平成20年度[第12回]文化庁メディア芸術祭 インタビュー

[Media Art in the World] SIGGRAPH ディレクター・インタビュー

第12回文化庁メディア芸術祭で行なわれたSIGGRAPHのプレゼンテーションのようす

昨年で35回目を迎えた世界最大のコンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術の国際会議SIGGRAPH。
昨年は“EVOLVE(進化・発展)”というテーマのもと、2008年8月11日から15日までアメリカ、ロサンゼルスで開催され、会期中87ヶ国から28,432名の参加者を記録しました。SIGGRAPHは、複数の展示と上映そして学会がひとつになって開催されますが、その上映にあたるSIGGRAPH 2008コンピュータアニメーションフェスティバル(以下CAF)のプログラム議長を務めたJill SMOLIN氏に、SIGGRAPHの背景と変化について話を伺いました。

――SIGGRAPH 2008 CAFを準備するなかで、どんな部分が大変でしたか?

6月から7月にかけて、開催に向けて多くの仕事を抱えていました。どうすれば、1日にこれ以上のことが処理できるのかわからないほどでした。CAFで開催される講演会の準備に関しても問いあわせが多く、その時点でまだ、技術的な大きな問題(特にサウンドの問題ですが)が処理できていない状況で、これに並行して映像もチェックする必要があり、すべてを本当に短期間にこなさなければなりませんでした。

――CAFには何人の審査委員がいるのでしょうか。 また審査のポイントを教えていただけますか?

1次の審査委員は、コンピュータグラフィックス(CG)の分野からさまざまな人が集められ24人で構成されます。この1次を通過すると7人の審査委員で、2次審査が行なわれます。すべての審査過程は非常に重要です。特に難しいのは、審査委員が受賞作品と学生賞を審議するときでしょうか。最終的には、全員で選んだ作品が本当にCAFの受賞作品としてふさわしい優れたものであるかどうかを審議します。

――文化庁メディア芸術祭ではさまざまな作品があり、特にアニメーション部門では、2D、3D、手描き、実写など多様です。CAFでは応募作品に何らかの規定はあるのでしょうか?

CAFの作品にもたくさんの形式がありますが、SIGGRAPH自体がCG学会ですから、すべての作品はコンピューターを使用していますね。しかしながら、最近は、非常に効果的に2Dと3Dをミックスさせる『My Happy End』のような作品も増えてきました。

――日本では2Dのアニメーションがいまだ人気があり、3Dのアニメーションの大ヒットは難しいという専門家もいます。この点についてどのように思われますか?

理由はわかりませんが、事実でしょうね。私の意見では、すばらしいストーリーとキャラクターで構築された本当に優れたアニメーションであれば、人は見ると思うんです。でも逆に、CAFでは3Dが注目されていますね。

Carbon Footprint © Discovery Communication Europe
Carbon Footprint
© Discovery Communication Europe

――今回、文化庁メディア芸術祭にいらっしゃって、どう感じましたか?

メディア芸術祭で出合える多様な作品は本当に興味深いです。手描きのアニメーションから『Carbon Footprint』(エンターテインメント部門優秀賞)のような3D作品まで実にさまざまで、長編アニメーションというジャンルもありますね。今回のCAFでは、全尺での上映を試みましたが、時間が足りませんでした。メディア芸術祭での、制作過程の原画の展示に加え、薄型のディスプレイで実際のアニメーションを見せるという工夫は効率的だと思います。CAFでの上映と比較すると美術館空間で作品を味わっている感じがします。SIGGRAPHでは、エマージング・テクノロジーとアートギャラリー、カンファレンスをあわせて4日間しかありませんが、メディア芸術祭が2週間開催されるのはいいことですね。

――メディア芸術祭では“学生CGコンテスト”も同時開催されています。ジルさんは長い間、教育に携わっていらしたそうですが、学生に向けて何かアドバイスはありますか。

自分の技術を磨いて、そして本を読み、さまざまな経験をしてさらに大きなアイデアを得られるようにしてください。最近は、世界中の人同士がインターネットなどで個々にアクセスでき、さらに先の状況が起きているように思います。現状での、私からアドバイスは、お金儲けのためでなく、やりたいからこそ大好きなことを続けなさいということです。お金は後からついてきます。今回CAFは340作品が学生から応募されました。そして、すべての賞を学生が受賞したんです!

――そのCAFの大賞作品『OKTAPODI』を制作した学生たちは、受賞をきっかけに制作会社とのつながりができましたか?

もちろん。受賞式の後、受賞者が会場から出てきたとたん、映画制作会社の人々が彼らを取りかこんでいました。驚きましたけど、すばらしいことです。実際、SIGGRAPH来場者の半数は初めての来場者で、仕事を探しにきたり、人に会いに来たりしています。SIGGRAPHに何らかの形で参加できれば、それは新しい人と出会えるすばらしい機会になります。本数はわかりませんが、すでに多くのすばらしい作品がCAFから見いだされてきました。たとえば、数年前のことですが、当時学生だったShane ACKER氏がつくった短編映像『9(Nine)』という作品がありました。その作品が今年の年末、劇場用映画となって公開されます。

――SIGGRAPH 2008のテーマは“EVOLVE(進化・発展)”でしたね。SIGGRAPHは大きく変化しましたか?

はい、その通りです。私たちは2年かけてCAFを、講演や上映などさまざまな要素をそろえたフェスティバルに変化させました。人々が講演会に参加する方法やそのタイトル、内容も変えました。また、インタラクティブエリアでは、会期中いつでも最新技術に触れることができるようにしました。アートギャラリーも変化しましたね。完全に異なるふたつの展覧会を設けて、それぞれ審査作品の展示と招待作品の展示を行ないました。

また、CAFでは、たくさんの招待作品を加えました。メディア芸術祭作品集も上映しましたし、ゲーム作品、学生の作品、Flash作品、映画のトレーラーやPolygon Picturesの回顧映像なども上映しました。すべてがすばらしいものでした。2日間にわたり、立体視映像のプレゼンテーションがあり、これまでCAFでは開催されなかった講演会が37回も開催されました。また、ピクサー、ソニーピクチャーズ、イメージワークス、ルーカスフィルムのすばらしいイベントが3夜にわたって繰りひろげられました。

――SIGGRAPHはこれまでより規模が大きくなったのでしょうか?

規模についてはわかりませんが、確実に変化しましたね。すばらしい議長であるJacquelyn MARTINO氏はすべてのメンバーとともに異なる体験をつくり出しましたし、より来場者のことを考えた内容にもなったのではないでしょうか。

――SIGGRAPHにはフェスティバル、ギャラリー、カンファレンスがありますが、中心となっているのは何でしょうか?

すべてがSIGGRAPHなんです。難解な資料と専門化による学術的なカンファレンスがあれば、美しい作品を紹介するアートギャラリーもある。そしてエマージング・テクノロジーのエリアもあればCAFもあります。最新のハードウェア、ソフトウェアそして映画会社の作品も見ることができる本当に唯一の国際会議でしょうね。また、SIGGRAPHでは“Woman in Animation”など、地域と連携したカンファレンスも数年前から始めています。

――最後に、今後のSIGGRAPHにどんな期待をしている教えてください。

SIGGRAPHが今日のCG産業界に与える驚くべき影響は計りしれません。今後もさらにすばらしい作品がSIGGRAPHで紹介されるのを楽しみにしています。CG業界のさまざまな分野からの作品はもちろん、まだ私たちが知らない分野からの作品もあるでしょう。SIGGRAPHはアートとテクノロジーが交差する場であり、探求と発見、そして交流の場でありつづけるのです。

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