CDにしても電子楽器にしても、いちど電気信号になっている音楽を聴くために必要なのがスピーカーだ。スピーカーを替えたら音がまったく変わりましたなんてことは、オーディオマニアじゃなくても体験したことがあるだろう。
その一方で、スピーカーそのもののデザインというのはそんなに大きな変化はない。最終的に音を出すところだから、どうしても目につくところにおかれがちなのだけど、どうしてもそれなりの存在感がある。展示物などをつくるときには影においたり箱で覆ったりという苦労をしがちだ。
そこで今回は、スピーカーらしくないスピーカーを2つ紹介することにしよう。
ひとつめは、最近登場したばかりの技術。NewScientist Blogs (http://www.newscientist.com/blog/invention/2006/07/designer-speakers.html)で紹介されていたもので、Goldberg; Joshua Gouledによる発明だ。
今までのスピーカーは、永久磁石でつくった磁場のなかでコイルに電圧をかけ、それで発生する力で、振動子(たいていはコーン型の紙)を揺らすという構造になっている。アンプを使って、かける電圧を音楽で変調させておけば、振動も音楽になって聴こえてくるというしくみだ。
でも、こいつの構造は全然違う。任意の容器(花瓶が美しいらしい)の中に磁性流体のオイルを満たしておく。そして、容器の周りにコイルを巻きつけて、そこに変調された電圧をかけるのだ。すると、磁性流体がそれに伴って振動し、それが花瓶に共鳴して音楽になるというのだ。
パテントを紹介する記事なので、これがほんとにうまくいくのかどうかは検証されていない。私もやってみたいのだけど、磁性流体を持っていないので、簡単に実験ができない。
磁性流体を使えば、家にある花瓶がスピーカーに(写真はイメージです)
© Sachiko Kodama & Minako Takeno (Photo:高田洋三)
磁性流体に磁場をかけると、とっても不思議な形が表れるというのは、スパイク現象として知られている。平成13年度の文化庁メディア芸術祭の「デジタルアート[インタラクディブ]」の大賞受賞作品の児玉幸子+竹野美奈子の両氏による『突き出す、流れる』
(http://www.kodama.hc.uec.ac.jp/protrudeflow/)は、これをみごとに使った作品だった。
スピーカーの場合、可聴範囲の周波数で振動しなければならないから、花瓶の中でこんな派手な動きをしてるわけではない。でも、中でどんな動きをしているのか、ちょっと気になるところではある。
花の種類によって音が変わる?
花スピーカー『KA-ON〜花音』
株式会社レッツ・コーポレーション
今度は花瓶に生ける花をスピーカーにしてしまおうというのがレッツコーポレーションの「KA-ON〜花音」だ。
こちらも、ちょっと見たところは、ただの花瓶だ。花瓶の底にはあらかじめ剣山が備え付けられている。切り花をこの剣山に挿して生けるというわけ。そして、この剣山が振動するのだ。
すると、その振動が、生けられている花に伝わる。振動は茎を通じて葉や花に伝わり、そこで空気を揺らし、音楽になる。間違いなく、花が歌っているのだ。
生ける花はなんでもいいけど、やはり種類によって音が変わってくるのだそうだ。大きな葉っぱをもっているもののほうが振動しやすく、低音も出るらしい。オーガスタのような大きな葉っぱで低域を確保して、バラで高域を出そうなんて、マニアックな楽しみもできそうだ。
参考ウェブサイト
- 磁性流体を利用したスピーカーのパテント情報はこちら
(Audio speaker utilizing an unanchored magnet for primary force generation) - KA-ON〜花音
- http://www.lets-direct.jp/fsp/lf-511/lf511.htm
こばやしゆたか ライター。最新技術から少し変わったおもしろい技術まで幅広く取り上げ、HOTWIREDをはじめ、さまざまな媒体で紹介している。無類のペンギン好きでもある…と書くとLinuxのことだと思う人が多いが、そうではなく本物のペンギン、とくにアデリーペンギンが好きで、ペンギンのウェブサイトも運営している。 |


