ある家族の物語。舞台は、あたかもひと続きの世界のようである。だがそれは、高度な仮想現実技術で結びついた断絶の世界。生活に疎外感を感じながらも、生の感覚を抑圧してきた父親は、組織工学による生きた家具「バイオファニチャー」と出会う。3つのスクリーンに展開される開かれた物語は、新たな物語を紡ぎつづける。

志村 諭佳 / 志村 健太郎(SHIMURABROS.)
ユカ&ケンタロウによる姉弟ユニット。英国セントラル・セント・マーチンズ大学院映画・舞台芸術学部卒業。新たな映像装置の発明によって既存の枠をこえたイメージの実体化を企てる。カンヌやベルリン国際映画祭での上映をはじめ、ロンドン、パリ、プラハ、ウィーンなど、国外にも活躍の場を広げている。
アシスタントをさせていただいていた保田克史さんや、展覧会でご一緒させていただいたクワクボリョウタさんなどが受賞していたので、前々からすばらしい賞だということは存じておりました。今回受賞できて嬉しく思います。展示にはさまざまな人々がいらしてくださり、新しい経験でした。メディアアートという非常に先鋭的なジャンルに触れられるとても貴重な展示だと思います。
3面プロジェクションによるインスタレーション形式をとるこの作品では、仮想現実空間を介した家族の(ディス)コミュニケーションを、ネズミを組み込んだ有機的な家具(バイオファニチャー)をめぐって描く物語が、断片的なシークエンスの自由な組み合せとして、空間・時間的に毎回異なるかたちであらわれる。どこまでが誰の現実、記憶、妄想なのか。時制、人称、ストーリーなど、観客は異なる仮想空間を自由に行き来する存在として、それぞれの解釈を紡いでいく。独特の空気感で秀逸に仕上げられた映像は、一見オーソドックスだがそれも意図的なものだろう。コンテンツとしての映像のクオリティと、メタフレームとしてのシステムや空間の構造のコントラストが鮮やかで、その意味できわめて周到に実現された作品といえる。映像の文法や映像メディアのメカニズムに対する作者の探究心と批評的なまなざしが、一貫して感じられることも受賞の理由となった。
「作品をつくりたい」と思ったのは、どんなことがきっかけでしょうか?
物心ついたときから、姉弟で絵本を描くなどしていました。特に身構えることもなく、遊びの延長のように、自然と制作しているというのが実感です。
現在、おもに使用している創作ツールは何ですか?
夢とMac
作品に対して、最も重視されているところはどこですか?
映像に欠けている、感触をあたえるため、デジタル表現の扱いかた、見せ方に気を使っています。部分的にアナログな手法を使うことで、デジタル特有のノイズ、断絶感をデフューズするように心がけています。例えば、『SEKILALA』は16mmアナログフィルムで撮影し、デジタルデータとして編集を行なっています。
創作活動を通して、持ちつづけているテーマは何ですか?
イメージに実体をあたえることです。そのための手段として、新たな映像装置による表現を追求します。光と物質は同等であるべきです。
テクノロジーを使った表現や、メディアという伝える手段をどのように考えて創作されていますか?
テクノロジーによって新たに生み出された表現方法は、いままでは視覚的に表現できなかったものを視覚的に表現することの選択肢を提供してくれています。X線や超音波など可視光線以外の電磁波で見る映像は、私たちの視覚そのものを拡張していると言ってよいと思います。
あなたが一番影響を受けた、人物や作品、出来事を教えてください。
安部公房、カフカ、ルイス・ブニュエル、エルムグリーン&ドラッグセット、バレンティノ・ロッシ
今後どのような作品を創作していこうと考えていますか?
X−RAYなどの視覚を拡張するような、新しい映像表現に興味があります。
一方で、SEKILALAでも取り組んだ「映画」にも興味があります。
従来の映画という形式のなかでもまだまだ新しい表現が可能だと考えています。長編映画に取り組んでみたいです。
あなたにとって「創作する」ということは何でしょうか?
日常そのものです。睡眠をすることと同じように大切で、必要なものです。
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