空間発生のプロセスをモデルとした独自のソフトウェアを、わずか爪ほどの大きさの液晶ディスプレイに可視化して、顕微鏡で覗くという作品。 発生と消滅を繰り返す、無数の次元オブジェクトたちは、…点、線、面、立体、超立体…と、造形を始める。

魚住 剛
1987年生まれ。大阪府出身。多摩美術大学で情報芸術を専攻。アルゴリズミックなインスタレーションやライブパフォーマンス作品を発表し、ネットワーク時代における創造性の再考やリアリティの拡張を試みる。
本作は、離散表現の可能性を模索するプロジェクトの、第一段階です。私自身、今後2、3の異なる表現展開を経て、ようやく全貌や核心がわかるもので、現段階で受賞できたことは大変励みになります。ありがとうございます。
我々は知覚の都合上、時間や空間を連続的に経験していると捉えやすく、そこからミメーシス(模倣)に始まる造形概念が発展しました。今日まで積み上げられたこの概念は、前提になっている身体の知覚制限に阻まれ、行き詰まっているように見えます。本プロジェクトでは、この前提を考え直し、造形の初期状態や原理など、身体以前へ向かいます。そこで、コンピュータでパターンを生むモデル(セルラオートマトンなど)の離散性や、知覚のバランスを崩すことで現れる非連続性(例えば、簡単な実験で盲点を見れる)に着目しています。
この作品は、作家が「空間発生ソフト」と呼ぶオリジナル・プログラムによって、「ヴォイド」と呼ぶ状況から発生した自律的なミクロ・オブジェクトの映像と、それをのぞき見るための装置で構成されている。最小限のピクセルでディスプレイに出力されるオブジェクト(ソフトウェア)と、それを観客に可視化するメタ装置(ハードウェア)という設定は、可視化、知覚、観察という行為が異なる精度をもつメディアのインターフェイシングによってかろうじて可能になることをあらためて気づかせる。メディアについて検討し、メディアを自ら創造するという、作者のコンセプトと実現力が強く伝わってくる作品である。
「作品をつくりたい」と思ったのは、どんなことがきっかけでしょうか?
つくりたいと思うより前に、何かつくっていました。日常的な行為 / 世界との関わりからですが、そこから何か、些細なものが生まれる度に、わずかに心が震えるのです。
現在、おもに使用している創作ツールは何ですか?
コンピュータ(pc、microcomputer)とプログラム(c++)、紙とペン。
作品に対して、最も重視されているところはどこですか?
発明すること。ただよい表現では物足りません。
創作活動を通して、持ちつづけているテーマは何ですか?
関係性。この広い世界で、朝、小鳥がさえずるような...。
私は、複数の自律的なオブジェクトが、互いに影響し合うことを作品にしています。オブジェクトは非均質(あるいは異種)で、プログラム内部のものから、物理的なデバイス、体験者までをも含みます。それらがどう関係するかで、何になるかが決まります。
テクノロジーを使った表現や、メディアという伝える手段をどのように考えて創作されていますか?
アーティストは、その時代の歪みや可能性を敏感に捉え、暴くという営みを続けてきました。数々の表現から、我々はそれらにリアリティをもち、世界の認識を変え、現在に至ります。これからもそうでしょう。
本作では、あらゆる事象が同時多発的・自律分散的に起きると認識するネットワーク時代の現在、表現は離散的なリアリティの獲得へ向かわなければならないため、個の身体的経験に依存した作品思想や手法を拡張し、新たな領域を開拓する必要があると考えました。その代表的なモデルがネットワーク、ツールがコンピュータであり、私はこれらを用いています。
あなたが一番影響を受けた、人物や作品、出来事を教えてください。
一番というのはありませんが、所属しているラボに関わる人たち。(B-Lab in IDD / 彼らは極度の変態で、最高にクールです)
今後どのような作品を創作していこうと考えていますか?
未来に向かって展開していくようなインスタレーション。
時を開く表現は、人を魅了しうるかに興味があります(現代の表現は時を止めるものです)。あまり記憶に残らないものかもしれません。
あなたにとって「創作する」ということは何でしょうか?
私が動くと、世界は少し変わり、私も変わります。この関わりはやがてリズムを持ち、躍動し、世界に未知と可能性を生み出していきます。
![平成21年度[第13回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品 平成21年度[第13回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品](/festival/images/h1_jusyousakuhin2009.gif)










