平成20年度[第12回]文化庁メディア芸術祭 インタビュー

[Media Art in the World] SIGGRAPH ASIA フェスティバルチェア・インタビュー

左からジニー・H・J・チュウ氏、森山朋絵氏
左からジニー・H・J・チュウ氏、
森山朋絵氏

世界最大のコンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術の国際会議SIGGRAPH。2008年より、SIGGRAPHの開催がアジアで始まっています。最初の開催地は、シンガポール。そのSIGGRAPH ASIA 2008 in Singapore で、アートギャラリーとエマージング・テクノロジーというふたつのプログラムの議長を務めた森山朋絵氏とコンピュータアニメーションフェスティバルのプログラム議長を務めたジニー・H・J・チュウ氏。韓国国際芸術大学の講師で研究員でもあるチュウ氏と東京都現代美術館の学芸員である森山氏にSIGGRAPH ASIAについて語っていただきました。

森山:忙しいなか、来日ありがとうございます。大変わかりやすいプレゼンテーションでした。

チュウ:このようなすばらしい機会をありがとうございます。SIGGRAPH ASIAでのプログラムにはコンピュータ・グラフィックスや技術の専門家が集まりますが、今回の上映プログラムではメディア芸術祭の来場者が楽しめるものを目指しました。コンピュータアニメーションフェスティバル(以下CAF)は、魅力的なアニメーションで一般の人々の注目を集めており、この傾向が定着されればと思います。

森山:そうですね。日本では、韓国と同じように、2002年から中学校・高等学校の「美術」の時間において「映像メディア教育」が必修化され裾野が広がっていますが、今日のプログラムは一般の人からプロフェッショナルな人まですごく楽しめた内容だったと思います。ところで、チュウさん、SIGGRAPH ASIAを準備するなかでもっとも大変だったことは何ですか?

チュウ:CAFのプログラムを決定する委員は世界中から集められ、各国に住んでいます。準備が始まったころですが、その各々の委員とやりとりをほとんどメールで行なわなければならなかったことが本当に大変でした。

森山:メールはストレスになりますね。ときにはスカイプで会議なども行なわれました。

チュウ:スカイプでの会議は時差の関係で、まったく機能しないこともありましたし、スケジュールの調整が大変でした。そのために、各々とやり取りすることが難題でしたが、同時に、現地の人々と仕事をするというほとんど経験したことのない多くのことを、ほかの議長から学ぶことができました。また、多くの人が各国から集まる国際的な状況で、どのように体制をつくっていくかも学びました。これが、SIGGRAPH ASIAのために働く利点だと思います。

森山:そうですね。制作チーム全員のすばらしい経験と、そしてゲームのようにプログラム議長チームが構築されていくさまが非常に印象的でした。

チュウ:2年前の私たちの初めての会議で“breaking the ice(緊張をほぐす)”というゲームをしたのを思いだします。このゲームは単純でおもしろく、楽しく、そして同時にお互いを知るきっかけをつくってくれました。ゲームは実によくできていて、その後はすっかり緊張が解けていました。

森山:いまでは、情報や状況を共有しています。

チュウ:SIGGRAPHには、長い歴史があり、異なるバックグラウンドをもつさまざまな人々とともにどのように会議を組織し、運営していくかを長い歴史のなかで構築してきました。

森山:チームづくり(チームビルディング)のノウハウがあり、それは大変意義深いと思います。

チュウ:つけ加えれば、SIGGRAPH ASIAには、決まった形式、ガイドライン、方法論があります。しかし、アメリカのSIGGRAPHとSIGGRAPH ASIAの大きな違いは、開催都市、地域が毎年異なりますので、私たちはそのたびに、その文化・産業の背景を知る必要があるという点です。

森山:シンガポールの人々と作業したことで、経験を共有することができました。展覧会の設営中、私たちは一緒になって働き、美術館や劇場など地域との社会的な連動をつくることができました。非常に重要なことだと思います。

チュウ:もし可能なら昨年のシンガポールで実現したように、今年もメディア芸術祭がSIGGRAPH ASIA 2009に参加できれば、それはすごく有意義ですばらしいことだと思います。同時期に開催されますので、たくさんの活動を通じてメディア芸術祭の関係者も多くの人々に出合える機会になると思います。

森山:あなたの次のプロジェクトは何ですか?

チュウ:SIGGRAPH ASIAに関しては、2010年のSIGGRAPH ASIAへの参加要請がありますが、現在思案中です。すでにお話しましたが、本当にすばらしい経験なのですが、これはボランティアの仕事ですので、プライベートの時間を裂かなければいけません。再挑戦は価値があると思います。でも、まだ考えています。

森山:前回はシンガポールでしたが、次回はホームグラウンドのソウルですよ。

チュウ:そうですね。私にとっては、やりやすくはなると思います。

森山:それはジニーさんの非常に重要な役割ですし、SIGGRAPH ASIAの質も向上させていけると思うんです。そして同時に、横浜、ソウルをつなぐ重要な役割になると思います。

チュウ:これからもいいお付きあいをしたいと思います。ところで、森山さんはSIGGRAPHで活動されて長いですよね?

森山:そうですね。1993年のアナハイム大会が初めての参加になります。

チュウ:そしてこの活動がご自身の仕事にも繋がっていますよね?

森山:はい、美術館での企画や大学での活動に深く繋がっています。

チュウ:私が現在取りくんでいる研究は、韓国芸術総合大学で学際的な専攻をつくりだそうというものです。言いかえれば、ふたつ以上の学術的なテーマ、たとえばアニメーションとキノドラマ(実演の一部に映画をとりいれた演劇)を統合してみるといったことです。キノドラマとアニメーションの実践の理論を用いているのです。

――最後におふたりから、SIGGRAPH ASIA 2009に向けて、日本の人々にメッセージをお願いします。

森山:展示としてのアートギャラリーとエマージング・テクノロジーですが、シンガポールでは、ふたつの異なるプログラムをひとつにした「シンセシス(統合)」という企画テーマで、そのインターセクション(交差点)をつくりました。しかしながら、横浜では「アダプテーション(適応)」という同一のテーマのもとに、それをもう一度ふたつに分けます。ふたりの議長によるふたつのプログラムが同一のテーマを持つことは重要で、かつ変化をもたらすと思います。表現や技術の革新など、たくさんの新たな可能性と出合うことを本当に楽しみにしています。

チュウ:横浜のCAFの議長から聞いたのですが、今回彼は、SIGGRAPHのCAFの古くからの形式であるエレクロトロニックシアターとアニメーションシアターに注目し、アニメーションやCG業界からビックネームを招待すると言っていました。おもしろいことになりそうですね。シアターの収容人数は1000人以上だそうです。シンガポールのシアターより大きいんですね。彼のCAFへの新しいアイデアを非常に楽しみにしています。彼はCGのエキスパートとして、長期にわたりアメリカで働いていました。しかし現在は東京在住のため、アメリカにも日本にもネットワークがあります。これはプログラムを準備する際に大きな利点となると思います。

森山:横浜でも、メディア芸術として注目すべき3つのプログラム、アートギャラリー、エマージング・テクノロジー、そしてCAFは期待できるものになると思います。

チュウ:横浜でSIGGRAPH ASIAがどのように開催されるのかを知るのが待ちどおしいですし、そして、3回目となるソウルでの開催も心待ちにしています。

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