海外フェスティバルレポート

SIGGRAPH 2004 レポート

2004年8月8〜12日、ロサンゼルスのコンベンション・センターにて、「SIGGRAPH2004」が開催された。SIGGRAPHは、アメリカで開催されるコンピュータ・グラフィクスとインタラクティブ技術についての国際会議である。今年で31回目の開催となる例年のSIGGRAPHを主催するACM SIGGRAPHは、ACM(the Association for Computing Machinery:1947年に創設された世界初にして最大のコンピュータ学会)の下部組織である。学術会議といえども、学会につきものの発表やセミナーばかりでなく、そこに展覧会・シアターから見本市までが加わっているという具合で、単なる学会にとどまらない規模と広がりを持っている。 

開催地 アメリカ・LA「コンベンション・センター」
開催期間 2004年8月8日(日)〜8月12日(木)
参加概要 ブース出展、優秀作品上映
URL http://www.siggraph.org/
     
ブース出展 「International Resource Center」
上映会 「Animation Theater」

7日から11日にかけて滞在し参加した同会議について、以下にレポートしたい。ただし、はじめにお断りしておきたいのは、文化庁メディア芸術祭のプロモートのために参加したことと、時間の制約があったため、SIGGRAPH本来の学術的な側面についてはほとんど取材することができなかった点である。また何より本レポートの筆者が初参加であるため、記述には偏りがあるであろうこともお許しいただきたい。



まず、今年の概要を簡単に記しておこう。SIGGRAPH2004の公式サイトのニュースリリースによると、以下のようなトピックが掲げられている。

参加者は約90ヶ国から28,000人弱を数え、見本市(エキシビジョン)には229社が出展した。
SF作家のブルース・スターリングによる基調講演は、約2,800人の聴衆を集めた。
アニメーション・フェスティバルで最優秀短編作品に選ばれたのは、パク・セジョン(韓国)の「Birthday Boy」。クリス・ランドレスの「Ryan」は審査員栄誉賞を受賞した。
ACM SIGGRAPHは、本年にコンピュータ・グラフィックスに著しい貢献をおこなった3人を表彰した。

CG-ARTS協会とデジタルコンテンツ協会により、会期初日8日の10:00から「International Resource Center」にて日本人向けにOverview Sessionが開催され、各セクションの代表者がそれぞれの概要を説明した。これだけでも今年のSIGGRAPHの傾向がわかるようになっている。
ここでの説明によると、

ペーパー
  今年の傾向として、キャプチャー、ディスプレイについての新技術、画像のインタラクティブな操作、ホームビデオの加工技術などが注目された。日本からの論文採択数は毎年1本程度にまで少なくなっていたが、今回は5本が採択されている。
コース
 

先端技術の発表としてのペーパーに対し、特定のテーマについて一連のレクチャーなどを行うコースについての説明。「ロード・オブ・ザ・リング」の視覚エフェクト、「シュレック 2」の製作過程についてなど、人気の映画にテーマをとったものもあった。

教育者のためのプログラム
  インタラクティビティ、アニメーター志望の学生への指導、文化財保護、カリキュラムのためのリソースといったテーマに大別された。

この他、初めての参加者への手助けをおこなうPathfinderや、学会としてのACMの紹介などがあった。アート・ギャラリーとエマージング・テクノロジーについては後述する。
■International Resource Center

概要説明がおこなわれた「International Resource Center」は会場エントランス近くにあり、各国から訪れる参加者のための“出会いの場”として位置付けられている。テーブルと椅子、ソファなどが設けられたリラックスした雰囲気で、ひと休みしてもいいし、情報交換や打ち合わせに使うこともできる。また、会場の一部にはスクリーンを備えたスペースがあり、会議やプレゼンなどを行うことができる。
文化庁メディア芸術祭などをアピールするためのCG-ARTS協会のスペースは、DCAj(財団法人デジタルコンテンツ協会)とともに、この一角に割り当てられていた。CG-ARTS協会はSIGGRAPHと協力して毎年ブースを設けており、このスペースを活用して文化庁メディア芸術祭のPRを行った。

会場内には無線LANが敷設されており、コンピュータを持参して、誰でもネットワークにアクセスできる。カフェやベンチばかりでなく、階段や廊下の隅といった思い思いの場所でコンピュータを広げる姿が見られた。

それでは、個々の展示について記していこう。
アート・ギャラリー
アート作品の展示で、今年のテーマは「Synaesthesia(シネスシージア、共感覚)」。“共感覚”とは神経学上の用語で、ある刺激に対して2つ以上の他の感覚が伴って生ずる現象のことで、音楽が色と形を伴って見えたり、味が形を持って感じられたりするという。このテーマによって、さまざまなテクノロジーを利用して感覚を刺激する作品が集められていた。作品は2D/3D、Screen-based WorksとArt Animationsに分類されていた。
個人的には、写真やオブジェといった既成の型式を用いた作品よりも、メディアの固有性を発揮した作品に興味深いものが多かった。直径60インチの球形のディスプレイを使ったダリア・ドロシュの展示、スクリーンセイバーが渦巻き状の有機的なイメージを紡ぎ出すスコット・ドレイヴスの「Electric Sheep(電気羊)」、映像とサウンドの断片の新鮮な組み合わせが次々と展開していくジェシカ・ロスビィの「Views from the ground floor…(1階からの眺め)」といった作品が印象に残った。
エマージング・テクノロジー
アート・ギャラリーに隣り合う、技術紹介のスペース。先端技術のプロトタイプ、アートに適用されたテクノロジー、高精細や3Dといったディスプレイについての技術などに大別されるようである。このセクションには日本からの出品も多い。それぞれのプレゼンテーションに対してブースが与えられており、ガイダンスを受けながら体験することが可能になっている。人気があるブースには順番待ちの列ができており、その賑わいのなかを流して歩くのは、縁日のようでとても楽しい雰囲気であった。


10日からはエキシビションも始まった。これは企業の見本市とでもいうべきもので、公式サイトでの発表から換算すると、およそ6,800㎡の広い会場に229社が出展している。

入場してすぐに、Apple社の、とりわけ大きなブースが目をひいた。ハードウェアのメーカーではグラフィックボードやチップの紹介が目についた。CGソフトのアップグレードもいくつか紹介されている。モーション・キャプチャーのデモブースも多かったように思う。美術学校のデッサンブースもある。ピクサーをはじめとするプロダクションでは履歴書を受け付けていて、学生が訪れて話し込んでいた。ちなみにエキシビション・ホールとは別の部屋で、Job Fair(就職相談会)も開催されていて、これも驚いたことのひとつだ。