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コラム

1960年代 【エンターテインメント】 鉄腕アトム

アトムなくして語れない 日本のロボット技術

文/高橋 智隆

「メカとデザインの融合」の提案として、2003年3月に製作された小型二足歩行ロボットneon(ネオン)。二足歩行、旋回歩行、その場旋回、おじぎ、物をつかみ上げる、ボールを蹴る… などなどの動きが可能(製作・高橋智隆)

特許技術の電磁吸着二足歩行システムにより、ダイナミックな安定歩行を安価に実現した小型ロボット「マグダン」。
(製作・高橋智隆)

アストロボーイ・鉄腕アトム
© Tezuka Production/SPE

今日のロボット分野の隆盛は、「鉄腕アトム」なしには語れない。我々若手ロボット研究者の間でも、鉄腕アトムを目標と考える者もいれば逆に「アンチ鉄腕アトム派」を宣言する者もいるなど、この分野を2分するような、とてつもない影響力を持っている。物語中には手塚治虫が持つ科学的・政治的な思想が随所に見受けられるのだが、我々がこの漫画本を手にした時代には、それらは既に決着した問題であり、純粋に魅力的なロボットや「博士」と称する天才科学者達の活躍に心躍らされたものである。2003年4月の物語上の鉄腕アトム誕生日を祝う大規模展示会では、様々なロボットが発表された。残念ながら、その場では「本物」の鉄腕アトムは誕生しなかったが、多くの研究者がその日を目標に開発してきたことによって、ここに次世代ロボット産業が「誕生」したのである。

現在、ロボット分野は日本が世界をリードしている。これは、日本の技術力によるものであると同時に、実は文化的なポテンシャルによるものでもあるのだ。ロボットは、人間の感情移入を巧みに利用することで「機械」と「人間」の垣根を越えたコミュニケーションを実現していることが大きな特徴である。故に、人間にとって心地よい動きや外観、そして人間との関係を考えた機能などが非常に重要となり、その際、開発者・使用者双方の「ロボット観」というものが大切になってくるのである。たとえば、鉄腕アトムでは、当時の技術水準に対しアトムがあまりに人間的であることに読者の抵抗感があり、手塚治虫自身もそのことを懸念していたようだ。アトムと比べかなり原始的なロボットである「鉄人28号」がその後に登場したことからもうかがい知れよう。

そうやって、日本では、ロボットの「人間らしさ」と「機械らしさ」のバランスをどのあたりに持ってきたら良いかという問題に試行錯誤しながら取り組んできたわけである。対して、欧米におけるロボットは、限りなく人間に近い「アンドロイド型」とブリキ工作のような「ガラクタ型」とに2分され、その中間という概念がない。それは欧米の映画や玩具などに見て取れるだろう。鉄腕アトムを代表とする様々な空想上のロボット達により積み重ねられた、人間との関係を踏まえた「ロボット観」が、研究者のみならず広く一般に浸透している日本は、世界に類のないアドバンテージを持っているのである。

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高橋 智隆 (京大ベンチャー「ロボ・ガレージ」代表)

1975年生まれ 京都大学工学部卒。ロボットの技術開発やデザインそして製作までを一貫して行う「ロボットクリエイター」として活躍中。開発した技術を用いたロボット玩具「ガンウォーカー」は世界中で販売されている。「VisiON」「ロボビーR」「援竜」などのデザインを担当。オリジナルのロボット作品として、マグダン(2001年)、ネオン(2003年)を製作・発表している。

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