海外フェスティバルレポート

siggraph 2008 レポート

ロサンゼルスコンベンションセンターノキアシアター

左:ロサンゼルスコンベンションセンター 右:ノキアシアター

世界最大のCGとインタラクティブ・テクノロジーの国際学会「SIGGRAPH 2008」が、87ヵ国・28,432名の参加者のもと開催されました。35回目を迎えた今年のテーマは「Evolve(進化、発展)」。これまでのプログラムを大改革し、カテゴリーの融合と新分野の開拓を図った、チャレンジある学会をレポートします。

開催地 アメリカ・ロサンゼルス
会場 ロサンゼルスコンベンションセンター、ノキアシアター
開催期間 2008年8月11日(月)〜8月15日(金)
URL http://www.siggraph.org/s2008/

■一般参加も可能になったコンピュータ・アニメーション・フェスティバル(CAF)

『ONE PAIR』

『ONE PAIR』
湯山 邦彦(監督・脚本)、株式会社オー・ エル・エム・デジタル(制作)
© 2008 OLM, Inc. All rights reserved.

今回の変革のひとつに、コンピュータ・アニメーション・フェスティバルが映画祭形式になったことがあげられます。これまではエレクトリックシアター作品として30点ほどの作品が選ばれ、2時間のプログラム1本のみで上映されていましたが、今回はコンペティションとして80作品を7回の上映に分け、各2時間、計30作品を上映する方式に変わりました。

また、会場は2007年秋にオープンしたロサンゼルス最大の劇場で、エミー賞やMTVミュージックアワードの授賞式も行なわれる「ノキアシアター」。今回から一般入場者もチケットの購入が可能になり、多くの人がSIGGRAPHの華でもあるCAFをハイクオリティな迫力ある大画面で楽しめるようになりました。

ノミネートされた80作品のなかには、レンダーマンベースの「フェザーシステム」の開発を行なった日本の制作会社・OLMデジタルが制作した、都会にすむ2羽のカワウが主人公のユーモラスな物語『One Pair』や、第11回文化庁メディア芸術祭で推薦作品にも選ばれた中間耕平の『SHATTER』など、日本の作品が6つ含まれていました。

『Oktapodi』

『Oktapodi』
GOBELINS, l'e´cole de l'image

今回は世界から900点以上の作品応募がありましたが、グランプリに相当する”Best of Show”と観客賞は『Oktapodi』(Eric RIEWER/GOBELINS, l'e´cole de l'image)が受賞。また、学生に与えられる”Best Student Piece“は『893』(Annabel SEBAG/Premium Films)、審査委員賞に『Mauvais Ro^le』(Fre´de´ric FOURIER)と、いずれもフランスの作品が選ばれました。

そのほかにもCAFでは、立体視CGアニメーションの特集が行なわれたり、「Production Studio Nights」として毎晩日替わりで、ハリウッドの3大スタジオであるピクサー、ソニー・ピクチャーズ・イメージワークス、ルーカスフイルムのトークイベントや、文化庁メディア芸術祭の優秀作品上映などもあり、大変充実していました。

■大きな変化が感じられたアート&デザインギャラリー

『The Dreaming Pillow』

『The Dreaming Pillow』
Armella LEUNG, Olivier OSWALD
© Armella Leung 2007

今年、もっとも変化のあった展示のひとつに、アート&デザインギャラリーがあります。アートは「Slow Art」というテーマのもと34作品が展示されていました。

音を折る折り紙『Fold Loud』(JooYoun PAEK)、生物の住むデジタルの小さな池『Oasis』(Yunsil HEO)、触れると夢のような映像が浮かぶ枕『The Dreaming Pillow』(Armella LEUNG, Olivier OSWALD)など、これまで先端を走りつづけてきたデジタルアートを、身体感覚や自然素材との融合など、もういちどいままであるアートの表現や素材に立ちかえって見つめなおし、デジタルアートとは何かということをゆっくりと考えさせられるような作品が目立ちました。

