過去の海外の展開

文化庁メディア芸術祭 シンガポール展 レポート
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メディアアート、ゲーム、アニメ、マンガで日本文化を紹介

2008年11月22日から12月14日まで、「文化庁メディア芸術祭 シンガポール展 2008」(Japan Media Arts Festival in Singapore)を国立シンガポール美術館の新設棟8Qsamで開催しました。メディア芸術祭としては2002年の北京展、2007年の上海展に引き続き、3回目の海外展です。
会場となった8Qsamは8月にオープンしたばかり。既存の領域にとらわれない多様な作品を展示するための空間で、まさに今回の展示にふさわしい場所と言えるでしょう。

日本のメディア芸術の3つの特徴をとらえた作品展示

文化庁メディア芸術祭シンガポール展のテーマは“GROWING TOGETHER”。メディアアート、ゲーム、アニメ、マンガといった日本のメディア芸術を体系的に紹介することにより、日本文化への理解を促すとともに、アジアにおける文化的な共生を考えようという試みです。

展示は、メディア芸術祭の11年間の歴代受賞作品から「洗練」「融合」「ものがたり」といった3つの特徴をゾーンごとのテーマとして構成、展示を行ないました。

[ ZONE1 ] 洗練 Sophisticated Craftsmanship

ゾーン1の会場に入ると、CG映像『安重』(大場康雄)、インタラクティブアート『青の軌跡』(鈴木太朗)、『松林屏風図』(長谷川等伯)の3作品が目に飛び込んできます。表現の手法も制作された時代も違いますが、どの作品も自然の美しさを繊細に表現されています。本展覧会を象徴するシーンのひとつです。

会場を進んでいくと本展覧会のキービジュアルを作成された永戸鉄也氏の『I AGAINST I』や、数理モデルをモチーフにした『Imaginary・Numbers 2006』(木本圭子)、『BOTECH-art』(村山誠)が並びます。映像作品としては『ピカピカ2007』(ナガタタケシ+モンノカヅエ)、『ISSEY MIYAKE A-POC INSIDE.』(佐藤雅彦+ユーフラテス)が上映され、作品の前に、多くの方々が興味深く足を止めていました。

マンガ展示では『バガボンド』(井上雄彦)、『のだめカンタービレ』(二ノ宮知子)、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(安彦良和)を作品パネルと原画などで紹介。日本のマンガの源流とでもいうべき『鳥獣人物戯画』や『北斎漫画』、『宮本二刀流伝寶録』も展示し、日本の歴史あるマンガ文化に触れられるスペースとして賑わいました。

[ ZONE2 ] 融合 Interactive Trans-Fusion

ゾーン2ではアートとテクノロジー、アートとエンターテインメント、デジタルとアナログ、立体造形とストーリーなど、表現のなかでさまざまな要素が複合的に交差・融合している作品を展示。
フェルメールの絵画空間のなかに没入できる『メディアアートの寓意』(津島岳央)や、幽体離脱したように自分自身を見ることのできる『浮遊する視線』(岩田洋夫)、ゲーム的要素をもったメディアアート作品『Duper/Looper』(クワクボ・リョウタ)や『OLE Coordinate System』(藤木淳)のほか、自分自身とホッケーゲームで対戦する『through the looking glass』(筧康明+苗村健)など、体験する来場者の楽しむ姿が見られました。

マンガやアニメとメディアアートをつなぐ作品として、フィギュアをつかった『バンド・スキュルテ~プラネット・サムライ』(夏坂眞一郎)、『大天使』(岸啓介)、『カミロボ・ファイト』(安居智博)などを展示。
またこのゾーンでは、インタラクティブ性を有したフィギュア作品の源流ともいえる「からくり人形」も参考資料として展示しました。

[ ZONE3 ] ものがたり Narrative Images

ゲーム、マンガ、短編アニメーションなどによって、ものがたりの多様性や、その手法についても紹介するゾーン3。ゲームで遊んだり、英語版と中国語版のマンガを読んだり、ミニシアターで映像作品を観たり、週末は子どもから大人まで多くの人で賑わっていました。

多彩なシンポジウム、セミナーを開催

また、本展覧会に合わせて、3つのシンポジウムやセミナーを開催しました。初日の11月22日には、出展アーティスト6名が出演するシンポジウム「The Power of Expression」を開催。セッション1の「デバイス・アート・シンポジウム」では、岩田洋夫氏、クワクボ・リョウタ氏、鈴木太朗氏が出演し、映像や画像を交えながらプレゼンテーションを行ないました。

セッション2「フィギュア・アート・シンポジウム」では岸啓介氏、夏坂眞一郎氏、安居智博氏により、作品の背景にある世界観や、立体造形の制作過程などが紹介されました。各セッションの後の質疑応答では、来場者から熱心な質問がアーティストに向けられ、日本のメディア芸術に対する興味の深さが伺えるシンポジウムでした。

11月23日には、アジア文明博物館において青木保・文化庁長官による基調講演と文化セミナー「グローバル時代における日本とシンガポールの文化交流」が日本大使館の主催により開催され、日本とシンガポールの文化交流について語りあわれました。

さらに12月12日にはSIGGRAPH Asia 2008とメディア芸術祭の連携シンポジウム「アジアにおけるアートとテクノロジーの融合」を開催。SIGGRAPH Asiaの3名の議長などにより、各国のメディア芸術の状況やアートとテクノロジーの将来性について議論が交わされました。

劇場公開アニメの上映会

文化庁メディア芸術祭 シンガポール展 2008では、毎週金曜日に劇場公開アニメーションの上映を行ないました。11月28日は『千年女優』と『マインド・ゲーム』、12月5日は『冬の日』と『もののけ姫』、12月12日には『河童のクゥと夏休み』を上映。いずれもメディア芸術祭の大賞受賞作品です。会場は毎回ほぼ満員となり、笑いと涙に包まれていました。

展覧会終了にあたって
シンガポール美術館キュレーターのTan Siuli氏は、展覧会を振り返って次のように語ってくれました。「日本のポップカルチャーは多くのアジア諸国で大人気となっており、それはここシンガポールでも例外ではありません。この展覧会は、世界中の人々のハートとマインドを射止めた日本の『ソフトが持つ力』を見事に展示していますし、創造性や文化交流という点でも重要な機会でした。特にシンガポールでは、クリエイティブ産業がようやく飛躍しはじめたこの時期だからこそ重要だったと思います。」

今回の展覧会を通してシンガポールの人々の反応を見ていると、日本のいまの文化がいかに海外に受容される“表現力”を有しているかを強く感じることができました。これは、世界を席巻するアニメーションやゲーム、マンガのみならず、メディアアートの分野においても言えることでしょう。24日間の会期で24,401人の来場がありましたが、これは日本のメディア芸術への関心度の高まりの証だと思われます。

また、来場者アンケートでは2,122件もの回答をいただきましたが、「企画内容」「作品の見やすさ」「解説のわかりやすさ」「スタッフ対応」「全体的な満足度」の全項目にわたって、「とてもよい」と「よい」の合計が80~90%にも達し、とても高い評価をいただくことができました。今回の経験を日本のメディア芸術の発展に活かしていきたいと思います。

CG-ARTS協会
脇本 厚司

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