

海に面する北東ヨーロッパの国家、バルト三国のひとつであるラトビア共和国にて、現代美術とビデオアートのフェスティバルが開催されました。非営利団体であるNOASSが主催するふたつのフェスティバルで、「文化庁メディア芸術祭」の上映とプレゼンテーションを行なってきました。
| NOASS VIDEO ISLAND Contemporary Culture Forum WHITE NIGHT | ||
| 開催地 | : | ラトビア共和国・リガ |
| 会場 | : | AB dambis |
| 開催期間 | : | 2008年8月30日(土)・8月31日(日) |
| URL | : | http://www.noass.lv/ |
| WATERPIECES 2008 International Video and Contemporary Art Festival | ||
| 開催地 | : | ラトビア共和国・リガ |
| 会場 | : | Art centre BETANOVUSS |
| 開催期間 | : | 2008年9月2日(火)〜9月7日(日) |
| URL | : | http://www.noass.lv/ |
■東欧ではじめての「文化庁メディア芸術祭」の作品上映が実現

ラトビアの首都リガには「NOASS」という文化振興のための非営利団体があります。ギャラリーや上映のための施設を持ち、アーティストに対してさまざまなサポート活動を行なうとともに、新しい文化芸術を育成しようとしています。テクノロジーや新しいメディアを表現に取りいれることに対しても積極的で、メディアアート領域にも力を入れており、「WATERPIECES」というビデオアートのフェスティバルを開催しています。また、フェスティバル開催に先駆けて、一夜限りの大規模なアートイベント「THE WHITE NIGHT」も行なっています。
ここ数年、ラトビアからの文化庁メディア芸術祭への作品応募も続いていますが、今回、NOASSからの招聘によって、メディア芸術祭としては、ラトビアはもとより東欧でのはじめての上映が実現。アート映像だけでなく、CM、ミュージックビデオ、CG、アニメーションなど、さまざまな文化領域を横断する日本の映像作品を紹介しました。
■一晩だけのメディアアートイベント 「THE WHITE NIGHT」

8月30日の夜から31日の早朝にかけて行なわれた、現代美術フォーラム「THE WHITE NIGHT」。フォーラムと名づけられているので、会議やシンポジウムが中心だろうと想像していましたが、映像フェスティバルや音楽イベント、パフォーマンス、メディアアートやビデオインスタレーション展示など、約20のイベントが市内各地で繰りひろげられ、まるで一夜限りのメディアアートフェスティバルのようでした。
ラトビアは緯度が高いので21時近くまで外は明るく、イベントは18時くらいから少しずつはじまりますが、多くは21時過ぎからスタートします。盛りあがるのは0時を回ってからで、朝の4時、5時まで続くイベントもありました。9月1日から新学期がはじまるので、夏休みの最後に街をあげて盛りあがろうといったところでしょうか。
下の写真は国立オペラハウスの前で行なわれていた「KLUSA DABA」という音楽イベント。DJの音楽に合わせて、オペラハウスの正面壁面に映像が投影されていました。



そして、このWHITE NIGHTの中心となるのが「NOASS VIDEO ISLAND」という映像イベント。河川敷に4つのスクリーンが設けられ、セルビア、エストニア、リストニアのビデオアート作品と、文化庁メディア芸術祭の映像作品が上映されました。
第11回文化庁メディア芸術祭のアート部門、エンターテインメント部門、アニメーション部門の中から19点の映像作品を紹介。時折雨が降るという状況にもかかわらず、若者中心に多くの観客が集まり、上映は朝の4時まで続きました。
メディア芸術祭上映のもよう
時折、雨が降る中でも熱心に見入る観客
夜明けまで続く上映
セルビア、エストニア、リストニアのプログラム上映も、すべては見ることができませんでしたが、それぞれのお国柄が出ていて興味深いものでした。メディア芸術祭では、さまざまな国で作品紹介をしていますが、作品への反応は国によって異なります。この夜の上映では、4つのプログラムのなかでもメディア芸術祭にいちばん多くの観客が集まっていたことは素直にうれしかったです。エンターテインメント部門の作品の上映で大きな笑いがおきたことも印象的でした。
■ビデオアートフェスティバル 「WATERPIECES」
WATERPIECESの会場入り口
9月2日から7日まで開催された、ビデオアートのフェスティバル「WATERPIECES 2008」は、今年で8回目を迎えます。フェスティバル全体は、ビデオアートの国際コンテストや展示、上映会、シンポジウム、音楽イベント、ワークショップなどによって構成されています。
コンテストはラトビア、エストニア、リストニアのバルト3国を対象にしており、会期中にノミネート作品が展示され、最終日に受賞作品が発表されます。規模は決して大きくはありませんが、ノミネート作品はレベルの高いものばかりでした。
また、海外の有力作家の招待展示なども行なわれており、今回はヤープ・デ・ルイグ氏によるビデオインスタレーション『Spliid versus spliid』が展示されていました。ヤープ・デ・ルイグ氏は1957年オランダ生まれで、ヨーロッパを中心に活躍しているビデオアーティストです。
オープニングでの演奏
地下展示室のようす
インスタレーション展示
9月2日のオープニングにはアーティストやクリエイターたちが多数集まり、ノミネート作家への表彰などが行なわれるなか、文化庁メディア芸術祭の紹介と映像作品の上映を行ないました。また、会期中も特別プログラムとしてメディア芸術祭の映像作品を上映。来場者に日本の作品に対する感想を聞いたところ、「いずれの作品も完成度が高く、洗練されている」「カット割りや構図など、映像に対するつくり手側の視点がまったく違う」などという意見がありました。
メディア芸術祭上映のようす

ラトビアは、第一次世界大戦後の1918年に独立しますが、冷戦時代の1940年にソビエト連邦に併合され、 1991年にようやく再び独立を回復したという背景があります。そのような歴史があるからこそ、ラトビアの人々は、“「国」というのは国境という地理的なことだけではなく、自分たちの言葉や文化こそが形成するのだ”という意識を強く持っています。この意識が、ラトビアがNOASSによるフェスティバルやイベントなどを通じて新しい文化の育成に熱心であることの、いちばん大きな理由ではないかと強く感じました。
阿部 芳久(CG-ARTS協会)




