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【vol.2】

『OBJECT B』

『OBJECT B』

『OBJECT B』

『OBJECT B』 Copyright © exonemo
写真提供 : 山口情報芸術センター(YCAM)
Photo : Yamaguchi Center for Arts and Media(YCAM)


『SHI KA KU NO MU KO U (Beyond/Invalid Sight) (しカくノムこう)』

『SHI KA KU NO MU KO U (Beyond/Invalid Sight) (しカくノムこう)』
写真提供 : 山口情報芸術センター(YCAM)
Photo : Yamaguchi Center for Arts and Media(YCAM)


『REAL SPACE IN VEDA』

『REAL SPACE IN VEDA』

『REAL SPACE IN VEDA』
写真提供 : 山口情報芸術センター(YCAM)
Photo : Yamaguchi Center for Arts and Media(YCAM)

未知なる作品だったエキソニモの新作

見たことがないものや、想像を逸脱したもの。既存のどの文脈にもあてはめることができないもの。そのような作品に出会ったとき、私は一種のショックとともに神妙な気持ちを味わいます。分析も解釈もできない未分化な状態で、作品の只中にしばらく身を委ねてしまう…。そのような体験をした最近の例として、エキソニモ(註1)の新作『OBJECT B』(註2)(山口情報芸術センター)(註3)を挙げたいと思います。

破壊が創造へと転化する空間

狭い通路を通り階段を上ると、四面にゲーム空間がプロジェクションされた正方形の空間に到着します。空間には、キーボード、マウスなどのコンピュータ部品や電動工具、電子回路やモーターなどがDIY的に寄せ集められた異形のオブジェが3つ——ひとつは床上に、ひとつは天井からぶらさがり、もうひとつは四本足の動物がたたずむようなかたちで——設置されています。これらのオブジェは、時おりモーターによってそれぞれ異様なノイズをとどろかせながら痙攣的に稼働し、キーやマウスが物理的な刺激を受けることで自動的にコマンドとして入力され、それによってゲーム上で各キャラクターが攻撃を開始します。つまり各オブジェのランダムな動きが、各ゲームキャラを操作することになるのです。観客は中央の台にあるキーボードを使って正面の画面でゲームをすることができますが、シューティングするごとにゲーム空間には、弾ならぬ花や家具といったオブジェが脈絡なくあらわれるなど、エキソニモによって「破壊」はナンセンスかつ平和的な「創造」へと転化されています。観客は、自分の分身以外の3つのキャラの動きが自動機械の放つランダムで滅茶苦茶なコマンドによって生じていることを知りながら、プレイすることになります。

謎である何かを体験すること

私のショックは、オープンソースのゲーム改造や既存の部品からオブジェを制作したエキソニモならではのDIY&ハッキング精神や作品そのものに加え、その背後に壮絶なほどの彼らのパッション、そして謎めいたものをそのまま放つ勇気を感じたことによります。彼ら自身「謎」という言葉を使っていますが、この作品が何でありどのような意味をもつのかがわからなかった、だからこそ何としても生み出す必要に駆られたとのこと。謎である何か=OBJECT Bを外在化することによって自らそれに直面し、また広く人々の体験へと開きフィードバックをもらうために、作品『OBJECT B』は生み出されたのです。

『OBJECT B』は、さまざまな不連続・不整合的な要素——ゲーム空間と実空間、自動機械とキャラ、そしてさまざまな部品——がかつてないかたちで出会い接合したものとして、システムを空間にさらけだしつつ稼働しています。むきだしのナンセンスや暴力性、とともに彼らが「詩のような」と呼んだ自動的なポエティクス—意図的なコントロールを超えた一種の放逸的世界?—が、そこには矛盾なく同居しているかのように見えます。この作品は、エキソニモにとって今も謎であり、名づけえない「対象」「オブジェ」そして「何か」でありつづけているようです。ひとつの解釈の向こうにそれを超える解釈可能性が待ちかまえつづける、そのような途方もないプロセスを要求するのが『OBJECT B』なのかもしれません。

註1 赤岩やえ、千房けん輔によるアート・ハック・ユニット。東京および http://exonemo.com で活動。

註2 タイトルは、フランスの精神分析家ジャック・ラカンの『対象a』(欲望の原因としての対象)を想起させますが、エキソニモはそれにこだわらず、広範囲の「対象」また即物的な「オブジェ」、それも「A」の裏としてだけでなく、Aがカバーしきれないさまざまなオルタナティヴな可能性を「B」と呼んでいるようです。

註3 『OBJECT B』は、エキソニモ展「WOROD B」(4/22-7/9、山口情報芸術センター)で、『REAL SPACE IN VEDA』、『SHI KA KU NO MU KO U』とともに展示されました。

関連サイト
山口情報芸術センター(YCAM) http://www.ycam.jp
エキソニモ『WORLD B』  http://exonemo.com/b/

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profile

四方 幸子(Yukiko Shikata)

キュレーターおよび批評家。NTT インターコミュニケーション・センター[ICC]学芸員、東京造形大学特任教授、多摩美術大学・京都造形芸術大学客員教授。メディアの横断的研究および 20世紀〜現在におけるアートの可能性を検討、かたわら数々のプロジェクトをキュレートする。アルス・エレクトロニカ賞審査員、UNESCOデジアート賞審査委員長、ナムジュン・パイク賞審査員他を歴任、transmediale(ベルリン)アドバイザー。

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