左:ミュージアム・クォーター・ウィーン概観 右:ミュージアム・クォーター・ウィーン中庭
| 開催地 | : | オーストリア・ウィーン |
| 会場 | : | ミュージアム・クォーター・ウィーン |
| 開催期間 | : | 2009年5月27日(水)〜6月7日(日) |
| URL | : | http://codedcultures.com/ |
■CODED CULTURESとは?
オーストリアの首都ウィーン。かつて、栄華を誇ったハプスブルク家が治めたオーストリア帝国の都であったこの地は、多くの音楽家を生みだしたことで知られる。19世紀末には、音楽のみならず、芸術全般において爛熟した文化が世界から注目を集めた。
CODED CULTURESとは、文化とデジタルメディアをふまえた新しい表現や創造の可能性を提示するアニュアルイベント。オーストリアを中心とするヨーロッパと、毎年異なるパートナー国からアーティストや研究者が集い、開催されている。今年2009年は日本オーストリア修好140周年にあたり、さまざまな交流・記念イベントが開催されていて、CODED CULTURESもそのひとつ。そして10月にはウィーンに続いて横浜でも開催される予定だ。
今回の上映会場ミュージアム・クォーター・ウィーン(MQ)は、街の中心にあるオペラ座から徒歩10分。近年、日本で人気の高い画家フェルメールの傑作『絵画芸術』を所蔵するウィーン美術史美術館のななめ向かいに位置し、ウィーンのなかでも特に文化的薫りが漂うエリアにある。会場の前にある大きなサインには白地にオレンジ色のMQロゴが書かれており、それが青空に映えて印象的だ。18世紀には宮廷のための厩舎として使われていたこの建物は、2001年に美術館、カフェ、ショップなどが集まった複合文化施設としてリニューアルオープンした。毎年夏には、「MQサマー」と称して中庭にオリジナルデザインのリラックスチェアが特設され、夜遅くまで、たくさんの人が集い、楽しんでいる。
■展覧会には日本から6組のアーティストが参加
5月27日から6月7日までの約2週間の会期中、ミュージアム・クォーター内のクォーター21と呼ばれるオルタナティブスペースを中心に、展覧会、シンポジウム、レクチャー、ライブイベントが開催された。展覧会はクォーター21の東側のFrairaumと呼ばれる細長い会場で開催され、日本からの6組を含む11組のアーティストの作品が展示された。

Frairaum入口

参加作家が一同に
会場中央にある、8枚の3メートルのスクリーンに、機関車のスライスを映しだすSHIMURABROS.による『X-RAY TRAIN』が目を引く。映画の父といわれるリュミエール兄弟が、当時、観客を驚かせた汽車が迫ってくる映像の迫力を、現代的手法を用いて3次元で表現しているのがこの作品だ。光を放つ機関車は美しく幻想的に見える。
その横には、ロール紙の巨大なMの文字がある。これは毛利悠子の『THE EXECUTION OF MARY』だ。プリンターから出力されたロール紙の印字部分にセンサーが反応することで、左右に吊り下げられたオブジェ(オーストリアと日本で集められた日用品でつくられている)が動き、音をつくりだす。その音はアンプを通じて、まるで唸るように会場に響く。「紙が黒ければ黒いほど、音は大きく、そして迷惑な騒音のようになる」と作者は楽しそうに話す。

SHIMURABROS.『X-RAY TRAIN』

毛利悠子『THE EXECUTION OF MARY』
その音とは対照的に、軽快なカシュカシュといった音を奏でる作品が展示されている。斉田一樹+三原聡一郎+むぎばやしひろこによる『moids2.0』は、不思議な音を立てながら、まるで呼吸をするかのように光をともす。作品を構成する数百の音響デバイスにはひとつひとつに音を取りこむマイクとスピーカーが仕組まれている。その各々が会場内の音を拾い、そして反復し、不思議な音を響かせている。むき出しになっているデバイスが、シナプスや生命体を連想させ、光と音と調和で有機的な印象を受ける作品だ。
今回は、第7回文化庁メディア芸術祭で推薦作品に選ばれたエキソニモも参加している。出展したのは、コンピュータのマウスが、砕かれ、水にさらされ、猫のえさに混ぜられ、まさにマウスの断末魔(だんまつま)を表現している作品『断末魔ウス』。参加者が映像をマウスで選択して見ることができるという鑑賞方法も、皮肉たっぷりといったところだろうか。

