5 minutes media arts

5 minutes media arts plus メディア・アートをキュレーターがわかりやすく案内するリレーコラム

【vol.9】

分類1:新しいメディアを使った「ただのアート作品」

あらためて、メディアアートとは?

NYの観光地、現代美術の殿堂であるMoMA(ニューヨーク近代美術館)では、つい昨年フィルム&メディアという部門からメディア部門が独立した。この新しい部門はミュージアム創立の2年後にあたる1934年に設置されたDepartment of Filmが、80年代にDepartment of Film & Videoとして拡大し、新館オープン時にDepartment of Film & Mediaと名を変え、とうとうDepartment of Mediaとなったいきさつがある。約70年をかけて、形態ごとに専門のある美術館の中で、他の部門(彫刻&絵画、プリント&イラストレーション、ドローイング、写真、建築&デザイン、フィルム)と同等に、ひとつの地位を獲得したわけだ。

さて、メディアっていうのは固い日本語だと媒体、やわらかく言うと何かと何かをつなぐモノ、美術用語だと作品の形態や構成要素(紙、キャンパス、油、木、スチールなど)のことを指す。この定義通りにメディアアートを解釈すると、「メディアアートのメディアはメディアです」という禅問答のような名称だが、じつは、美術の世界ではニューメディアアートという呼び方のほうが一般的だ。すると、「メディアアートのメディアは、新しいメディアです」—少しだけ座りがいい気がするが、ここで納得してはいけない。なぜなら、このニューはただ新しいっていう意味ではなく、懐かしい例だと、機動戦士ガンダムの「ニュータイプ」と同じ「ニュー」。いままでの秩序や常識では理解できない別世界の奴ってことなのだ。美術の世界において、メディアアートが、「ニュー」なんて呼ばれて常識外れにされる最大の理由は、絵画や彫刻、イラストレーションなどとは違い、その形態自体が「ニュータイプ」、そもそも形がないか決まっていないってこと。形態別の秩序が確立している美術の世界において、こいつはとてつもなく外れちゃっているということなのです。専門家たちも困るけど、当然、鑑賞者だって戸惑います。

そんな背景を頭におきながら…では、ニューメディアアートとはどんな作品を指すのか。

1:新しいメディアを使ったアート
2:新しいメディアそのものを作ったり考えたりするアート

めちゃめちゃ大雑把に分けるとこの2種類で、多くの作品はどちらにもまたがっている。MoMAみたいな 「ザ・美術館」にコレクションされる作品は、間違いなく、「1:新しいメディアを使ったアート」。ということで、前半のこのコラムではそういう作品をひとつ紹介しましょう。

純粋な「ただのアート」作品

Photo by DCA

Photo by DCA

1967年生まれ、ラファエロ・ロザノ=ヘメル (Rafael Lozano-Hemmer)は、昨年、作品がMoMAコレクションとなり、今年はベネチアビエンナーレの出品も決まるなど、現代美術街道まっしぐらのメディアアーティストだ。彼のMoMAに収められた作品が、『33 Questions per Minute』(2001)。タイトル通り一分間に33個の質問が、21個の小さなLEDディスプレイに次々と出てくるという作品。微妙なタイミングでどんどん変わる質問文は、文法は正しいけれど実はナンセンス。なぜなら、それらの文章はコンピューターが意味を無視して自動生成したものだからだ。同じ文章が登場する確立は、550億分の1ということで、まず、二度と同じ問いには出会えない。

壁にちりばめられた小さなLEDディプレイは、彫刻とも絵画とも呼べるようなかぎりなくエレガントなたたずまいで、かすかに「ピ、ピ」と音を立てながら、ひたすらナンセンスな疑問文を表示し続ける。鑑賞者は、絵を見るようなポーズで近づいたかと思うと、突然のナンセンスワールドに引き込まれ、しばし作品の前で呆然と疑問を抱え込み、あるいは笑い出すことになる。

Photo by Antimodular Research

Photo by Antimodular Research

『33 Questions per Minute』は、コンピュータープログラムやLEDディスプレイなどを駆使した、まぎれもない「ニューメディアアート」だ。しかし、そんなことはどうでもよく、この作品は、膨大な情報に溺れた、不安にただよう現代人のコミュニケーションを問う、極めて純粋な「ただのアート」作品なのです。

作家の言葉—「新しいメディアに囲まれて毎日生きているんだから、作品の一部になるのは当たり前。逆に、使わないことのほうが、僕にとっては不自然だよ。」

という訳です。いかがでしょう?

profile

内田まほろ
Photo by Rafael Hefti

内田まほろ

1971年生まれ。慶應義塾大学政策メディア研究科修士課程修了。テクノロジー、アート、デザインの融合する領域で、国内外のイベントや展覧会、アーカイブなどのプロジェクトに携わる。2002年より日本科学未来館に勤務し、科学館におけるアート&デザインのプロジェクトを担当。2005年より文化庁在外研修員としてMoMA、Department of Film & Mediaに一年間勤務した後、復職。主なキュレートリアルワークに「Tech Pop Japan Lounge」(ロッテルダム映画祭、Exploding Cinema)、「メッセージ/ ことばの扉をひらく」(せんだいメディアテーク)、「時間旅行展」、「恋愛物語展」(日本科学未来館)など。

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