海外フェスティバルレポート

Ars Electronica 2004 レポート

文化庁メディア芸術祭は平成9年度より日本国内で毎年開催しているが、平成15年度からは、メディア芸術全体の発展と世界への日本文化の発信に資することを目的として、海外メディア芸術祭への出展に関する支援事業を行っている。その一環として2003年から、アルスエレクトロニカでも文化庁メディア芸術祭優秀作品の上映会を行なっている。

開催地 オーストリア・Linz
開催期間 2004年9月1日(水)~9月7日(火)
参加概要 文化庁メディア芸術祭の優秀作品上映
URL http://www.aec.at/

今回は、2004年9月1日(水)〜9月7日(火)の期間、オーストリアのリンツに滞在し、同地で開催されるアルスエレクトロニカ2004の視察を行った。リンツはオーストリアでウィーン、グラーツについで3番目に大きく、人口は19万ほどの都市である。
アルスエレクトロニカは1979年に第1回が開催され、本年度は第25回目の節目を迎えるメディアアートフェスティバルである。今年のテーマは、「TIMESHIFT〜The World in Twenty Five years」(タイムシフト〜25年後の世界)というもので、人々が今までどのような発展を遂げてきたのか、また、今後25年間で芸術、技術、社会はどのような発展を遂げるのか、その観念は何なのかを探るというものである。
今回の視察の主な目的は、フェスティバルの様子を見ることはもちろんのこと、文化庁メディア芸術祭優秀作品上映会「Japanese Animation!」の実施、本年度(平成16年度)文化庁メディア芸術祭への応募促進活動、同フェスティバルの運営・実施状況の調査を行うということである。
以下に、今回の視察の概要を述べていきたいと思うが、今回の視察は、あくまで上記に述べた目的を中心においた視察であったため、必ずしも同フェスティバルの全てを網羅しているものではないこと、自分が同フェスティバル中に行った活動が中心となり、むしろそれに偏らざることを得ないことを最初にお断りしておきたい。また、表現等においても、メディア芸術の専門家の目から見たものではないということをあらかじめご容赦頂きたいと思っている。



まず各施設をまわり、9月3日(金)と9月6日(月)に行われる文化庁メディア芸術祭優秀作品上映会「Japanese Animation!」の宣伝チラシと、本年度の文化庁メディア芸術祭募集のリーフレットを施設内の机、カウンター、ラック等に置いて、なるべく多くの人の目にふれ、かつ手にとってもらえるように努めた。

アルスエレクトロニカの会場は、ブルックナーハウス、OKセンター、アルスエレクトロニカセンター等を中心としている。これらの会場のそれぞれをまわり、上映会のチラシ・募集リーフレットを置いていった。それとともに、会場で会った受賞者等にも直に渡し、文化庁メディア芸術祭のPRと応募の働きかけを行った。リンツに滞在中の5日間、毎日各施設をまわり確認したが、かなり減りが早く、多くの人がチラシ、リーフレットを持っていったことが想像できた。こうした応募促進活動を行うとともに、併せて展示作品の見学も行った。

■OKセンター

OKセンターは、展示やワークショップなどを通じて、芸術活動を探っているコンテンポラリーアートの施設である。ここでは、Prix Ars Electronicaの受賞作品を展示しているCyber Arts 2004と、19歳以下の応募者が作成した受賞作品の展示「u19 freestyle computing」が行われていた。
今回のPrix Ars Electronicaには、85ヶ国から3,341作品の応募があった。ここに展示されている作品を見ていくにつれ、アルスエレクトロニカでは表現や技術の高さでの評価ではなく、そのような技術や表現を通じて、社会にどういう影響をあたえるのかというメッセージ性を強く持った作品が多く選ばれていることが肌で感じとれた。

