
左:ロッテシネマSICAF会場 右:ソウル市内の風景
韓国が、積極的にアニメーションやマンガ、ゲームなどの文化産業に取りくんでいることはよく知られているが、このジャンルのフェスティバルも盛んに開催されている。
そのなかでも最大級のフェスティバルが、「SICAF2008(Seoul International Cartoon & Animation Festival)」である。今年も5月21日から25日までソウル貿易センター(SETEC)とロッテシネマで開催された。
CG-ARTS協会ではSICAFと協力関係を結び、2004年から「文化庁メディア芸術祭」の優秀作品を紹介している。今回も、アニメーション映画祭の正式プログラムとして、平成19年度(第11回)文化庁メディア芸術祭の映像作品を上映した。ここでは映画祭と展示会を中心に報告したい。
| 開催地 | : | 韓国・ソウル |
| 会場 | : | SETEC、ロッテシネマ |
| 開催期間 | : | 2008年5月21日(水)〜25日(日) |
| URL | : | http://www.sicaf.or.kr |
■映画祭と展示会のふたつの顔を持つSICAF
開幕式のようす
SICAFは、アニメーション映画祭とアニメーションやマンガの展示会、そして作品制作のためのプロモーション(SPP)の3つの分野から構成されている。世界のアニメーション関連のフェスティバルを見ても、同一フェスティバルで映画祭と展示会を同等の規模で行なっているところは少なく、これがSICAFの大きな特徴になっている。日本での例をあげると、東京国際アニメフェアは展示会がベースであり、広島国際アニメーションフェスティバルは映画祭中心のフェスティバルといえるだろう。
開幕式は、オセフンソウル市長や、SICAFの広報大使をつとめる女優のソ・ジへさんが出席し、盛大に行なわれた。以前、イ・ミョンバク大統領がソウル市長であったときにも出席していたので、ソウル市が、アニメーションやマンガに力を入れていることを感じさせられる。
■世界63カ国から1,307作品が集まるアニメーション映画祭

アニメーション映画祭は、ロッテシネマで開催。世界63カ国のクリエイターから応募された、1,307点にもおよぶ作品のなかから選ばれた、30カ国137作品を会期中通して上映している。国際色豊かな審査委員によって、最終日前日の夜に受賞作品が発表される。
長編部門では、『東京マーブルチョコレート』(塩谷直義/日本)が大賞を受賞。同作品は、少年と少女の心あたたまるロマンティックコメディ。塩谷直義監督はこれまで、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』や『鉄コン筋クリート』など多くの作品にたずさわってきたが、本作が初監督作品である。
短編・プロ部門の大賞は『The Pearce Sisters』(Luis COOK/イギリス)、短編・学生部門の大賞は『Red Rabbit』(Egmont MAYER /ドイツ)、テレビ&コミッションド部門は大賞がなく、特別賞として『Ernst in Autumn』(Michael SIEBER/ドイツ)と『The Horrors ’She is the New Thing’』(Corin HARDY/イギリス)の2作品が選ばれた。

そして、一番新しい部門である、インターネットアニメーション部門では、『Their Circumstances』(Ji-Hyun AHN/韓国、アメリカ)と『The charming but lonely Plantman』(Mi Young KIM/韓国)の2作品が受賞した。
今回の受賞作品の大きな傾向を見ると、長編アニメーションで日本が大賞をとったが、短編アニメーションではヨーロッパからの受賞が多く、インターネットアニメーションで韓国勢が健闘しているといえるだろう。
■注目される日本作品と、「文化庁メディア芸術祭」上映
アニメーションフェスティバルでは、賞のノミネート作品だけでなく、「SIGGRAPH」「バンクーバ・フイルムスクールコレクション」「ポーラーンドのアニメーション」「審査委員特別プログラム」など、多彩なプログラムが上映される。日本の作品である『FREEDOM』と『ストレンヂア』も大きく取りあげられ、5月22日には、『FREEDOM』の森田修平監督、24日には『ストレンヂア』の安藤真裕監督による講演も行なわれた。
韓国語版の日本マンガ作品
『FREEDOM』の森田修平監督
『ストレンヂア』と『FREEDOM』
「文化庁メディア芸術祭」の作品上映も、昨年に引きつづき実施。第11回文化庁メディア芸術祭受賞作品の短編アニメーションを中心に、SICAFとも協議して決めた12作品を『Japan Media Arts Festival Best』として上映した。文化庁メディア芸術祭の持つ多様性を伝えることに重点をおいた作品構成で、作家、内容、技法の3つの視点で幅ひろい多様性を示した。
22日の上映後には、文化庁メディア芸術祭や上映プログラムについて話をする機会があったが、本当に驚くほど多くの質問があがり、非常に積極的な韓国の若者たちの姿が印象的であった。
■韓国らしさを出そうとする展示会

SICAFの展示会場が現在のSETECに移ったのは3年前で、それまでは三成洞の中央に建つCOEXで展示会も映画祭も一緒に行なわれていた。当時は展示と上映を行ったり来たりできたのだが、いまは展示会場と映画祭会場がタクシーで20分くらいと離れているので、どうしても来場者が分散している。
そのようなこともあり、企業からの出展は縮小傾向で、巨大なスペースをとった華やかな企業ブースは見あたらない。いずれのブースも堅実に自社の作品を紹介している。SICAFの比較対象として、よく東京国際アニメフェアがあげられるが、企業出展という側面では比較にはならないだろう。
だが、展示がつまらないということではなく、さまざまな切り口で行なわれている企画展はとても興味深い。逆にセールスプロモーション的な部分が少なくなったので、韓国のアニメーションやマンガの歴史や現状について、以前よりも知ることができるようになっている。



今回行なわれていた企画展としては、故シン・ドンウ氏の回顧展『キルドンの帰還』、韓国マンガの99年の歴史を紹介する『100年を待つ99年』、都市公共デザインに漫画を取りいれた『マンガ都市−アンペルマンの外出』、寺田克也氏らによるデジタルイラストレーション展などが行なわれていた。メディアアート&マンガと名づけられた展示では、メディアアートを使った展示も試みられていた。
アニメーションの原理を体験できるワークショップなども多く、約1000冊の漫画を楽しめる「漫画図書館」や、韓国マンガ家によるサイン会も多くの人でにぎわっていた。
寺田克也らによるイラストレーション展
メディアアート的なマンガ展示
たくさんの人でにぎわうワークショップ
■まとめ
イベントの模様
韓国は、日本に比べて国内市場が小さいこともあり、おのずと世界を視野にいれざるをえない。これは携帯電話や液晶ディスプレイだけでなく、アニメーションやマンガにおいても同様であるようだ。SICAFも世界を強く意識したものになっている。映画祭では世界中から作品を集め、審査委員も国際色豊かな構成になっている。当然、選ばれる作品も国際色豊かにはなるが、アヌシー、ザグレブ、オタワ、広島といった、他のアニメーション映画祭との違いや特徴といったものが、わかりにくくなっているのではないだろうか。
展示会場
私自身は、韓国のフェスティバルには、韓国作品や韓国人作家を知りたいと思って訪問しているので、そのような立場から見ると、少々物足りないと感じることもあった。しかし、今回の映画祭の特別プログラムや企画展示のなかに、韓国の作家や作品をフォーカスしたものが増えてきているようなので、今後はもっと韓国の歴史に根ざした、特徴のあるフェスティバルとして成長してほしい。なぜならフェスティバルは、開催国の文化を表すものであるからだ。
細川麻沙美(CG-ARTS協会)




