平成20年度[第12回]文化庁メディア芸術祭 インタビュー

[対談 アジア発のメディア芸術] LOU Baiqian × PARK Seong Sik

左からCICDAFのロー・バイチェン氏、SICAFのパク・スンシ氏
左からCICDAFのロー・バイチェン氏、
SICAFのパク・スンシ氏

世界各地で開催され、近年ではアジアでも大きな盛りあがりを見せているメディアアート・フェスティバル。なかでも、中国のCICDAF(中国国際アニメーション&デジタルアートフェスティバル)、韓国のSICAF(Seoul International Cartoon and Animation Festival)は年々規模を拡大し、世界中の注目を集めています。今回は、両フェスティバルのディレクターをお迎えし、各国の文化状況と、アジア発のメディア芸術について話しあいました。

ロー・バイチェン(CICDAFディレクター / 中国)
パク・スンシ(SICAFディレクター / 韓国)
聞き手:阿部 芳久(文化庁メディア芸術祭 / 日本)

[Interview 1] メディアアート・フェスティバルが果たす、大きな役割

――CICDAFとSICAFは、それぞれ中国と韓国を代表するメディア芸術の祭典であり、私たち日本人も大きな関心を持っています。まず、それぞれのフェスティバルについてご説明ください。

ロー:CICDAFは2004年から開催されており、今年で6回目になります。中国文化部の支援を受けて、アニメーション、デジタルアート、テレビジョンプログラム、映画などをテーマにした国際的なコンテストを開催するとともに、各作品の上映やフォーラムなども行なっています。

パク:SICAFは1995年に誕生し、開催は13回を数えます。フェスティバルの中心となるのは、アニメーション映画祭とコミックの展示会です。これらは韓国の若い人たちの関心も高いので、より多くの人たちに見てもらえるようにフェスティバルを盛りあげていきたいと考えています。

――CICDAFは創設後の4年間で、どんな変化がありましたか?

ロー:国内の若い作家を育てること、そしてフェスティバルをより開かれた国際的なものにすること、この2点に力を入れてきました。海外から多くのアニメーターやプロデューサーを招いたセミナーを行ない、中国国内の若い人たちの創造力を高めることに注力してきました。最初の2004年は200点ほどだった海外からの参加作品も、2008年には700点以上に増え、国際的な注目が高まってきていると手応えを感じています。日本からの作品も多く、昨年は伊藤有壱さんが制作されたクレイアニメ『ニャッキ!』(第35話「ふみきり」)が、テレビジョンプログラム最優秀賞を受賞しました。

――SICAFにも海外作品が多数集まっていますが、韓国発の作品にもすばらしいものが多いですね。

パク:90年代初頭の韓国では、国の統制もあり、コミックやアニメーションに対する認識が高くありませんでした。しかし、90年代半ばになると、人々の需要を捉えた私企業がムーブメントを起こし、それを国がサポートする形で、国内作品の質も上がってきたのです。

――クリエイターが自由に作品を生みだし、国が支援することで、その文化的地位を高めていく。これは、メディアアート・フェスティバルの大きな役割ですね。

[Interview 2] 中韓両国から生まれる、新たなメディア芸術

――各国のメディア芸術を取りまく状況についても伺っていきましょう。近年の韓国では、どんな変化がありましたか?

パク:ITテクノロジーが大きな広がりを見せ、技術と文化的コンテンツの融合が進んでいます。たとえば、SICAFの最も新しいカテゴリーであるインターネットアニメーション部門は、韓国発の作品でにぎわっていますね。

――環境が変化するなかで、SICAFが取りあげる作品も変わってきましたか?

パク:そうですね。作品に対する評価の目も厳しくなり、人々はひとつの要素では満足できないようになっているので、SICAFではデジタルアートやアニメーションなど、さまざまな要素が融合した作品を提供するように心がけています。

――第12回文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門では、中国人作家・李傑さんの『忠告』が審査委員会推薦作品として取りあげられました。中国では、アニメーションの進化がめざましいですね。

ロー:CICDAFがスタートした当初、中国国内のアニメーションを取りまく環境は、決してよくありませんでした。しかしいまでは、これまで中国の主要な都市ではなかった、開催地の江蘇省・常州が、国内外でアニメーションの拠点として捉えられ、強固な基盤ができたのです。

――そんななかで、作品の質も変わってきたのですね。

ロー:そうですね。常州には、かねてから日本や韓国のアニメーションを支える制作会社も多く、いまでは独自の作品を生みだせるクリエイターも出てきています。CICDAFが産んだ卵が、ついに孵化しはじめたというイメージですね。

[Interview 3] アジアから新しい文化の発信を

――各フェスティバルが国際化していくなかで、「取りあげられる作品が同じようなものになっていく」という傾向があると思います。各国のフェスティバルが独自性を失わないように、注意したいと思うのですが。

パク:非常に難しい問題ですね。昨今は世界中で新たなフェスティバルが生まれており、競争が起こっているので、SICAFの運営も簡単なものではなくなってきました。私たちもSICAFのアイデンティティを見つけたいと考えており、たとえば、中国・インド、東南アジアとふたつのカテゴリーに分け、アジア映画を中心にしたセッションを行なっています。

ロー:CICDAFは、まず海外から学ぶことからスタートしましたが、いまでは、国際的なものと、国内的なもののバランスに苦心しています。おっしゃるように、多様性やバラエティを求めるべきですね。

――さて、最後になりますが、アジアのメディア芸術を盛りあげるために、我々ができるのはどんなことでしょうか?

左から阿部芳久、ロー・バイチェン氏、キム・スーユン氏、パク・スンシ氏。キム氏はSICAFのコンポーザーをつとめている
左から阿部芳久、ロー・バイチェン氏、キム・スーユン氏、パク・スンシ氏。キム氏はSICAFのコンポーザーをつとめている

パク:欧米とは違った文化を発信するために、この3国間でコンテンツの交流を深め、ネットワークをつくっていくことが大事だと思います。切磋琢磨しながら、各国の伝統を打ちだしていくことで、アジアンカルチャーのステータスを上げていきたいですね。

ロー:今後は3国が共同で、作品を展示できる場を設けるのも一案だと思います。3国のトップアーティストの作品はもちろん、若い人の作品も取りあげ、より交流を深められたらすばらしいですね。パクさんもおっしゃるとおり、より緊密でフレンドリーな交流が必要だと思います。

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