コ・マ・ド・リの観察

新コ・マ・ド・リの観察 もしくは、アニメーション作品の非客観的考察のたのしみ

【新/探索・その4】

コ・マ・ド・リな風景 【創意と工夫と締め切りの日々】
素材は人間! 人間コマ撮りアニメーション

専科研究室/研究主題=「モーションアート」 分類「アニメーション作品の考察」

 モノを素材とするアニメーション。その妄想を具現化するための素材選びに制限は無用です。それはときに、生きている人間でさえ、情け容赦なくアニメーションの素材にしてしまうのです。
 カメラで普通に人を撮れば実写映画になりますが、これをコマ撮りすることで現実の束縛から切り離せば、それは制作者によって意図的にコントロールされた映像─アニメーションとなります。

  人をコマ撮りするにはおおよそ二通りの手法があります。一つは流し撮りした(秒24コマかそれ以下の)フィルムから、コマ抜き編集してつなげる方法。これにはいろいろと技術的制限があり、フィルムをつないで(編集して)24コマで映写されるときのタイミングを計算しながら撮影するなど、職人芸を要求されます。もう一つは文字通りヒトを(人形や粘土アニメのように)少しずつアニメートしながらコマ撮りするといった、体力と気力を要求される方法。ほとんどの作品はこの二つをうまく組み合わせています。

   これらの手法で制作されたアニメーションの歴史は古く、有名な作品ではカナダNFBでノーマン・マクラーレン(Norman McLaren)が制作した【隣人/Neighbours/Voisins】(1952/8分)(注1)などがあります。この作品は、仲よく暮らしていた二つの家の境界に一輪の花が咲いたことから、この花を巡って骨肉の争いがはじまるというちょっとブラックなお話。これを人間コマ撮りアニメーションで表現しています。描きアニメーションによくある誇張された表現を、体を張って(?)表現しているのが特徴で、喜べば足は地を離れ、空中を飛び回り、怒れば相手を投げ飛ばし、顔は変身していきます。

 またこの手法はインディ系(?)アニメーション作家に好まれる傾向があるようです。1988年にアメリカのマイク・ジトロフ(Mike Jittlov)(注2)が監督した【マイク・ザ・ウィザード/The Wizard of Speed And Time】(1988/95分)という長編アニメーションがありますが、じつはこの作品を作るきっかけになった同監督の同名短編が一部のアニメーションフリークの間で伝説の人間コマ撮りアニメーションだったのです(もちろん長編のほうにもパワーアップしたコマ撮りは入っています)。この短編は、緑色の魔法使いがただ超スピードで走りまくる前半と、バナナの皮に滑ってフィルム倉庫に墜落した魔法使いが山積みのフィルム缶(ラボ缶)やカメラ、三脚とともに音楽に合わせて踊るミュージカルじたての後半とからつくられています。とくに後半は完全なコマ撮りシーンで、まるでディズニ−の【魔法使いの弟子】のようです(オープニングでは、古いほうの映画【タイムマシン】のギミックが出てきたりと、この作者のただ者でないマニアぶりを見せています)。この作品のすごいところは、スピード感を出すために魔法使いの手足が常に高速でブレているように見せるという表現で、技法は秘密(?)だそうです。

   この作品と同時期に、日本にも人間コマ撮りによるスピード感に挑戦した作品がありました。第4回グリーンリボン賞(1987年)短編の部で金賞を受賞した、これまた伝説の人間コマ撮りアニメーション【8MAN】高野和明(1985/12分/8mm/SHADOW CRAFT)。こちらは東京の狭い路地裏を8MANとなぞの敵が高速で疾走する、手に汗握る(?)爆笑アニメーションです。8MANは普通のヒトのまま変身などせず、効果音とその無表情さで上映会場を爆笑の渦に巻きこみました。同じ第4回グリーンリボン賞で、短編の部グランプリと大林監督賞を受賞した【宇宙防衛軍ジェットマン】妻方仁(1983/12分/8mm/アニメーションシスターズ(駒撮姉妹舎)/東京)も忘れてはいけないコマ撮りアニメーションです(この作品の監督はやがてZZガンダム以降の(現)サンライズで活躍なさっていたとか)。
 アードマンのカメラマン出身監督、デイブ・ボースウィックによる 【親指トムの奇妙な冒険/THE SECRETADVENTURES OFTOM THUMB】(1993/60分)も、 人間をコマ撮り素材にした無気味な雰囲気のアニメーションです。主人公のTOMはモデルアニメーションなのですが、彼はその他多くの素材にされた人間たちのなか、シュールでグロテスクな世界を冒険します。
 私は未見ですが、最近の作品では、武藤浩志監督作品【放飼(HANASHI★GUY)】(1998/7分)と【銭湯一番星】(2002/2分28秒)があります。お勧めしてくれたDataBase担当のFによると、音楽に合わせて漢(おとこ)たちが踊るとても大胆な爆笑作品なのだとか。
 人間をコマ撮りするのではありませんが、素材としてアニメーションにする作品を【イノセンス】の押井守監督が製作中とのことです。【立喰師列伝】というその作品は、以前つくられた【ミニパト】のペープサートのような「ぱたぱた」アニメだそうです。ただ今度は人間を貼り込んで動かすようで、どんな作品になるか楽しみ(?)です。

 これらの人間コマ撮りアニメーションに共通して必要とされるのは(少なくとも笑える作品においては)、アイデアと体力とを伴う根性であろうと思います。ストップモーションを人間に用いるときの過負荷と苦痛は想像するしかありませんが、正直「好き者でなければできまい」と思ってしまうのは私だけでしょうか? 今回紹介できなかった情報や不完全な作品もいくつもあります。コマ撮り、コマ抜きに限らず、人間を素材としたアニメーションは、カメラさえあれば手軽に挑戦できるものかもしれません。ただそのなかで伝説になっていく作品にはやはり、仕上げセンスのよさはともかく、作者の思い入れがにじみ出ている気がします。おもしろい人間コマ撮り作品に出会えたら、それだけである種の奇跡と感謝すべきなのかもしれませんね。

(注1) NFBのノーマン・マクラーレン【隣人/Neighbours/ Voisins】の紹介ページ(英語)。CLIPがあります。
(注2)

マイク・ジトロフ(Mike Jittlov)のホームページ
http://www.wizworld.com/

【マイクザウイザーズ/The Wizard of Speed and Time 】のトレーラーのあるHP
http://wosat.remulak.net/repository/

担当・文責:T.RUN 研究員(デジタル・キュレーター) 協力:F.W 研究員助手(データベース担当)

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