作者の代表作となった『夕凪の街 桜の国』の第2弾ともいうべき作品。戦中の広島県の軍都、呉を舞台にした家族ドラマ。広島の漁師町に育ち絵を描くことが好きな浦野すずが主人公。呉の高台の町に住み海軍で働く北條周作へ嫁ぎ、新しい家族、新しい街、新しい世界に戸惑いながらも一日一日を確かに健気に生きていく物語。

こうの 史代
1968年生まれ。広島市出身。1995年『街角花だより』でデビュー。主な著作は『夕凪の街 桜の国』(第8回文化庁メディア芸術祭大賞・第9回手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)新生賞受賞)、『さんさん録』、『長い道』、『ぴっぴら帳』、『こっこさん』など。
『この世界の片隅に』は、本当に難しい作品でした。ただ平穏に日々を送ることの尊さを思いしらされながら、全力を賭して描ききりました。連載中は〆切は守れないわ、人気は取れないわで、編集さんと題材に対して申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、昨年審査委員会推薦作品に選んでいただいたこと、今回優秀賞をいただいたことがどれだけ心強かったかわかりません。
この作品に、この世界で居場所を与えてくださって、本当にありがとうございます!
小さくて少し抜けているけれど、いたってまともで優しくて愛おしい主人公すず。主人公の個性は、そのままこの作品の魅力だ。すずは初めて会う男に望まれて海軍の街、呉にお嫁にいく。主人公に導かれ、日本がかつて戦争をしていた日常へとタイムトリップすると、そこは知らないはずなのに妙に懐かしく、貧しいのに豊かで、降りかかる運命は過酷なのに、自然でほのぼのとした清々しい世界。リアルな戦中を舞台にした作品なのに、思想的ではなくみごとに普遍的で、誰もがときめくことができる少女マンガになり得ているところに驚嘆した。今日の物差しで測るのではなく、丹念に調べ丁寧に描き、この時代を受け入れ、なおかつマンガの魅力や冒険に満ちている。作者の創作に対する揺るぎない姿勢が、これを可能にした。心を込めて毎日を生きるって、なんて尊くてステキなのだろうと思わせてくれる、何度も読み返したい名作である。
「作品をつくりたい」と思ったのは、どんなことがきっかけでしょうか?
あまりマンガを読ませてもらえない家庭だったので、自分で描けば買わずに済むな…と思って描きはじめました。
現在、おもに使用している創作ツールは何ですか?
Gペン、墨汁、マンガ原稿用紙です。今回の受賞作には、その他、鳥の羽や口紅なども使って描いてみました。
作品に対して、最も重視されているところはどこですか?
読後感のよさ、でしょうか。1度しか読めないのは紙がもったいないので、何度も読みたくなるものを、と心がけて描いています。
創作活動を通して、持ちつづけているテーマは何ですか?
少々嘘っぽくても、明朗でまともな世界を示していければ、と思っています。
テクノロジーを使った表現や、メディアという伝える手段をどのように考えて創作されていますか?
いろいろ試してみたいと思っているのですが、今までのやり方でじゅうぶん楽しいので、なかなか挑戦できませんね…。
あなたが一番影響を受けた、人物や作品、出来事を教えてください。
ひとつには絞れません! が、ひとつひとつの作品には、それぞれ拠りどころとなる出来事があります。今回の作品では、亡くなった祖母の言葉や表情の記憶が、わたしを支えてくれました。
今後どのような作品を創作していこうと考えていますか?
明るく楽しいものを描いていきたいです! なんかわたしは悲しい話しか評価されないんですが…。気にせずがんばります!
あなたにとって「創作する」ということは何でしょうか?
わたしに似ただれかに手紙を書くようなものです。
![平成21年度[第13回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品 平成21年度[第13回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品](/festival/images/h1_jusyousakuhin2009.gif)