アートギャラリーの展示のもよう

アートギャラリーの展示のもよう

『Oasis』

『Oasis』
Yunsil HEO

デザインギャラリーの作品群

デザインギャラリーの作品群

SIGGRAPHに再登場したデザイン分野「Design & Computation」は、今年もっとも新分野の開拓を図った展示でした。立体作品を建築壁面に応用させた『Continua』(Erwin HAUER, Enrique ROSADO)や、表面加工のデザイン『XURF, HyperSurfaces』(Haresh LALVANI)、Marty DOSCHER and Satoru SUGIHARAの建築『Phare Tower, La De´fense』など、産業への応用を強く意識した43作品を紹介し、建築や都市計画、プロダクトデザイン、テキスタイルにおけるデジタルデザインや技術を大きく特集していました。

■日本の活躍が目覚ましい「New Tech Demos」

『Two-Dimensional Communication』

『Two-Dimensional Communication』
中妻 啓、牧野 泰才、篠田 裕之、板井 裕人

ディスプレイ、ロボティック、デバイス、インタラクション、VRなど、最新のインタラクティブ技術が体験できる「New Tech Demos」。応募数180作品のなかから42作品が展示され、そのうち、日本からの出展(海外との共同研究も含む)が23作品と、今年の日本の活躍は驚異的です。

東京大学の河口洋一郎教授による、魚の目が動く迫力ある立体作品『Infinite 4D Fish』といった、アートやデザインの作品も含まれており、昨年までの「Emerging Technologies」よりも、境界を超えた多様な切り口で構成されていました。

『ForceTile』

『ForceTile』
筧 康明、城 堅誠、佐藤 克成、南澤 孝太、新居 英明、川上 直樹、苗村 健、舘 暲

慶應義塾大学の筧康明専任講師と東京大学の舘 暲教授らによる、タンジブルインタフェースを使用したテーブル型ディスプレイ『ForceTile』や、東京大学の苗村健准教授らによる、リキッドレンズを使用した多焦点画像『Multi-Focal Compound Eye』、東京大学の中妻啓らのマイクロ波による通信と供給が可能になるシート『Two-Dimensional Communication』、マサチューセッツ工科大学のヒューマノイドロボット『MDS Robot for Human-Robot Teamwork』など、興味深い作品ばかりでしたが、今年特に目についたのは、触覚研究です。電気通信大学の梶本研究室の経皮電気刺激についての複数の研究や、東京大学の星貴之らの超音波を使用した触覚ディスプレイなど、9つもの展示がありました。

■今後に期待したい論文採択

技術論文は、学会であるSIGGRAPHの根幹をなすものです。採択された114本の論文のうち、日本からは東京大学の西田友是教授らの雲のシミュレーションに関する論文、東京大学の五十嵐健夫准教授らの固体のテクスチャについての論文、東京大学の高橋成雄准教授らのグループモーションの論文の3本にとどまり、厳しい結果となりました。

ドジャースタジアムでのレセプションのようす

ドジャースタジアムでのレセプションのようす

コーネル大学のJonathan KALDORらのニットのシミュレーションはCAFでも上映され、高い研究に裏打ちされた真摯なCGが印象的でした。論文採択は狭き門ですが、若い研究者や萌芽的な論文の発表の場であるPosterでは、133本のうち日本から58本の発表があったことを思うと、論文にも意欲的に挑戦している研究者の姿が伺われて、これからを期待したいところです。

レセプションは、ドジャースタジアムでメジャーリーグの野球観戦を交えた非常にユニークで楽しい企画でした。これまでの古い枠にとらわれず、よりフレキシブルに発展させていくSIGGRAPHの今後が楽しみです。

来年のSIGGRAPH2009は、2009年8月3日〜7日まで、ニューオリンズにて行なわれます。
http://www.siggraph.org/s2009/

串山 久美子 (首都大学東京 システムデザイン学部/アーティスト)

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