年度[第3回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品 平成11年度[第3回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品](/festival/images/h1_jusyousakuhin2008.gif)










