平成20年度[第12回]文化庁メディア芸術祭 フェスティバルレポート

「未来をつなぐ。」をテーマに、今年も多くの来場者でにぎわったフェスティバル

2009年2月4日(水)から同15日(日)まで国立新美術館にて開催された第12回文化庁メディア芸術祭。アート部門、エンターテインメント部門、アニメーション部門、マンガ部門の各部門をあわせて、世界44の国と地域から過去最高となる2,146作品の応募があり、そのなかから選ばれた優秀作が一堂に展示されました。

「未来をつなぐ。」をテーマに、メディア芸術の最先端に触れ体験することができる展示・上映、トップクリエイターの生の声が聞けるシンポジウム、未来のアーティストを創出するワークショップなど、数々の企画が用意された、今回の文化庁メディア芸術祭。前回を大きく上回る5万5000人を超える来場者でにぎわった、会期中のようすをレポートします。

受賞者の笑顔に包まれた贈呈式・祝賀会

フェスティバルに先立ち2月3日(火)、六本木ミッドタウン・ミッドタウンホールにて文化庁メディア芸術祭賞贈呈式が行なわれました。各部門の受賞者には、山内俊夫文部科学副大臣から賞状、各部門の主査からトロフィーが贈呈されました。また、日本のメディア芸術分野に多大な功績を残した人物を顕彰する功労賞は、コミュニケーションをテーマとするビデオ作品などで、日本におけるビデオアートの推進者となった中谷芙二子氏が受賞しました。

贈呈式の後に開かれた祝賀会では、エンターテインメント部門で大賞を受賞した『TENORI-ON』作者の岩井俊雄氏と西堀佑氏によるプレゼンテーション&ライブも行なわれ、会場は大いに盛りあがりました。また、さまざまな分野で活躍するアーティストや作家たちと交流を深める機会とあって、終始にぎやかな宴となりました。

メディア芸術の現在を代表する受賞作品が勢揃い

国立新美術館の展示会場に一歩入ると、広々とした空間に数多くの作品が並んでいます。まずはアート部門から。メディア芸術の特徴は、“見るだけはなく、体感できる作品”が多いこと。そんな特徴を表している作品のひとつが『Touch the Invisibles』(渡邊淳司/草地映介/安藤英由樹)。モニタに映しだされた小さな人たちを指で倒すと、映像から指先に感触が伝わってきます。爪につけた装置からの振動が指先に触覚を与える仕組みで、実体がないものをあたかも触っているかのような不思議な知覚体験は、多くの人にインパクトを与えていました。

会場の一角にはドレスデンの街並が登場。鉄柵の上に肘をつき、両耳に手を当てている来場者の姿が見えます。優秀賞の『touched echo』(Markus KISON)は、第二次世界大戦末期のドレスデンにおける悲惨な記憶を音で表現した作品。戦争について深く考えさせられる作品に、たくさんの来場者が感銘を受けていました。

アート部門のなかでも来場者の注目をひときわ集めたのは、大賞の『Oups!』(Marcio AMBROSIO)。スクリーンに映しだされるユーモラスなグラフィックにあわせて、観客も思わず動きだしてしまいます。電気プラグに感電したり、マッチョな男たちがスクワット運動をしていたり、自分の体が虫になったり…と、さまざまなアニメーションが次々と展開。身体を動かすことで、体験者は作品世界に引きこまれ、見ている人々の笑いを誘います。子どもから大人まで、手足を動かしたり飛びはねたりと、夢中になって楽しんでいました。

そのほか、静止画や映像作品はもちろん、目の前のキーボードの動きに沿って、入力された文字がモニターに投影される『タイプトレース道 ~舞城王太郎之巻』(遠藤拓己/ドミニク・チェン/舞城王太郎)や、人が近づいた場所をセンサーで感知し、プロペラが回転する『Flow 5.0』(Daan ROOSEGAARDE)など、審査委員会推薦作品に選ばれた数々の展示作品も、多くの注目を集めました。

マンガ部門に足を運ぶと、原画やパネル展示のほか、作品の閲覧コーナーも。原画を直接見られる貴重な機会とあって、長い時間足を止めて作品に浸る来場者も多数。注目の作品が数多くそろうマンガ閲覧コーナーでは、子どもから大人までマンガを読みふける姿が見られました。

大賞に選ばれた『ピアノの森』(一色まこと)、優秀賞の『マエストロ』(さそうあきら)は、ともに音楽をモチーフにした作品。物語性・表現ともに秀逸な両作は、どちらもマンガのなかから音楽が聴こえてきそうです。ほかにも、諸星大二郎氏の『栞と紙魚子』や星野之宣氏の『宗像教授異考録』など、日本のマンガ界を代表する作家陣の作品がずらりと並びます。作品の原画をじっくりと眺められるのも、文化庁メディア芸術祭の大きな特徴。生で見る原画からは、作家の執筆姿勢がひしひしと伝わってきます。そして、回を重ねるごとに少しずつ応募が増えてきているWebマンガ。Flashを使い動きのある表現や音を用いたもの、携帯電話で展開される作品など、マンガ表現の幅の広がりを感じられる作品が展示されました。

アニメーション部門は、どれもじっくり鑑賞したい完成度の高い作品ばかり。大賞作品『つみきのいえ』(加藤久仁生)は、同賞を受賞した後、第81回 米アカデミー賞 短編アニメーション賞の受賞も果たした作品です。セリフを排した映像から伝わる温かく郷愁的な世界が、観客の心にじんわりと沁みわたります。多くの人が足を止めて見入っていました。

カイバ』(湯浅政明)や『DREAMS』(荒井知恵)など、優秀賞を受賞したどの作品も、それぞれ個性的な手法で、独自の感性を表現したアニメーション。いずれも、特別な存在感を放っています。アニメーション部門では、映像の上映のほかにも作品の絵コンテやスケッチなど、貴重な設定資料などを展示。興味深く眺める来場者も多かったようです。

既存の概念にとらわれないユニークな作品が目立ったエンターテインメント部門の展示スペースでも、実際に体験できる作品が多く展示されました。

大賞に選ばれた『TENORI-ON』(岩井俊雄/「TENORI-ON」開発チーム代表 西堀佑)は、16×16個のLEDボタンを使って、音楽の知識がなくても視覚的・直感的に作曲・演奏することができる作品。音楽が“音”を“楽しむ”ものであることを、あらためて感じさせてくれる、いままでにない電子楽器です。この機会に、実際に触れてみようという人たちが列をつくりました。

Web作品では、バラバラにした文字のパーツでイラストがつくれる優秀賞作品『FONTPARK 2.0』(中村勇吾)や、携帯電話とWebをリアルタイムに連動させ、映像上で魚釣りができる奨励賞作品『Gyorol』(「Gyorol」制作チーム代表 朴正義)にも注目が集まりました。いずれも、ゲーム感覚で楽しめる作品とあって、夢中になっている来場者の姿が印象的でした。

そのほか、投げすてられた空き缶が腐食していくようすを描き、環境問題への警鐘を鳴らした優秀賞作品『Carbon Footprint』(Matt CHANDLER)や、『食料の未来を確かなものにするために』(groovisions)など、社会的なメッセージが込められた映像作品が多かったのも、今年のエンターテインメント部門の特徴のひとつです。

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