■アルスエレクトロニカセンター

アルスエレクトロニカセンターは、未来的な技術を市民に開放するという概念に基づいて1996年に設立され、海外アーティスト達の作品の展示などを通じて、市民とアートとの接点となっているセンターである。第5回メディア芸術祭デジタルアート[インタラクティブ]部門大賞受賞作品である「突き出す、流れるや、第6回同部門優秀賞受賞の「type R」の作者、柴田知司氏らによる新作「Moony」も展示されており、多くの人が集まり興味深そうに見ていた。話によれば、このセンターはリンツの小学校等の社会科見学にも組み込まれているという。また、現地の人であろうか、お年寄りの方もかなり多く見受けられた。子どもたちが実際に多くのレベルの高いメディア作品に触れて体感し、楽しんで興味をもつようになっている点やお年寄りなどにも気軽に来場してもらいやすい環境作りをしている点は大変素晴らしいと感じた。
また本年度はIAMAS(情報科学芸術大学院大学/国際情報科学芸術アカデミー)が参加しており、彼らの作品もLinz’s University of Art(リンツ芸術大学)構内に展示されていた。今年は総勢90人もの人数で参加したという。ここでも様々な工夫を凝らした作品が展示されており、やはり多くの人々が来ていて、展示作品を学生が身振り手振りで一生懸命説明している姿も印象的であった。

■「Japanese Animation!」(メディア芸術祭上映会)
9月3日(金)の文化庁メディア芸術祭優秀作品上映会は現地時間の21時からであった。日本で評価された作品が海外でどのような評価を受けるのかということとともに、どのような場所でどのように上映されるのかということを確認することは、様々な意味で重要であると思っていたので、この上映会は大変興味のあるものであった。別会場のブルックナーハウスで行われていたPrix Ars Electronica Award Ceremonyが延びていたため、集客を少し心配したが、時間の少し前に会場のハウプト広場に観客が集まり始めた。上映も20分ほど遅れて始まり、上映開始時には400人以上もの観客が集まっていた。全部で12作品上映され、作品ごとに大きな拍手が起こり、「スキージャンプ・ペア オフィシャルDVD」など、作品によっては笑い声が起こるものもあり、全体として好評を博した。
メディア芸術祭の優秀作品上映は昨年に続き、今回で2回目になる。アルスエレクトロニカのディレクターであるゲルフリード氏にも感想を聞いたが、作品の質や内容についても非常に高く評価されているようで、来年以降も続けていくことになっている。また、文化庁メディア芸術祭とアルスエレクトロニカの間で相互協力をしていく予定である。
■まとめ

アルスエレクトロニカは、アメリカの「SIGGRAPH」が学術的側面が強いいわゆる理系のフェスティバルであるのに比べ、文化芸術の側面が強いいわゆる文系のフェスティバルであるといわれる。
そのためか、シンポジウム等でも、詳細な技術的な面からの話や、先端技術の発表のようなものは少ない。その反面、科学技術と芸術との関係、科学技術や芸術の社会との関わりについては、様々な角度で論じられている。
今回の視察で実際に展示作品を見ていくにつれ、メディア芸術作品が現代の社会や世相を表現する媒体としての一翼を担っていることが改めて強く感じられた。
ただし、今回のアルスエレクトロニカのコンピュータアニメーション部門の受賞作品の多くは、「SIGGRAPH」と重なっていて、各々の独自性が見えにくくなっているように感じた。文化庁メディア芸術祭にしても国際化を進めていくと、同様の問題に直面することが考えられる。他の有力なフェスティバルと異なるものとして文化庁メディア芸術祭を成り立たせていくためには、日本独自の評価軸を今まで以上にしっかりと持たなければならないこと、また、同時にこれらのフェスティバルとは異なる、これが日本のメディア芸術祭であると誰もが思うような内容をしっかりと確立して、運営・実施していかなければならないということも同時に強く感じた。
今回、アルスエレクトロニカで行った活動を通じて、メディア芸術祭に海外から多くの応募があることを大いに期待しているが、やはり日本国内からもそれに負けない優秀な作品が集まることを期待したい。また、今後とも海外フェスティバルとの協力関係を広げることで、日本の優れた才能や作品を積極的に紹介していきたいと考えている。

伊藤 進吾(いとう しんご)

文化庁文化部芸術文化課

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