平成21年度[第13回]文化庁メディア芸術祭 フェスティバルレポート

技術とアートの融合による新しい表現

科学と文化の融合を目指す研究者やアーティストの創造的な試みを展示する、先端技術ショーケース。今年は「未来のアート表現のために」をテーマに掲げています。最先端の科学や技術がアートやエンターテインメントと結びつくことで、先端技術とアートの両方にとって新しい表現の可能性が生まれることを予感させる作品がそろいました。

Webカメラで撮影したスナップ写真の顔を自動で認識して、3Dのキャラクターを生成する『Active Snapshot』。キャラクターの横顔が自動でつくられることに驚き、それが歌いだしたりするコミカルなようすには笑ってしまいます。 『PVLCプロジェクタ』は、指定通りの色をブロックに投影できる作品。今後、これが公共の場所やビルのディスプレイなどで使われていくことを想像し、いかに先端技術が私たちの未来の生活に関わってくるのかを感じることができました。

自由な発想で、今後のメディア芸術を予期させる

今年で15回目となる学生CGコンテストは、若い才能の発掘を目的としています。今回も、静止画、インタラクティブ、動画の3部門で合計1,173作品の応募のなかから選ばれた優秀作品が展示されました。

光を当て、高速回転させた紐を触ることでろくろのようなオブジェに見せる『Rokuro-2』(加藤良将)。触ることで起こる光と色との変化が、まさに光の彫刻という名にぴったりです。いつまで見ていても飽きないといった感じで、作品が置かれているスペースは、アーティストによる作品の説明と体験を待つ多くの人でにぎわいました。

優秀作品のなかには、第13回文化庁メディア芸術祭の審査委員会推薦作品にも選ばれたものもあります。インタラクティブ部門最優秀賞の『Urbanized Typeface: Shibuya08-09』もそのひとつ。渋谷の町をキャンバスにフォントを描き、その軌跡が写真で表されている作品で、見た人がそれを追体験することで、作品とのインタラクションが生まれていきます。

“学生”という枠に収まらない、新鮮な発想と視点で制作された展示作品の数々はこれからのメディア芸術の可能性を感じさせました。今後もここからメディア芸術祭の入賞者が生まれていくことでしょう。

学生ワークショップで広がる次世代のデジタル表現

去年にひきつづき、学生を対象にしたワークショップとしてMV(ミュージックビデオ)制作が実施されました。プロデューサーの寺井弘典氏とディレクターの木津裕史氏を講師に、2泊3日の合宿の下、2~3人が一組になり、寝る間も惜しんで映像制作に勤しみました。課題はOmodakaさんによる楽曲提供という豪華な内容。会期中の2月11日には、課題作品の発表もあり、刺激的なイベントとなりました。多くの学生がデジタル編集のおもしろさを体感し、充実したワークショップとなったようです。新たな映像作家の誕生に、期待しています。

メディアアートの本質を探る貴重なシンポジウム

メディア芸術祭の受賞者と審査委員による「受賞者シンポジウム」では、受賞作品がつくり出された背景やコンセプト、制作秘話などが語られ、個性あふれる登壇者の話に、真剣に耳をかたむける観客の姿が見られました。「テーマシンポジウム」では、メディア芸術の現場の第一線で活躍中のアーティスト、キュレイター、研究者らが参加。時に熱い議論が交わされ、白熱したセッションになりました。いずれもメディア芸術祭ならではの内容に観客も興奮していました。また、特に休日のシンポジウム会場は満員となりました。

アーティストとの距離が近かったプレゼンテーション

会場入ってすぐ左のプレゼンテーションステージでは、会期中毎日3~5つのプレセンテーションが行なわれていました。受賞作家による作品の発表から、海外のメディア芸術祭のディレクターによる海外フェスティバルの紹介、メディアアートとは何かについてのプレゼンテーションまで、幅広い内容となっていました。特に、2月7日の「ART Apps Collection」は、休日ということもあり、通路部分に人がはみ出すほどの盛況ぶりとなりました。 また、受賞を記念してエンターテインメント部門大賞の『日々の音色』のSOURのライブと、制作者である、ナカムラマギコ氏、中村将良氏、川村真司氏、Hal KIRKLAND氏による座談会形式のプレセンテーションも行なわれ、制作の裏話に観客は感心している姿が見られました。

メディア芸術とは何かについて考えたフェスティバル

過去最高の来場者数を記録し、大盛況だった第13回文化庁メディア芸術祭。人間と自然のあり方について考えさせられるアート作品から、実際に体験して楽しめるエンターテインメント作品、物語に涙するアニメーションやマンガ作品まで、高いクオリティと柔軟な発想をもつ数々の作品は、ジャンルを横断するメディア芸術祭ならではのラインナップで、"メディア芸術とは何か"を体感できるライブなフェスティバルとなりました。展示に加えてさらに、上映、シンポジウム、プレゼンテーションなどさまざまな催しがあり、何度訪れても、違った楽しみ方があったのではないでしょうか。これからもますます盛りあがっていくメディア芸術祭。来年はどんな作品が選ばれるでしょうか。ぜひご期待ください。

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