今回のアートギャラリーには例年にも増してメディア芸術祭受賞者の作品が数多く見受けられました。藤木淳の『 OLE Coordinate System』(第10回 アート部門 優秀賞)、小林和彦(第9回 アート部門 優秀賞)の『SCAN GATE』、ヴラディミールベッリーニ(第10回 アニメーション部門 優秀賞)の『La grua y la jirafa (The crane and the giraffe)』、ヨハンナライヒ(第10回 アート部門 優秀賞)の『front』、 川島高(第10回アート部門審査員推薦作品)の『Takashi’s Seasons』。そして、林俊作 (第10回 アート部門奨励賞)、モンノカズエ+ナガタタケシ (第10回 アニメーション部門優秀賞)ら招待作家の作品が展示・上映されました。第10回文化庁メディア芸術祭のアートアニメーション優秀作品も会場内のシアターで上映され、連日会場を賑わせていました。
個人的に強い興味をもった作品、アメリカ人アーティストOsman Khanによる 『Fruits of our Labor』を紹介したいと思います。この作品は赤外線LEDがグリッド上に配置されたインスタレーション作品です。赤外線のため肉眼では何も見えずただの巨大な黒い箱のように見えますが、デジタルカメラや携帯電話のレンズを通すことで文字が浮きあがってきます。ディスプレイにはアメリカの労働階級層による「What is the fruits of your labor?」(あなたの苦労の成果は何ですか?)の回答が次々に描写されていきます。アメリカが抱える格差社会問題。そして、今日の社会において私たちが実際に「見えている」ことと「見ている」いという行為の本質性を痛烈に問う作品です。また、日本の多くの美術館では作品の写真撮影を禁止していますが、この作品を鑑賞するためにはカメラを通さないと見えないという批評性も非常に興味深かったです。
SIGGRAPH期間中は新設されたばかりのCalifornia Institute for Telecommunications and information Technology (Calit2)を舞台にアートインスタレーションの展示や、最先端のデジタル設備を備えた劇場にてデジタルパフォーマンスが行なわれました。日本からは東京大学教授の河口洋一郎や静岡文化芸術大学からは的場ひろし、メディアアーティストの川島高らが作品を発表しました。
作品はコンベンション内の二つのアニメーションシアターで会期中を通して上映されます。今年は最先端の超ハイビジョン映像を体験できる「4K(水平解像度4,000)」の5作品もラインナップされました。他にも「創造性」、「物語」、「ゲーム&特撮」、「狂気」、「科学」、「音楽」といった内容で分類された作品が日替わりのプログラムで上映。第10回文化庁メディア芸術祭の優秀作品は「JMAF (Japan Media Arts Festival)」として連日上映されました。3日目からは「FIORG!」で制作されたアニメーションも上映されました。
上映された作品はバラエティーに富んだ作品ばかりで、リスがタイムマシーンに乗って時代を駆けぬけていくコミカルな作品『No Time for Nuts』から、宇宙の動きをCGアニメーションで再現した国立天文台の4次元デジタル宇宙プロジェクト『4D2U NAVIGATOR』(渦巻銀河の形成)といった学術的な作品まで多彩なラインナップでした。
特に印象深かったのは、グリーン・デイとU2のミュージックビデオ『The Saints Are Coming』。ハリケーン、カトリーナで被害のあったアメリカの南部地方の上空に、イラクで戦争に使われているヘリコプターが次々と訪れ、救援物資を落としていくという、夢のような設定。ブッシュ政権への痛烈な皮肉が込められています。映像はフォトリアルなCGでつくられているため、夢と現実が交錯するような錯覚を受けました。