斉田一樹+三原聡一郎+むぎばやしひろこ『moids2.0』

エキソニモ『断末魔ウス』
会場奥には、第7回メディア芸術祭アート部門大賞に輝いたクワクボリョウタのメディアアート作品もあり、年代物の木枠つきのガラスケース内に展示されている。それはまるで博物館の展示品のようにみえ、とてもおもしろい。現在日本科学未来館で開催中の個展(日本科学未来館3階メディアラボにて、「クワクボリョウタ:微笑みトランジスタ」〜2009年9月28日まで)とは異なり、残念ながら、実際触ることはできないが、ケースに陳列された作品はオブジェとして美しく親しみやすい印象を受ける。
ケースの向かいには、ガラスの扉のついた一室があり、ここでは、ウィーンでアーティストインレジデンスをしている梅田哲也のインスタレーションが展開されている。空気がぽこぽこと、ガラスシェードの水を取りぬけている向こうでは、ゆらゆらと黄色風船がモップに近づいたり、離れたり、と思えば手前の時計がころころと回る。そして突然暗くなる空間。かと思えばすぐに眩しいほどの光で展示室が満たされる。身近な素材の単純な動きは、実は非日常的で目が離せない。31日は梅田氏のライブも開催された。

クワクボリョウタ『BITMAN』や『PLX』の展示風景

梅田哲也によるインスタレーション
■特設会場ではメディア芸術祭の作品を上映
展示空間に繋がる情報スペースを越えると、メディア芸術祭第11回映像作品プログラムを上映中のネット・カルチャー・スペースがある。
作品を上映したのは約2メートル×3メートルの巨大スクリーンで、外からもガラス越しに見ることができた。しかも、今回の16作品はそれぞれが個性的でインパクトが強いシーンが多いため、どの作品も通りがかりの来場者の目を引いていた。また、フランツ・カフカの作品の世界観を表現した山村浩二の『カフカ田舎医者』は、狂言師による日本語のナレーションでストーリーが進行する作品。そのため、英語の解説を用意し、来場者が手に取れるようにした。

開催告知ポスターが掲出された上映会場概観

上映風景
■オープニングとシンポジウム

オープニングのようす
イベント初日である27日19時からはオープニングレセプションが開かれた。このオープニングは、関係者だけでなく、一般に開かれていたということもあり、狭い会場は人で埋めつくされていた。参加者はアーティストを見つけては作品について感想を述べたり、質問をしたり、写真をとったり、おもいおもいに楽しんでいた。長い伝統や格式にあふれた町並みのウィーンに、異質とも思えるデジタルデバイスを用いた作品は、参加者の好奇心を掻きたて、オーストリアと日本そして変化する時代を、いとも簡単に埋めているように感じられた。メディア芸術祭上映作品も楽しんでもらえるだろうと実感した。
28日からはアーティストによるシンポジウムと、専門家によるプレゼンテーションが行なわれた。14時からのシンポジウムにはクワクボリョウタ、毛利悠子、そしてオーストリアの参加作家Lodic Societyが今回の展示作品にまつわるプレゼンテーションを行なった。作品スタイルがまったく異なる3者によるプレゼンテーションの仕方が、それぞれまったく違うのが興味深かった。続く質疑応答では、熱心な参加者が多く、本質をつく質問が寄せられた。
続いて19時からは、過去にメディア芸術祭の審査委員を務めたこともある早稲田大学の草原真知子教授による基調講演『Device Art-Convergence of art, design, technology』が行なわれた。昨今のデバイス・アート事情などを含め、出展作家のクワクボリョウタや明和電機の作品を貴重な映像とともに紹介し、日本のデバイス・アートの現状を伝えた。本ウェブサイトでも関連内容を同氏に寄稿いただいているので参考にしてほしい。
http://plaza.bunka.go.jp/museum/archives/5minutes/200509/index.php

シンポジウムのようす

草原真知子教授の講演
会期中には、横浜国際映像祭2009のディレクターである住友文彦氏、2009年度のメディア芸術祭の審査委員を務めるNTTインターコミュニケーション・センター[ICC] 特別学芸員の四方幸子氏によるプレゼンテーションも行なわれた。
草原氏の基調講演終了後、ミュージアム・クォーターに程近いイベントスペースでウェルカムパーティーが開催された。関係者100名以上が集うなか、今回のCODED CULTURESのパートナーとしてメディア芸術祭が紹介され、スピーチをする機会をいただいた。そこで、7月16日からいよいよ始まる第13回文化庁メディア芸術祭への作品応募など、今後の活動を告知した。今回のイベント参加を通じて、文化庁メディア芸術祭の周知に大きな手ごたえを感じることができた。
細川 麻沙美(CG-ARTS協会)




