Technology for Media Arts

【Vol.5】空中や水面に絵を描く

レーザーで空中に絵を描くレザリウム

レーザーを使って空中に絵を描くレザリウムが登場したのは1970年代初頭のことだ。屋外イベント会場から室内のものまでいろいろなサイズのものがあるので、一度は見たことがある人が多いだろう。絵柄も最初は直線やリサージュ図形のような単純なものだったのが、どんどん複雑になってきた。色数も増えて、いまでは花火やオーロラだけではなく、木星に近づくボイジャー探査機なんてものを線画で描けるようになっている。

リアルな3D映像を空中に描く新技術の登場

独立行政法人産業技術総合研究所(AIST)提供

独立行政法人産業技術総合研究所(AIST)提供

今年2月、空中に絵を描く新たな装置が登場した。独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研)、慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科内山太郎研究室と株式会社バートンによって開発されたもので、まだ固有名がなく「“リアルな3次元(3D)映像”を表示する装置」と呼ばれている。

「リアルな3次元映像」というと、普通は「すごいリアルっぽく見える3次元映像」を意味するのだけど、ここではもっと正確な意味だ。現実に3次元の映像を、空気以外何もないところに映し出すのである。

新開発のリニアモーターシステムで、赤外線パルスレーザー光源を制御し、空間の任意の場所の空気をプラズマ化して発光させるのだ。一回に表示できるのはひとつの点だが、高速に発光箇所を移動させる(現在最高100Hz)ことで、残像効果をつかった立体図形を描き出せるというわけだ。3次元画像として考えると、本当に空間のその点が光っているのだから、「リアル」なのである。

いまのところ、画像はドットを並べたようなものだし、残像が残っている間に全部のドットを打たなければいけないから、その数にも限りがある(増えるとだんだんちらつきが目立ってくる)。ただ、これは今後、改良されていくだろう。でも、白い豆電球を並べたような像はそれはそれで味がある。SF的なレザリウムよりも、身近な感じがするかもしれない。

もちろん、発光速度を高める研究も進められているので、将来はちらつきなしにもっと精密な絵も描けるようになるだろう。

水面に波で図形を描く「AMOEBA」

三井造船昭島研究所「AMOEBA」

分割型造波機によって水面に描かれた「S」の文字(上)とハートマーク(下)/三井造船昭島研究所「AMOEBA」

もうひとつ、水面に絵を描く技術を紹介しよう。プールの縁を揺らすと波ができる。いろんな方向から揺らすと波は干渉しあって、複雑な模様を描く。この「いろんな方向から揺らす」を上手に制御すれば、水面に波で図形を描くことができるはずだ。

三井造船昭島研究所と大阪大学内藤林教授のコラボレーションによる「AMOEBA(アメーバ)」は、このようなシステムだ。直径1.6m深さ30cmの円形のプールの周囲に50台の造波機をならべ、制御された波をつくり出す。いまのところアルファベットやハートマークのようなものや、市松模様のような簡単な図形しか描けないのだけど、水面に図が浮かぶというインパクトは大きい。文字や図形を連続して描くことも可能なようだ。

発表によれば、イベントや広告などにレンタルすることも考えているそうなので、意外とすぐに使うことができそうである。

profile

こばやしゆたか

ライター。最新技術から少し変わったおもしろい技術まで幅広く取り上げ、HOTWIREDをはじめ、さまざまな媒体で紹介している。無類のペンギン好きでもある…と書くとLinuxのことだと思う人が多いが、そうではなく本物のペンギン、とくにアデリーペンギンが好きで、ペンギンのウェブサイトも運営している。

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