空想の美術館
Musée Imaginaire

『アンドレ・マルロー伝』
中野 日出男 著
(毎日新聞社)
フランスの作家アンドレ・マルローが1947年に出版した『東西美術論(原題;芸術の心理)』で提唱した概念。無数の作品図版を収集、配列したものを空想上の美術館になぞらえたもの。印刷や写真など複製技術の発達を背景とした概念であり、現実には不可能な世界中の「泰西名画」のコレクションや展示を可能とするばかりか、多くの作品を容易に比較対照できるようになった結果、新しい画期的発見が生まれ、美術史の記述が大きく変わる可能性をもはらんでいる。マルローがこの概念を着想したのは、親友であったピカソの絵画がアフリカの黒人彫刻から決定的な影響を受けていることを知って、その関係を相互参照できる美術館の必要性を痛感したことが大きなきっかけであり、また晩年には自ら「空想の美術館」と題する展覧会を企画したこともある。バーチュアル・ミュージアムやデジタル・アーカイヴが浸透した現在では、その可能性をいち早く予見した先駆的概念としてしばしば言及されるようになった。比較的類似した概念としてはアビ・ヴァールブルクの図像アトラス 「ムネモシュネ」が挙げられるが、こちらは遥かに学術的色彩の強いものである。




