暮沢 剛巳 (くれさわ たけみ)
1966年生まれ。美術評論家。
武蔵野美術大学、多摩美術大学、女子美術大学、跡見学園女子大学、桑沢デザイン研究所非常勤講師。
著書に『美術館はどこへ』『「風景」という虚構』『美術館の政治学』『現代アートナナメ読み 今日から使える入門書』、近刊に『現代美術キーワード100』(仮題)がある。
ミ
未来派
Futurismo
今世紀初頭のイタリア・ミラノで提唱された芸術運動。1909年、詩人フィリッポ・トンマーゾ・マリネッティがフランスの「フィガロ」紙上にて発表した「未来派宣言」を契機とする。同宣言のなかでマリネッティは、伝統的な芸術観念との訣別を表明すると同時に、20世紀の文明社会に対応した芸術観を賞賛し、それに対応する形で、1910年代のイタリアには同時性、機械美、速度などを強調した多くの特徴的な芸術表現が登場した。その対象は美術、建築、音楽などの各領域に及び、ジャコモ・バッラの抽象絵画、ウンベルト・ボッチョーニの抽象彫刻、アントニオ・サンテリアの建築デザイン、ルイジ・ルッソロの騒音音楽などをその代表例として挙げることができる。未来派の理念は封建主義から資本主義への急速な価値転換を背景に出現したものであり、そこには急速な機械化や表現主義の強い影響が窺える半面、ロシア構成主義やダダイズム、シュルレアリスムの先駆的な側面も潜んでおり、特に提唱者であるマリネッティの主張には後のファシズムとの親近性が露である。なおマリネッティの宣言文は同年中に森鴎外によって翻訳され、また1920年には普門暁が未来派美術協会を設立するなど、その影響は遠く離れた日本にも及んだ。



