キネティック・アート

[ 1950年代, ]

動きを含む、もしくは動いて見える美術作品の総称。ただしその範囲は人力、風力、電力などを動力とする可動域を持つ立体作品にほぼ限定され、映画やアニメーションなどの平面作品は対象外である。マルセル・デュシャン、ナウム・ガボ、ラズロ・モホリ=ナギらの立体作品など、可動域を組み込んだ作品は20世紀の前半より試みられていたが、美術の一動向としてのキネティック・アートは、50年代にアレクサンダー・カルダーが金属の板と棒を組み合わせて制作した一連のモビール作品によって初めて一般化され、その後60年代にはニコラ・シェフェール、ジュリオ・ル・パルク、ジャン・ティンゲリー、ブルーノ・ムナーリらが相次いで独自の特徴を備えた作品を発表、現在では野外彫刻などでしばしば見かけられるようになった。作品の傾向としては、メカニカルな造形を追求したものや機械文明への批判を孕んだものなどが挙げられるが、いずれの場合にも動力学(ダイナミズム)としてのキネティックが作品の基本的な要素であることに変わりはない。同時代の美術の動向と対比してみると、「視覚芸術探求グループ(GRAV)」や「グループ・ゼロ」、あるいは「グルッポT」やオプ・アートなどとも重なり合う部分が少なくないが、当然のことながらその厳密な区分は困難である。

キヤノン・アートラボ

[ 1990年代, ]

『キヤノン・アートラボ』 古橋悌二『LOVERS』
Canon ARTLAB Exhibition at Spiral Garden, 1998

大手精密機器メーカーのキヤノンが、デジタル技術を用いたアート作品の制作を支援していたプロジェクト。1990年、国際花と緑の博覧会(花博)に寄せられた反響でデジタル技術の創造性に着目したキヤノンが、翌年より同社の社会・文化支援センター文化支援推進課を事務局として本格的な支援活動を開始、内外の気鋭のメディアアーティストを招聘して、1991~2000年にかけて毎年企画展を開催したほか、1995年からはアートラボ・プロスペクト展も並行して開催し、斬新な作品の紹介に務めた。多くの作品が発表されたなかで、とりわけ古橋梯二の『LOVERS』は、ニューヨーク近代美術館の常設コレクションとして収集されるなどの国際的な反響を得た。1990年代にはICCと並んで日本のメディアアートの牽引車的存在であったが、常設会場を持たず、構想から展覧会のプレゼンテーション、作品の制作までをアーティストとエンジニアやキュレーターがコラボレーションとして展開するなど、そのプロジェクトのスタイルは大きく異なっていた。1996年には企業メセナ協議会審査委員特別賞を受賞するなど社会的な評価も高かったが、キヤノン本社の文化支援の見直しにともない、2001年6月の第5回プロスペクト展を最後に、活動を休止した。

キュビスム

[ 1900年代, ]

『ピカソ キュビスム 1907‐1917』 『ピカソ キュビスム 1907‐1917』
ジョゼップ・パラウ・イ・ファブレ 著
神吉敬三他 訳
(平凡社)

20世紀初頭に起こった近代絵画の動向。多視点による立体的な画面構成によって、一点消去遠近法に基づく構図や明暗法など、ルネサンス以来の伝統的な写実主義の形態を根底から覆す強いインパクトを持っていた。動向としてのキュビスムを創始したのはパブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックのふたりであり、その背景には、いままでのキャリアに加え、アフリカの黒人彫刻や「自然を円筒と球と三角錐(すい)によって扱う」というセザンヌの言葉からの決定的な影響もあった。ふたりによるキュビスムの探求は1907年~1914年の約7年間に及ぶが、当初はまだ残存していた具象性が徐々に失われ、画面はより抽象的な多視点の構図へと移行していく。1910年前後に画面の構成の仕方に変化が認められることから、前期を分析的キュビスム、後期を総合的キュビスムと区分して考えるのが一般的で、後期にはロベール・ドローネーやフェルナン・レジェ、ファン・グリスらの追従者も現れるようになった。もともとはアンリ・マティスがブラックの絵画を皮肉った蔑称に由来しているが、いまや20世紀美術の最も革新的な動向・手法のひとつに数えられている。

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